2021/12/23

生みたがらぬ若者ら群れ死にたがらぬ老い人の殖ゆ虚空みつ大和/山埜井喜美枝

生みたがらぬ若者ら群れ死にたがらぬ老い人の殖ゆ虚空みつ大和

どこからが余生残生抜けやらぬ風邪に着重ねて花の下ゆく

西行の死に時ならむ月もよし染井吉野の花八分咲き/山埜井喜美枝

歌集『はらりさん』 より

連作「月もよし」より。
旧仮名は苦手だけど、ゆっくり読み進めたい。
表現が豊かだ。美しい日本語。

2021/12/22

妹のいまは主なき歯ブラシは小さき口を恋しがるなり/蒔田さくら子

 妹のいまは主なき歯ブラシは小さき口を恋しがるなり

鰻でもとりませうかと声をかけ届きしを食ぶ夫の命日/蒔田さくら子

現代短歌新聞より

一首目は、初めて作った短歌で、12歳で早世した妹の挽歌、
二首目は、最後の作品となった「短歌人六月号」より。
令和三年八月八日逝去。九十二歳。
紹介されてる歌がどれも素敵だ。


2021/12/17

緊急事態宣言解除 十月の街にきてしたいことがわからず/小島ゆかり

 緊急事態宣言解除 十月の街にきてしたいことがわからず/小島ゆかり

歌壇2022年1月号より

分かるわぁ。あそこ行って、あれしてこれして、って
色々考えてたのに、いざ行ったらすっぽり忘れて、
最低限の用事で帰ってきてしまった。ぽつーんと街中に立って、
自分だけ置いて行かれるような。知らぬ内に
生活意識が変わっていたんだと実感した。


2021/12/14

赤がすき ライブ帰りに来た道を雑にたどって待つ信号の/岡野大嗣

 赤がすき ライブ帰りに来た道を雑にたどって待つ信号の/岡野大嗣

歌集『音楽』より

ライブの高揚感も余韻も伝わってくる。初めての会場だと、
来た道と違うところ歩いちゃったり。私が方向音痴なだけかな。
信号の明かりがライブの照明と重なって見えたりするんだろうな。


2021/12/13

秋の夜のネオンテトラの水槽に酸素を送る音のみの部屋/谷岡亜紀

 秋の夜のネオンテトラの水槽に酸素を送る音のみの部屋/谷岡亜紀

短歌研究2021年11月号より

瞬時に画が浮かんだ。しんとした秋の夜に、いつも以上に響く
水中ポンプの音。キラキラと光るネオンテトラ。
静かに過ぎてゆく時間。水槽の音って、ノイズになる時も、
BGMになる時もあるけど、これはどっちだろう秋の月も見えてくるようで何かいいな。

2021/12/09

自衛隊大規模接種実施中予約者以外立入禁止/庭野治男

 自衛隊大規模接種実施中予約者以外立入禁止/庭野治男

短歌研究2021年12月号より

掲載されている四首が全て漢字でびっくりした。
だからと言って読みにくいとか、意味が無理矢理という事もない。
凄い。スッと読めちゃう。そして漢字だからこそ、
一字一字しっかりその意味を考えながら読んでた。
余計なものがない分、想像も膨らむ。


2021/12/08

竹林のフルートの音色に目覚めたり良きことあれよ弥生の朝/大畑悳子

 竹林のフルートの音色に目覚めたり良きことあれよ弥生の朝/大畑悳子

短歌研究2021年12月号より

竹林を見た事がないので、何だかとても気になった。
他の木々とは違う音がするんだろうか。そういえば竹は
冬も枯れないの?弥生の頃は若葉が出るんだろうか。
竹林のイメージは日の光が緑に反射して瑞々しい。
祈りたくなるような爽やかな朝を想像した。


2021/12/06

閉店のやさしい音楽が流れて、旅を勧めてくる雑誌を閉じる/郡司和斗

 閉店のやさしい音楽が流れて、旅を勧めてくる雑誌を閉じる/郡司和斗

現代短歌2021年9月号

何となく、大型書店というよりは、テナントで入っている
本屋さんを想像した。誰かを待っているのか、一人なのか
分からないけど、時間を潰すためにめくった雑誌。
どこかの土地の特集は、そこに行きたくなるよね。
閉店の音楽で現実に戻る感じがいいな。


2021/12/03

昨晩の君の無言の味がする今朝のキウイもパンもミルクも/小野田光

 昨晩の君の無言の味がする今朝のキウイもパンもミルクも/小野田光

短歌研究2021年6月号より

ケンカしたのかな。気まずさを朝にひきずってる。
読んでるこっちがヒヤヒヤしちゃう。さわやかな朝食の風景なのに、
無言の味がとんでもないスパイスになってる。
きっと君の事が気になって、味がしないんだろうな。
しんとした空気が伝わってきて好き。