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2024/09/22

水滴を閉じ込めたままいくつものビニール傘が傘立てに立つ/嶋稟太郎

 水滴を閉じ込めたままいくつものビニール傘が傘立てに立つ/嶋稟太郎

歌集『羽と風鈴』より

いつ読んでも凄い歌集だなぁ。風景を切り取って、一枚の写真や
絵画のように一首が佇む。ただ見たままの景色が、ややもすれば
見たことさえも忘れてしまうような、 何気ない日常が
そこにあるということを、私はどれだけ見落としているんだろう。
…ひどい文章だな…。
透明な歌の数々が日々の生活を際立たせてゆく。素敵な歌。


2024/09/21

あなたから見える私のなにひとつ許せず坂をくだればタ日/塚田千束

 あなたから見える私のなにひとつ許せず坂をくだればタ日/塚田千束

歌集『アスパラと潮騒』より

私はずっと、自分自身を好きになれず、自分の事を許せずにいる。
でもそれはそばに居てくれる人に失礼だし、
短所は長所であることも分かってる。
どうしようもない自己嫌悪でくだった坂の先にあった夕日は
美しく見えただろうか。なおも自分を責めるだろうか。
あなたから見える私を私はいつか知り得ることができるだろうか。


2024/09/20

絶望が来てやはらかな夕焼が来てことばではないものが来る/荻原裕幸

 絶望が来てやはらかな夕焼が来てことばではないものが来る/荻原裕幸

歌集『永遠よりも少し短い日常』より

いつも思うけど絶望って明るいと思うんだ。でもこの歌の夕焼は絶望とは遠いところにあるように思う。絶望ではないと気付かせてくれたのかな。絶望の中の光。下の句がいいよね。言い表せないものが自分を覆う。自分の心に折り合いをつけるのって難しい。良い歌だな。好き。


2024/09/10

コンビニに入って出たら傾いている太陽だおい待ってくれ/工藤吉生

 コンビニに入って出たら傾いている太陽だおい待ってくれ/工藤吉生


歌集『沼の夢』より

まさにこの前こんな気持ちになったところ。日が短くなるのって、
あっという間だよね。大袈裟かもしれないけど、
一瞬目を離しただけで沈んでる感じ。どうして突然気付くんだろうね。
この取り残されたような結句が好きだなぁ。寄り道してる間に
置いて行かれた、みたいな。ちょうど今の季節と重なって、
淋しい気持ちになるね。

2024/06/18

さくらさくら つよくなりたいほんとうはつよくなくてもいいとしりたい/塚田千束

 さくらさくら つよくなりたいほんとうはつよくなくてもいいとしりたい/塚田千束

『アスパラと潮騒』より

何かね。しんどいね。つよさって何なんだろうね。
それを知るつよさ、みたいな。禅問答みたいだ。自分の弱さを
知ることは、つよさではないのか。つよくなくてもいいと知るつよさ。
何のために戦うのか。どうしてつよくなりたいのか。
吹けば消えそうな心の灯。さくらさくらの寂しさ。
散るさくらを追いかける。孤独だな。




2022/11/23

風邪ですかええまあなどと曖昧にパジャマ姿で過ぎてゆく午後/荻原裕幸

 風邪ですかええまあなどと曖昧にパジャマ姿で過ぎてゆく午後/荻原裕幸

歌集『永遠よりも少し短い日常』より

何となく過ぎてしまう休日あるある。
とりあえず着替えなきゃって思ってるのにずるずると。
そんな時に限って来客。カーディガンを雑に羽織ってみたり。
この曖昧さ、 がいいなあ。相手はきっと気付いてて気まずいよねえ。
何もしてない、出来なかった後悔と罪悪感。






2022/11/19

屋久島の森に置かれたマイクから配信される雨音を聞く/嶋稟太郎

 屋久島の森に置かれたマイクから配信される雨音を聞く/嶋稟太郎

歌集『羽と風鈴』 より

思わず調べた。同じものかは分からないけど、これは良い。
一日中流しておけるやつだ。この歌集の凄いところは、
自分には無い視点で物を見てるのに、自分も同じ目線で
風景が見えてくるところ。同じ所で同じ物を見ているような
気持ちになる。新しい景色と出会う。


2022/11/18

雪かきをだれがするので殴りあう春には消える雪のことで/雪舟えま

 雪かきをだれがするので殴りあう春には消える雪のことで/雪舟えま

歌集『たんぽるぽる』より

本当に馬鹿馬鹿しいなと思うけど、何というかまぁ、
死活問題だよね…。家庭内で殴りあってるなら、
どうぞご自由にって感じだけど、ご近所や行政が絡んでくると
面倒臭い…。そんな季節が近付いてきたなぁ…。
今年も雪が多そうで、考えただけでうんざりする。


2022/11/17

明るくてかげりがあつて十二月が近づいてゐて誰もゐなくて/荻原裕幸

 明るくてかげりがあつて十二月が近づいてゐて誰もゐなくて/荻原裕幸

歌集『永遠よりも少し短い日常』より

今朝カーテンを開けたらうっすら雪が積もってて、まさにこんな感じだった。すぐとけるんだけど明るくて、何だろう、ついに冬が来たな、みたいな。十二月に入ると本当に忙しくて焦るんだけど、今時期は色々考えるのが楽しかったり、急に淋しくなったり、気持ちが忙しい。




2022/11/15

このさきは未来のひとにまかせたい幸福なときのあたしはよわい/雪舟えま

 このさきは未来のひとにまかせたい幸福なときのあたしはよわい/雪舟えま

歌集『たんぽるぽる』より

何か凄いね。誰かに何かを委ねるのって、確かに自分に
余裕がある時じゃないと出来てない気がする。
自分が不幸だと思ってる時は、自分の事に必死でいっぱいいっぱいで、
ある意味強かったかも。幸福なときの弱さは優しい。
ちょっと自分をダメにもする。未来の不確かさが怖い。


2022/10/24

生きてくださいと励ましくれし女の顔もうわたくしは思ひ出せない/高木佳子

 生きてくださいと励ましくれし女の顔もうわたくしは思ひ出せない/高木佳子

歌集『玄牝』より

一読した時から心に焼きついて、でもずっとその真意を
計りかねてる歌。最初は思い出せない事への申し訳なさかと
思ったけど、違和感があった。言われた時は憤りがあって
ずっと憶えてたけど、今は思い出せなくなったのかな。
もうに含まれる時間の経過。文字数足りん。




2022/10/22

近づけば近づくほどにほの暗く触れられないものばかり明るい/塚田千束

 近づけば近づくほどにほの暗く触れられないものばかり明るい/塚田千束

ミニ歌集『そして骨になる』より

理想と現実、かな。たどりつけないような、
自分だけ取り残されていくような不安と孤独。
羨望のような明るさ。 自分の周りだけ暗くうずまいてる気がするんだ。
いつか触れられるだろうか。触れられないからこそ、
明るいのかもしれない。ほの暗いんじゃなく、ほの明るいのかもよ。


2022/10/05

花見でレンタル中です返却ボックスにまだ私が返されてない/荻原裕幸

 花見でレンタル中です返却ボックスにまだ私が返されてない/荻原裕幸

歌集『永遠よりも少し短い日常』より

最初は借りてきた猫みたいだったのかなと思ったけど、
楽しいお花見で、終わってもまだ気持ちが日常に帰ってきてない
って感じかな。うーんでもレンタル中ってどうなんだろう。
返却ボックスって自分の身体?日常生活?
心の内と外が離れてる感じがする。


2022/10/01

砂浜を歩き海から目に届く光のためにおじぎを交わす/堂園昌彦

 砂浜を歩き海から目に届く光のためにおじぎを交わす/堂園昌彦

歌集『やがて秋茄子へと到る』より

青空と柔らかな日差しと。波に反射する光に目をふせるんじゃなくて、
おじぎをする。波もおじぎをしていると捉える感性。
寄せる波の眩しさ。何気ない日常のようで、 特別な一日のようでもある。
祝福。波の音や潮の香りが体を包むような歌。波のキラキラ。
海が見たい。


2021/12/14

赤がすき ライブ帰りに来た道を雑にたどって待つ信号の/岡野大嗣

 赤がすき ライブ帰りに来た道を雑にたどって待つ信号の/岡野大嗣

歌集『音楽』より

ライブの高揚感も余韻も伝わってくる。初めての会場だと、
来た道と違うところ歩いちゃったり。私が方向音痴なだけかな。
信号の明かりがライブの照明と重なって見えたりするんだろうな。


2021/10/21

思い出に降ってくる雨晴らそうとまずは蛇口を締めてまわった/笹井宏之

 思い出に降ってくる雨晴らそうとまずは蛇口を締めてまわった/笹井宏之

歌集『ひとさらい』より

心情を思うよね。きっと思い出したら泣けてくるようなことで、
雨は降らないでほしい。降ってはいない。降ってこないように
蛇口を閉じたら、思い出は今まで通りでいられるのかな。
「まわった」ということは一つじゃない。忘れたくないけど
思い出すと辛い。亡くなった人との思い出と感じた。


2021/09/19

眠るため消した電気だ。悲しみを思い返して泣くためじゃない/工藤吉生

眠るため消した電気だ。悲しみを思い返して泣くためじゃない/工藤吉生

歌集『世界で一番すばらしい俺』より

心の支えになってる一首。どうして布団に入ると悲しいことばかり
思い出してしまうのか。早く寝なきゃって思えば思う程。
当たり前のことが、こんなにも心強く感じる。
夜は悲しみも包み込んでくれるはずと思わせてくれる歌。



2021/09/17

さしだせばどうなったかと思いつつ自分のためにさす傘の紺/工藤吉生

 さしだせばどうなったかと思いつつ自分のためにさす傘の紺/工藤吉生

歌集『世界で一番すばらしい俺』より

紺の傘、ではなく、傘の紺。夜の色だと思った。
日常に溢れる「もし」。できないと分かっていても。それでも。
迷いとか後悔とかが見え隠れしつつ、自分のためにさす。
紺色って不思議な色だと思う。夜の色で、でも真っ暗じゃない。
包み込む色。いいなぁ。好きだなぁ。


2021/09/16

目が合ったあなたは去った軽蔑に致死量があることがわかった/工藤吉生

 目が合ったあなたは去った軽蔑に致死量があることがわかった/工藤吉生

歌集『世界で一番すばらしい俺』より

短編映画を見て。初読の時も何て残酷なんだと胸が詰まったが、
映像になると剛力ちゃんの表情もあって涙目になってしまった。
なかなかしんどいな。軽蔑の致死量なんて知らないままでいたい。
鈍感でありたい。鈍感すぎてもダメだけど。好きな人の視線は痛い。


2021/09/10

いちじくをふたつに割った形状のマンドリンはあなたに抱かれて/工藤吉生

 いちじくをふたつに割った形状のマンドリンはあなたに抱かれて/工藤吉生

歌集『世界で一番すばらしい俺』より

楽器に疎いので調べた。小さくて見た目も音もコロコロしてかわいい。
座って抱えるように弾くので、「抱かれて」という表現が凄く合う。
良く言われる例えらしいけど、好きな人が持っていると、
こんなにもみずみずしくて、艶めいた歌になるんだね。素敵。