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2024/07/12

袖口がぬれて始まる負の朝も金平糖の突起にすぎず/今野寿美

 袖口がぬれて始まる負の朝も金平糖の突起にすぎず/今野寿美

短歌研究2022年5月号より

何も考えずに水にぬれた、だと思って書き始めたけど、
涙にぬれた?感が鈍くて嫌になっちゃうね。
朝日が金平糖に見えて素敵。
そしてその突起はぬれればすぐにほどける。
些末なことだときっと思える。また一日が始まる。
いつか甘い思い出になるのかな。うまく言い表せない…。

2023/11/03

てのひらに赤いダリアの球根をのせて朝日を浴びてゐた母/時田則雄

 てのひらに赤いダリアの球根をのせて朝日を浴びてゐた母/時田則雄

短歌研究2023年5+6月号より

時田さんの、農民の歌と言っていいのかな。大地に根を張って
土を耕し命を育む歌がとてもすきだ。いつだって朝日を浴びた
逆光のシルエットが浮かび上がる。この歌の母の顔の美しさ。
てのひらの球根に命が吹き込むような。うまく言葉が出てこないな。
土の匂いがしてくる。


2023/10/26

吸われずに自販機のかげ捨てられたタピオカたちの遠泳大会/寺井奈緒美

 吸われずに自販機のかげ捨てられたタピオカたちの遠泳大会/寺井奈緒美

短歌研究2023年5+6月号より

一人だと、あの太いストローに刺して吸い込んで食べるけど、
それでも吸いきれない時もあるよねえ。自販機のかげという
もの悲しさからの遠泳大会。雨で流されていくイメージが
浮かんだ。遠泳大会で軽くなってるけど、 良い状況ではないよね。
捨てられた、という受け身。


2023/08/29

ヒーターが点りて消えて三月の丘も世界もまだ定まらず/三枝昂之

 ヒーターが点りて消えて三月の丘も世界もまだ定まらず/三枝昂之


短歌研究2023年5+6月号より

どうやって書き出せばいいかな。三月がいいよね。
冬ではないけれど、春とも言いきれない、まさにまだ定まらず。
世界、で急に視野が広がる。世界が定まる日ってあるんだろうか。
暑さ寒さを繰り返し、裸の枝がまた芽吹いて。
ヒーターの無機質さ。自然の移ろい。

2022/11/16

世界が今壊れていくのにこんなにも静かな午後の十字路である/内藤明

 世界が今壊れていくのにこんなにも静かな午後の十字路である/内藤明

短歌研究2022年9月号より

じわじわと心を抉られてゆくような三十首。見えてる不安と
見えない不安、見えないふりをしている不安。きっとみんな
気付いてて、でも何も変わってないような気がするんだ。
むしろ自分だけが壊れていくような静かさ。
十字路を世界や自分や他人が交差している。


2022/10/20

トラクターのハンドル握る右の手は祖父の大地とつながつてゐる/時田則雄

 トラクターのハンドル握る右の手は祖父の大地とつながつてゐる/時田則雄

短歌研究2022年9月号より

道東出身。時田さんの歌はいつも土の匂いがする。
大地にしっかりと根を下ろし自然と共に生きている。
この一首だけで大変な苦労をされてきたんだなと想像する。
連作の中で、過去から未来へ継がれて、今があって、
どれも息づかいや動作が感じられて素敵だ。


2022/08/06

悲しみを喜ぶ人を死んだって喜ばせないための笑顔を/ショージサキ

 悲しみを喜ぶ人を死んだって喜ばせないための笑顔を/ショージサキ

短歌研究2022年8月号より

あの頃はこんな気持ちで働いてたな。
ある日突然プツッと切れて、どうでもよくなって辞めたけど。
今となっては立つ鳥跡を濁しまくれば良かったかなとも思うけど。
それはそれで今の私は居ないだろうな。
笑顔は武器だと思うよ。笑えなくなったらしんどいだろうな。

2022/08/04

短歌にも質量があり仰向けで読めるタイプの本ではなかった/上坂あゆ美

 短歌にも質量があり仰向けで読めるタイプの本ではなかった/上坂あゆ美

短歌研究2022年8月号より

うまい事言うなあ。そして物凄く納得する。
短歌に限らず、軽い気持ちで読み始めた本がそれどころじゃなくて背筋が伸びる。
質量、が良いよねえ。その人によって変わってくる。いわば価値観の重さかな。
重さに耐えられない時もあるけど、いつかちゃんと読めるといいな。


2022/07/26

どの道を選んでいても不安という悪魔にあうの?なんだ、よかった/岡本真帆

どの道を選んでいても不安という悪魔にあうの?なんだ、よかった/岡本真帆

短歌研究2022年8月号より

よくはないけど、気休めにはなる。
後悔しない生き方なんてなくて、いくつになっても迷うんだ。
いつも悪魔に笑われている気がするんだ。
過ぎてしまえば些細な事で間違いばかりじゃなかったはずだ。
大丈夫。いつだって歩いて行ける。どの道も自分の人生なんだから。

2022/07/15

ほんとうは戦いたかった春雷にまけないようにさけびたかった/塚田千束

ほんとうは戦いたかった春雷にまけないようにさけびたかった/塚田千束
短歌研究2022年7月号より

ああ、しんどいな。心の叫びだ。どうしようもない後悔。
今まさに、春雷に打たれてるような気持ちなんじゃないかな。
その強さに打ちひしがれてしまった。
平仮名の多さに自分の心の弱さや自責の念が表れてるようで、
ヒリヒリして凄く苦しい。どうしようもなかったんだ。

2022/07/14

コンビニのジャスミン茶飲んでるくせに社会が苦手とか言っちゃって/平出奔

 コンビニのジャスミン茶飲んでるくせに社会が苦手とか言っちゃって/平出奔

短歌研究2002年7月号より

こう言われるとあれだね、茶葉から淹れるどころか、茶葉を育てる所から始めなきゃダメだね。
でもそんなことはできないし分かってる。楽天家のようにも見えるし、不安の裏返しで言ってるようにも見える。
社会って範囲が広すぎる。言っちゃってって軽い感じがいいね。

2022/07/02

鳴しきる蟬を衝へて猫走る猛暑の昼の燃ゆる陽のなか/小島ゆかり

 鳴しきる蟬を衝へて猫走る猛暑の昼の燃ゆる陽のなか/小島ゆかり

短歌研究2022年6月号より

毎月楽しみにしてる連載。
猫って誇らしげに持ってくるらしいね。蟬は嫌だなぁ。
中学生の時に話しかけられた野良猫について行ったら、
獲物を見せてもらえたのかなって今でも時々思い出す。
あの時は怖くなっちゃったのよ。どんどん草むらの中に入って行くしさ。
猫、ごめん。

2022/06/29

にぎやかにタイムラインのひとびとは早起きや夜ふかしや在米/山田航

 にぎやかにタイムラインのひとびとは早起きや夜ふかしや在米/山田航

短歌研究2022年6月号より

ジョージ・クルーニーのあれを思い出した笑。
朝、布団の中で眺めるタイムラインはたしかににぎやかだ。
谷川俊太郎の朝のリレーも世界が近く感じられたけど、
この歌は更に近いところで息遣いを感じる。
♥をつけなくても、いつもの人が呟いてるとほっとする。

2022/06/27

疲れると文字が読めなくなっていく。他に言うことは何もなかった。/石井僚一

 疲れると文字が読めなくなっていく。他に言うことは何もなかった。/石井僚一

短歌研究2022年7月号より

泣きたくなるような連作。作者の心の内だと思いながら読んでたら、
だんだん自分と重なって、最後は背中をなでられてるような気持ちになった。
全ての歌に句点あり。 繰り返し使われる「ばか。」「雨」。上の句だけの歌。
他に言うことは何もなかった。言葉が出てこない。悲しい。