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2024/12/20

まあいいか生涯一度も骨折をしないであはや死ぬところだつた/永田和宏

 まあいいか生涯一度も骨折をしないであはや死ぬところだつた/永田和宏

短歌研究2024年5+6月号より

骨折したことを淡々と詠う連作。冷静で、どことなく
他人事っぽいのがじわじわ実感していくのがおもしろい。
これは最後の歌。まあいいかの明るさ。あはや、は深読みすると、
骨折で済んで良かった、でもあるのかな、とか。
悪い事も、何事も経験、と捉えてるのがいいな。


2024/12/18

足悪きわたしも時に歩きたく杖二本取れば夫が慌てる/前田彌生

 足悪きわたしも時に歩きたく杖二本取れば夫が慌てる/前田彌生


短歌研究2024年5+6月号より

かわいいね。こういう風に齢を取りたいし、こういう夫婦でありたい。
さらっと読んで深く考えてなかったけど杖二本は車椅子生活で
ほとんど使ってないんだろうか。 あ、違う、杖なしで
歩こうとしてるのか。頓珍漢なことを書いてしまった…。
夫が素敵だなぁ。

2024/12/09

青く奇妙な蝶がことばを話すので夢だと思ふけれど目覚めず/荻原裕幸

 青く奇妙な蝶がことばを話すので夢だと思ふけれど目覚めず/荻原裕幸

短歌研究2024年5+6月号より

夢だと思う、という確信の持てなさと、目覚めないことで
現実かも?と混乱してる感じが、夢の中の世界でおもしろいな。
夢と分かっていても目覚めず、夢の中の行動になってるんだよね。
どうせ夢だし、とならないのが不思議でおもしろい。
蝶のことばは理解できたのかな。




2024/12/06

おほ雪ののちの晴れ間は稼ぎ時あちこちダンプが除排雪する/大朝暁子

 おほ雪ののちの晴れ間は稼ぎ時あちこちダンプが除排雪する/大朝暁子

短歌研究2024年5+6月号より

そんなな季節になってきたねえ…。今は人手不足で大変そうですよ。
今もそんなに稼げるのかなぁ。昔は冬だけで一年分稼いでたと聞いた。
今はダンプも足りてないらしい。大変な仕事だよねぇ…。
大雪のあとのきれいな道は本当にありがたい。感謝です。


2024/12/03

信号の渡れの音が響きたる朝わが身の心の音か/佐藤モニカ

 信号の渡れの音が響きたる朝わが身の心の音か/佐藤モニカ

短歌研究2024年5+6月号より

これはその日の気分によって音の聞こえ方が違ってきそうだね。
鼓舞するような気持ちの時もあれば、急かされてるような、
責められてるような気になることもありそう。でもどっちにしても
しっかりしろと言ってるかな。変わらない音だからこそ、
心の音になりうる気がする。


2024/12/01

おのづからきのふは過去へと流されてひとりとり残さるる原つぱ/山本和可子

 おのづからきのふは過去へと流されてひとりとり残さるる原つぱ/山本和可子

短歌研究2024年5+6月号より

昨日の歌から続いてるような一首。とり残さるる、の焦燥感…
うー違うな…。昨日の自分と今日の自分。前に進めない、
でもないよね。おのづから、にある今の自分と、
やがて過去になる自分、かな。過去になってしまった人たちでも
あるのかな。原っぱの風景がいいな。


2024/11/29

晩秋のひかり湛へるみづうみを心に住まはせ部屋ごもりする/宮本永子

 晩秋のひかり湛へるみづうみを心に住まはせ部屋ごもりする/宮本永子

短歌研究2024年5+6月号より

一読して好き!!となって勢いで書写したけど、本当に好き、
しか出てこないな…。秋の空気。春が新しい事を始めたくなる
季節だとしたら、秋はそうやって湛えたみづうみを活かす季節かも。
秋の夜長だねぇ。暮れの忙しさが近づいてきて、
みづうみの静けさが心を癒やす。


2024/11/25

水鳥を「水鳥ちゃん」と呼ぶひとがここはこの世の果たてだと言う/笹川諒

 水鳥を「水鳥ちゃん」と呼ぶひとがここはこの世の果たてだと言う/笹川諒

短歌研究2024年5+6月号より

実は名字なんじゃないかなと思ったよ。
それでも水辺に立つ人と水鳥が見えてくる。思い浮かんだのは野付半島。
潮が満ちて、今歩いていた道が隠れる。揺れる水鏡に映る空と人々。
浮かぶ水鳥。ふともう戻れなくなるんじゃないかと思う。
果たてという言い回しがいいな。


2024/11/23

一日にたった五分の健康に良い体操を初日でやめた/工藤吉生

 一日にたった五分の健康に良い体操を初日でやめた/工藤吉生

短歌研究2024年5+6月号より

この歌が好きすぎる笑。この歌のおかげでもうちょっと
頑張ってみようという気持ちになる。結局は三日坊主なんだけど…。
言い訳だけど、やってみないと続くかどうか分からないし、
やってみただけ偉いよね。やれば何かのきっかけで
再開するかもしれないし。心強い歌。


2024/11/22

わが招き猫よおまえとただに在るだけの日を多めにしておくれ/雪舟えま

 わが招き猫よおまえとただに在るだけの日を多めにしておくれ/雪舟えま

短歌研究2024年10月号より

凄いな。小説のような連作だと思ったら、
同タイトルの小説があるのね。物語としてのファンタジーが、
一首になった時に現実の比喩に見えてくる不思議。
この歌も、 人を猫に例えてるのかなと。
ある日フラッといなくなるかもしれない。
いなくなることを受け入れてもいる。


2024/10/04

冗談をまじへつつ言ふ求職の自嘲が過ぎればそれは差別ぞ/真中朋久

冗談をまじへつつ言ふ求職の自嘲が過ぎればそれは差別ぞ/真中朋久

短歌研究2024年5+6月号より
 
自分のことを言われてるのかと思うような一首だ。
冗談にしなければ自分の心がつぶれそう。ロをつく言葉は
自嘲でありながら、自分の中にある無意識の差別や偏見を
炙り出す。そこまで卑下することは無いのだ。
自分の言葉はいつか自分に返ってくる。この歌を心に留めておこう。




2024/10/01

百寿とはこんなものかと思い居り昨日も今日も何も変わらず/横田英夫

 百寿とはこんなものかと思い居り昨日も今日も何も変わらず/横田英夫

短歌研究2024年4月号より

こんなものなのかなあと思いつつそういうものかもなあと
納得もする一首。想像もできない年だけど、今の自分を思うと
案外あっけないというか、成るようになってるというか。
老いるのは怖いけど、見たものを、感じたことを、
最後まで残せるといいな。




2024/09/30

昨日も読んだページと気づくそのままにゆっくり追い越していく三月を/竹中優子

 昨日も読んだページと気づくそのままにゆっくり追い越していく三月を/竹中優子

短歌研究2024年5+6月号より

破調の短歌はちょっと苦手なんだけど、この歌は破調だからこそ
この雰囲気を作ってるなと思う。そのままに、が真ん中にあって、
栞のように下の句へと続く。気付けばあっという間に過ぎる三月。
追い越していくのか置いていくのか。なぞるような時間を追い越していく。


2024/09/29

だとしてもつづけてほしい誰ひとり幸せにしない夜更けの手品/魚村晋太郎

 だとしてもつづけてほしい誰ひとり幸せにしない夜更けの手品/魚村晋太郎

短歌研究2024年5+6月号より

「誰ひとり幸せにしない」って強烈だなぁ。夜更けという孤独。
その願望は誰に向けられているんだろう。手品はまやかしみたいな、
何かの比喩だろうか。あ、手品は自分がしてるのかな。
つづけてほしい、は自分じゃない誰か。
自分は幸せにできないけどあなたは。逆説的な。

2024/09/28

残念なお知らせだけどその煮物同じ味には二度とならない/本条恵

 残念なお知らせだけどその煮物同じ味には二度とならない/本条恵

短歌研究2024年10月号より

家庭料理だねえ。同じように作ってるはずなのに、
びっくりするくらい美味しくできる時があるよね。ちょっとした
さじ加減だったりたまたま使った食材だったり。でもこの時点で
宣言してるのはちょっと不思議。あ、一日置いて味が変わったとか?
何か的外れな事言ってるな…。




2024/09/17

青豆のごはんを炊けばゴンドラから雪野に帽子を落とした記憶/米川千嘉子

 青豆のごはんを炊けばゴンドラから雪野に帽子を落とした記憶/米川千嘉子


短歌研究2024年5+6月号より

人の記憶って、とんでもないところから呼び戻される。
青豆は帽子の色だろうかとか、炊き上がりのごはんと雪野の
雪けむりとか。人の記憶を覗くようで不思議な気持ちになる。
本人しか、あるいは本人にも分からない記憶のスイッチ。
また違う記憶へ繋がっていくのかな。

2024/09/16

もういない人のことばがもういないわたしを生かす 千年生きる/石井僚一

 もういない人のことばがもういないわたしを生かす 千年生きる/石井僚一

短歌研究2024年5+6月号より

もういないわたし、か。今に生きてる人という感じがする。
過去のわたしを生かすのは、自分のことばじゃなくて、
もういない人のことばなのかなと。ああ違うな。
自分がいなくなったあとも歌に残る。千年前から受け継がれて、
千年後も生きてゆくんだ。言葉って強いな。


2024/09/15

さらさらと朝日は届く、貧者にも富者にも博士にも博徒にも/高島裕

 さらさらと朝日は届く、貧者にも富者にも博士にも博徒にも/高島裕


短歌研究2024年4月号より

朝日がさらさらって、まっさらという感じがして柔かくくてきれいだ。
同じ朝日だけど、同じではないんだなとか、どう言えばいいのかな、
どこかに、何かに属する以前に一人の人間であること。
ちょっと解釈が壮大すぎるとは思うけど、朝日はいつだって
始まりを照らしてくれる。

2024/09/09

来るだろう、と見あげた先へ 一筋の雨が線画のように降りそむ/中井スピカ

 来るだろう、と見あげた先へ 一筋の雨が線画のように降りそむ/中井スピカ


短歌研究2024年8月号より

現実が、不確かなものになるような。美しい物語のよう
な。
実感がないというか。一筋の雨が祝福のようにも警告のようにも見える。
自分が、受け止めるべきもの、なのかな。僅かに含まれる
来ないかもしれない。見あげた先は、自分自身が見下ろしている。

2024/09/08

挑発をせねば主張とみなされず でもわたくしは伏せた酢漿草/永田紅

 挑発をせねば主張とみなされず でもわたくしは伏せた酢漿草/永田紅


短歌研究2024年5+6月号より

カタバミ、読めなかった。読めないこと自体がこの歌の
言わんとすることに当てはまるのかも。いつだってそこにある。
気付かれるまでそこにいること。気付かれて雑草と見るか
薬草と見るか。主張しないからと言って、
意見がないわけではないのだ。挑発なんて要らないのに。