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2026/01/03

[今日の短歌/川野里子]ざらざらとざらざらと雨は降りてをりからだの内部に外部にやがて暗部に

 ざらざらとざらざらと雨は降りてをりからだの内部に外部にやがて暗部に/川野里子

短歌タイムカプセルより

雨の音がざらざらなのは何だか不穏だし、「やがて暗部に」が
内部よりも深く、暴いていくような怖さがある。暗部には、
見たくないもの、見せたくないものがあって、
雨が「ざらざらと」浸透してくる。破調のリズムが
ますます不穏さを強調して足もとが重くなってくる。


2026/01/01

[今日の短歌/加藤千恵]わかりあうことはできない 同じものを見たり食べたり聞いたりしても

 わかりあうことはできない 同じものを見たり食べたり聞いたりしても/加藤千恵

短歌タイムカプセルより

新年早々もうちょっと明るい歌を選べば良かったなと思う反面、
こういう時代だからこそ、こういうことを忘れず
心に留めておかなければと背筋が伸びる。わかりあえなくても
相手を知ることはできる。それを放棄してはいけない。
やっぱり新年に選んで良かった。よろしく、2026年。


2025/12/31

[今日の短歌/加藤治郎]だからもしどこにもどれば こんなにも氷をとおりぬけた月光

 だからもしどこにもどれば こんなにも氷をとおりぬけた月光/加藤治郎

短歌タイムカプセルより

何だか怖いな。上の句と下の句の落差というか。ちょっと違うな。
薄氷と気付いていながら言い訳を重ねてるような。書けば書くほど
何か違うとずれていく…。一字空けは、上の句の言葉が
とおりぬけたからか。とおりぬけなければ、
月光は何を残したのだろう。冷たくて痛い。


2025/12/30

[今日の短歌/春日井建]早朝ののみどをくだる春の水つめたし今日も健やかにあれ

 早朝ののみどをくだる春の水つめたし今日も健やかにあれ/春日井建

短歌タイムカプセルより

春の水は雪解け水を思わせる。そのイメージで、早朝のまぶしさや
清らかな水のつめたさが鮮やかになる。「のみどをくだる」から
「健やかにあれ」の水の流れが、自分事から外に向かっていくような、
自分だけの祈りではないような、朝の光の透明さがどこか物悲しい。


2025/12/27

[今日の短歌/香川ヒサ]闇が濃くなりゆくばかり眠らむとする者は部屋を暗くするから

 闇が濃くなりゆくばかり眠らむとする者は部屋を暗くするから/香川ヒサ

短歌タイムカプセルより

眠れない自分と、寝ようとしてる家人、と思ったけど
違う気がする…。何だろう、自分だけが暗く闇にのみこまれそうな
怖さがあるよね。「眠らむとする者」は、もしかして
死にゆく人のことだろうか。それならば、闇が濃くなることも、
部屋を暗くするのも分かる気がする。


2025/12/26

[今日の短歌/小野茂樹]感動を暗算し終へて風が吹くぼくを出てきみにきみを出てぼくに

 感動を暗算し終へて風が吹くぼくを出てきみにきみを出てぼくに/小野茂樹

短歌タイムカプセルより

分かち合うってこういうことを言うんだろうね。
時が止まったような、暗算し終えるまでの時間。巡るような
風の流れ。結句で戻ってくる風は、もうぼくのではなく、
きみの感動を含んでいる。それが嬉しい。
嫌な見方をすれば、それを計算してた?きっと風は計算違い。


2025/12/25

[今日の短歌/奥村晃作]少年が引き連れて冬の夜の空の星を見に行く家族四人で

 少年が引き連れて冬の夜の空の星を見に行く家族四人で/奥村晃作

短歌タイムカプセルより

日々の出来事が短歌になるのって素敵。そして私は
ぼんやり生きてるなと反省する。日記とは違う思い出になるなと思う。
ところでこの少年に息子さんでいいのかな。書き写しながら、
ふと家族ではないかも?と思ったり。
少年という響きが良いのかな。夜の道がぱっと明るくなる。


2025/12/24

[今日の短歌/荻原裕幸]十二色のいろえんぴつしかないぼくに五十五色のゆふぐれが来る

 十二色のいろえんぴつしかないぼくに五十五色のゆふぐれが来る/荻原裕幸


短歌タイムカプセルより

十二色あれば、表現できない色はないという。それでも
たくさんの色があれば幅が広がるのではないかと思ってしまう。
そんな五十五色。明確な色があるのに、自分ではうまく作れない。
すぐに取り出せる一本があったとして、
イメージ通りとは限らないと思うのは負け惜しみだろうか。





2025/12/23

[今日の短歌/岡野大嗣]ともだちはみんな雑巾ぼくだけが父の肌着で窓を拭いてる

 ともだちはみんな雑巾ぼくだけが父の肌着で窓を拭いてる/岡野大嗣

短歌タイムカプセルより

昭和のおばさんなので、雑巾はそういうものだろうと思うけど、
子供心には厳しいよねぇ。案外自分以外にも以たような子は
いたと思うけどなぁ。今なら雑巾をわざわざ縫ったりしないのかな。
今気付いたけど、まさか本当に肌着のまま持って行ってる?
さすがにそれはないよね?





2025/12/22

[今日の短歌/岡崎裕美子]鳴らぬもの集めてまわる男いてそのトラックに我も乗りたし

 鳴らぬもの集めてまわる男いてそのトラックに我も乗りたし/岡崎裕美子

短歌タイムカプセルより

廃品回収のトラックかな、自分も回収されたいのかな、と思ったけど、
一緒に集めてまわる方かもしれない。何となく、鳴らぬものが
ならず者に見えてきたり、普段乗る機会のないトラックで
知らない遠くへ行ってしまいたいのかと思ったり。
この人の歌はいつもザワザワする。




2025/12/21

[今日の短歌/岡井隆]天に向き直立をするぼくの樹よお休みなさいな 夜が来てゐる

 天に向き直立をするぼくの樹よお休みなさいな 夜が来てゐる/岡井隆

短歌タイムカプセルより

まっすぐな人柄を思うよ。お休みなさいなに柔らかな
優しさを感じられるのが良い。「な」を取れば、定形で収まるけど
そうすると結句がきつく感じる。急かされてるというか。
「な」がクッションになって、安心感が出て夜を穏やかに
迎えられそうな気がするんだ。





2025/12/20

[今日の短歌/大森静佳]かろうじてそれはおまえのことばだが樹間を鳥の裸身が揚がる

 かろうじてそれはおまえのことばだが樹間を鳥の裸身が揚がる/大森静佳

短歌タイムカプセルより

上の句にどきりとする。私はいつだって私のことばが本当に
自分の内から出てるのか、聞こえの良いことばを
並べてるだけじゃないかとことばに確信が持てない。
下の句の鳥は、本当に鳥だろうか。裸身とはどういうことだろう。
樹間に揚がるそれは、幻のようにどこかおぼろげだ。




2025/12/19

[今日の短歌/大松達知]支援物資のなかに棺のあることを読みてたちまち一駅過ぎつ

 支援物資のなかに棺のあることを読みてたちまち一駅過ぎつ/大松達知

短歌タイムカプセルより

そんなものを送りたいわけじゃないと一瞬思ったあと、
そうしないと生きてる人の心が救われないのだと気付いて、
自分の浅はかさ、偽善を恥じた。釘付けになる内容の一文。
周りが見えなくなるほどの没入感。息がつまるというか。
たちまちだけど、長い長い時間と思う。







2025/12/18

[今日の短歌/大西民子]亡き人のショールをかけて街行くにかなしみはふと背にやはらかし

 亡き人のショールをかけて街行くにかなしみはふと背にやはらかし/大西民子

短歌タイムカプセルより

その人との思い出、というよりは、温もりという感じがする。
形見なんだろうけど、日常使いしていて、それを忘れている。
あ、違うな。一緒に出掛けるような気持ちか。
「背にやはらかし」。まさに肩を抱いて包み込んでくれるような
ショールの温もり。かなしみ以外を思い出す





2025/12/17

[今日の短歌/大辻隆弘]蜂蜜のよどみのやうな残光といへりそれさへつかのまにして

 蜂蜜のよどみのやうな残光といへりそれさへつかのまにして/大辻隆弘

短歌タイムカプセルより

何だろう。ちょっとした違和感だろうか。残光だから、
つかのまなのは当然ではないのか。ざらつくようなよどみも、
過ぎてしまえば何事もなかったかのように消えて忘れるだろうか。
「それさへ」ということは、他にも?気付かぬふりをして
やり過ごすような後ろめたさを感じる。





2025/12/15

[今日の短歌/大塚寅彦]生没年不詳の人のごとく坐しパン食みてをり海をながめて

 生没年不詳の人のごとく坐しパン食みてをり海をながめて/大塚寅彦

短歌タイムカプセルより

生没年不詳の人って謎だなぁと思ったけど、
見ず知らずの他人ってそんな感じかもなと考えると、
誰にも見つからず、世間からも離れてしまったかのような孤独感と
捉えることは無理があるだろうか。海というのも孤独を増す。
どこから来てどこへ行くのか。生きる為の「パン食みてをり」なんだろう。






2025/12/14

[今日の短歌/大滝和子]さみどりのペディキュアをもて飾りつつ足というは異郷のはじめ

 さみどりのペディキュアをもて飾りつつ足というは異郷のはじめ/大滝和子

短歌タイムカプセルより

ああ、こういう歌を読むたびに、私はちゃんと
自分の足で立っていないのだなと感じてしまう。
ペディキュアを塗るその足が、ひどく眩しいのだ。
さみどりが柔らかな草を思わせて、その足で地を踏んで、
どこへでも行ける。踏み出せば、そこが異郷のはじめだと、
都合良く解釈しても良いだろうか。





2025/12/13

[今日の短歌/大口玲子]わが一生ひとよいつどこで鬼と逢へるらむその日のために化粧を濃くす

 わが一生(ひとよ)いつどこで鬼と逢へるらむその日のために化粧を濃くす/大口玲子

短歌タイムカプセルより

できれば鬼には逢いたくないなぁ。素顔を、本心を
見せないための化粧か、それとも、見つけてもらうための
濃い化粧なのか。「逢へるらむ」に漂う仄かな期待。
「化粧を濃くす」に感じられる畏怖の念。昔から人間が一番恐ろしいと言う。
その化粧を見る私が鬼なのかもしれない。





2025/12/12

[今日の短歌/江戸雪]うしなった時間のなかにたちどまり花びらながれてきたらまたゆく

 うしなった時間のなかにたちどまり花びらながれてきたらまたゆく/江戸雪

短歌タイムカプセルより

こうやって立ち直っていくんだな。うしなった時間は戻らなくて、
それでもあの時こうだったら、こうしてれば、と思うこともある。
そうやってたちどまり、気持ちと折合いがついたら
花びらがながれてくるのでしょう。「また」という繰り返し。
そうやって日々を歩いてゆく。







2025/12/11

[今日の短歌/梅内美華子]銀髪の婦人のやうな冬の日が部屋に坐しをりレースをまとひ

 銀髪の婦人のやうな冬の日が部屋に坐しをりレースをまとひ/梅内美華子

短歌タイムカプセルより

しんしんと降る雪の日だなぁと思ったけど、部屋に、なので、
冬の細い日差しが木洩れ日のように部屋を照らしているのかも。
柔らかな影がレースのように見えてくる。そこに人は居ないのに、
椅子に座ってレース編みをする、銀髪の婦人の姿が浮かんでくるのだ。