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2025/07/11

生かされてまた風となる星月夜愛てふものへまだ笑ふべし/渡邊新月

 生かされてまた風となる星月夜愛てふものへまだ笑ふべし/渡邊新月


角川短歌2025年1月号より

私には感性との教養が足りないんだろうな。
美しい連作だなと思うけど、いまいちピンと来なくて何だか悔しい。
人は生かされてるものじゃないのかな。
風となるのは安らぎなのか諦めなのか。下の句も難しいな。
不確かなものというか。疑心暗鬼みたいな。何か違うな・・・。


2025/07/10

波は寄せる さん・ろーらん さん・ろーらん 踊りたい少女たちの足もと/鈴木加成太

 波は寄せる さん・ろーらん さん・ろーらん 踊りたい少女たちの足もと/鈴木加成太

角川短歌2025年1月号より

外国の名前は擬音みたい。
島国の日本に寄せる波と思えば不思議と合ってる気がする。
踊りたい少女たち。サンローランなら踊る場所を用意してくれそうな気がする。
だけどそこにはたどりつけない。脆い足もと。うまく言葉が出てこないな。
ひらがななのは、かりそめだから?

2025/07/09

生きるって何かいちいち考えず魚ばかりの本を読むカフェ/田中翠香

 生きるって何かいちいち考えず魚ばかりの本を読むカフェ/田中翠香

角川短歌2025年1月号より

こういう時間が必要というか、
あたりまえに生きていける世であってほしいと思うよ。
でも人生に意味なんてないという言葉も思い出すんだ。
カフェのざわめきが水族館めいて自分も魚と一緒にたゆたうような、
日常を忘れるようなひととき。生きるって難しいね。

2025/07/08

ひとすじの光もささぬ靴箱に靴を待たせて脱衣所へ行く/道券はな

 ひとすじの光もささぬ靴箱に靴を待たせて脱衣所へ行く/道券はな

角川短歌2025年1月号より

この靴は自分自身なのかな。過去の自分?必死で歩いていた。
気付けば暗がりで、誰も手を差し伸べてはくれなかった。
誰もは言いすぎか。靴箱の暗さは本当に暗いものだろうか。
大事にしまってるとも言えないか。待たせて、がどこか後ろ暗くて、
それを洗い流すような結句。

2025/07/07

LIFE IS そんなもん、という落書きの書かれた歩道橋 わたりきる/阿波野巧也

 LIFE IS そんなもん、という落書きの書かれた歩道橋 わたりきる/阿波野巧也

角川短歌2025年1月号より

何でだろう。スプレーで書かれた大きなものじゃなく、欄干の、
見落とすようなところに油性ペンで書かれているのが浮かんだ。
気付かずに通り過ぎる落書き。気付いても変わらない日常。
おそらく引き返すことのない歩道橋。そんなもんだよ、と
わたり歩くのだ。

2025/07/06

ひらいても閉ぢてもわれの眼に視えぬこの空にたしかにある爆撃機/川野芽生

 ひらいても閉ぢてもわれの眼に視えぬこの空にたしかにある爆撃機/川野芽生

角川短歌2025年1月号より

結局は安全なところに居て、分かった気でいるだけなのかもしれない。
遠くの国の現実を、知らなかったで済ませてはいけないのだ。
無力であっても、無知であってはいけない。
ああ、視えぬ、は爆撃機ではなく、この空、 この世の中かも。
歪んでゆく正義。正しさとは。

2025/07/05

文字盤を耳に寄せれば秒針は柱時計のようにも響く/山階基

 文字盤を耳に寄せれば秒針は柱時計のようにも響く/山階基

角川短歌2025年1月号より

最初は新しい腕時計かなと思ったけど、古い懐中時計かも。
腕時計にしろ懐中時計にしろ、耳に近付けた腕が柱となって
柱時計のイメージが広がっていくのが良いな。
近付かないと聞こえない秒針の音。
いっときを忘れる、心を落ち付ける行為なのかも。

2025/07/04

背骨からほろほろ崩(く)えてゆくごとき朝の疲れよ紅ひきて出づ/菅原百合絵

 背骨からほろほろ崩(く)えてゆくごとき朝の疲れよ紅ひきて出づ/菅原百合絵

角川短歌2025年1月号より

朝起きた瞬間からシャキッと動ける人が羨ましい・・・。
この歌に漂う気怠さが自分のことのように思えて、
自分だけじゃないという安心とちょっとした反省を連れてくる。
でもこの歌は休めてないのかな。疲れが蓄積されてる感じもする。
軸となる背骨。紅は心の傷でもあるのかも。

2025/07/03

悪漢の都市より聖人の都市へ受け渡さるる一束の麦/山川築

 悪漢の都市より聖人の都市へ受け渡さるる一束の麦/山川築

角川短歌2025年1月号より

連作のベースになるものがあるんだろうけど、私が分かってない。
トンチンカンな感想になりそう。
この歌は善意のふりをした悪意なのか、
悪漠といえどもあるであろう良心なのか。
後者であればいいなと思いつつ、そうやって
踏みにじられていくんだろうなとも思う。

2025/07/02

新年をいはふメールに門松の絵文字のちさく立つはうれしも/山下翔

 新年をいはふメールに門松の絵文字のちさく立つはうれしも/山下翔

角川短歌2025年1月号より

最近は門松をあまり見かけなくなったよね。
飾りもシンプルでちょっと淋しい。
絵文字の門松はずっと残るといいね。
下の句にある「ちさく」は絵文字だけじゃなくて、
自分の気持ちも表れていてほっこりする。
定型文になってしまうメールが少しやわらぐ。
絵文字って便利。

2025/07/01

天上に雪の花野がたちみえて生きるかきみを忘れるために/藪内亮輔

 天上に雪の花野がたちみえて生きるかきみを忘れるために/藪内亮輔

角川短歌2025年1月号より

生きてゆくことって、忘れてゆくことだと思うんだ。
全てを忘れるわけではないけれど、薄れていく記憶や思い出。
輪郭がぼやけてゆくというか。見上げた雪が花野のように見えること。
天上にきみがいるのか、天上に行きたい自分なのか。
生きるかの息苦しさ。辛いね。


2025/06/30

見てあれは白と白との縞模様ウェディングドレスの純白の滝/大森静佳

 見てあれは白と白との縞模様ウェディングドレスの純白の滝/大森静佳

角川短歌2025年1月号より

たっぷりのシルクサテンのギャザーが織り成す模様。
あれ?違うわ。
白い水しぶきを上げて落ちる滝がウェディングドレスに見えたんだ。
本当に私は助詞が読めてないな。書きながら気付いて、
急に滝が鮮明になった。
こうやって見落としてる歌がたくさんあるんだろうな。

2025/06/29

風ないス ナイスな風を受けながら見たことのない海をおもひぬ/吉田隼人

 風ないス ナイスな風を受けながら見たことのない海をおもひぬ/吉田隼人

角川短歌2025年1月号より

風無いですよ、のないスからナイスな風が吹くのがいいな。
風ないス、は誰が言ったんだろう。
軽い感じから海へ思考が向かってるのが妙にリアル。
突然脈絡のないことが浮かんだりする時あるよね。
見たことのない海から潮風が吹いてくる。
でもそんな風はないス、なんだよね。


2025/06/28

君が夢に出てきたことのおはじきにしたたる冬の朝の光は/千種創一

 君が夢に出てきたことのおはじきにしたたる冬の朝の光は/千種創一

角川短歌2025年1月号より

全てがはかない幻のようで、朝の光が現実を連れてくる。
でも夢の続きでもあるのかなぁ。ただただ美しくて、
どう言えばいいんだろう。冬の朝の光は、細く弱々しいようで、
冷たく鋭くもある。射し込む、とかじゃなく、
したたる、の透明感に惹かれる。音のない歌。好き。

2025/06/27

人間はよくしゃべる生き物だなと思うわたしも人間のはずなのに/谷川電話

 人間はよくしゃべる生き物だなと思うわたしも人間のはずなのに/谷川電話

角川短歌2025年1月号より

こういう孤独の感じ方もあるんだな。疎外感とはまた違う感じ。
聞くともなしに聞こえてくる人々の会話。
そこにいるはずの自分だけど、何もしゃべらないでいる。
自分の存在を疑ってしまう。ふと落ちてしまう孤独のポケット。
余計なことを言ってしまったのかもしれない。

2025/06/26

この家が古墳になってゆくまでを迎えに行こう死なせた蝌蚪も/小島なお

 この家が古墳になってゆくまでを迎えに行こう死なせた蝌蚪も/小島なお

角川短歌2025年1月号より

連作としての完成度が凄すぎて、
この一首を抜き取って感想を書いても大丈夫?と不安になる。
古墳は比喩かもしれないけど、迎えに行こう、の時間の捉え方に衝撃を受ける。
蝌蚪はおたまじゃくし。そして中国の古体篆字を指すそう。
死なせた、に浮かび上がる自身のこと。

2025/06/25

記憶には残りてをらずハイライトばかり吸ひける母方の祖父/門脇篤史

記憶には残りてをらずハイライトばかり吸ひける母方の祖父/門脇篤史

角川短歌歌1月号より

人づての話、なんだろうけど、それも写真で気付く、
みたいな感じかなぁ。あれ?違うか。自分の記憶にはない祖父。
祖父が遺したものからと、祖父を知る人から聞く人物像の違い?
煙草の煙が過去を連れてくるのがいいな。
ハイライトがいいよね。若葉だとこの雰囲気じゃない。

2025/06/24

一日の終わりの味のみそらーめんの湯気に夜明けが包まれている/佐佐木定綱

 一日の終わりの味のみそらーめんの湯気に夜明けが包まれている/佐佐木定綱

角川短歌2025年1月号より

たたみかけてくる「の」の勢いで、夜明けがとても眩しく見える。
一日の終わりから夜明けまでの時間。それは明日への活力なのかなぁ。
でもひらがなのみそらーめんは呑んだあとの〆のような気もする。
そうなると、夜明け近い深夜?少しの後悔も包まれている?
面白いなぁ。


2025/06/23

牛丼をしずかに食べたカウンター命拾いをした早朝に/平岡直子

 牛丼をしずかに食べたカウンター命拾いをした早朝に/平岡直子


角川短歌2025年1月号より

何だか心が冷える連作だ。いや、そういう歌ではないのだけれども。
疎外感?拒絶?そう受け取ってしまうのは何故だろう。
何が私の心を刺すのだろう。
短歌を読んで自分の心が分からなくなるだなんて。
いつかこの気持ちを言葉にできるだろうか。
静かで淋しくて怖いのだ。

2025/06/22

好きだった趣味をだんだん遠ざかるおそらくは死もそのように来る/伊波真人

 好きだった趣味をだんだん遠ざかるおそらくは死もそのように来る/伊波真人

角川短歌2025年1月号より

趣味「が」じゃないの?と思ったが、をとすることで
自分から手離してる感じがする。でも「遠ざける」わけでもない。
絶妙だなぁ。薄まる情熱。下の句は、そうであってほしいという
願望のように受け取った。嫌になったわけじゃなく、
気持ちがないわけじゃなく。