2021/08/28

濁点はやっぱりトゲのつもりだろうか  ばら、ぼけ、あざみ、さぼてん、じぶん/林あまり

 濁点はやっぱりトゲのつもりだろうか

 ばら、ぼけ、あざみ、さぼてん、じぶん/林あまり

短歌研究2021年8月号より

着眼点が凄い。それを思い付くだけでも凄いのに、
最後に来るのは自分。もの凄い説得力がある。そうかも、
と自分のトゲを見つめてしまう。時々誰かを刺してるかもしれない。
でもキレイな花も咲くもんね。咲くといいな。


2021/08/26

沈黙へつぎつぎ意味の絡まってそれは蔓だらけのゴリアテになる/千種創一

 沈黙へつぎつぎ意味の絡まってそれは蔓だらけのゴリアテになる/千種創一

短歌研究2021年9月号より

ああ凄いな。元の沈黙の意味は隠れてもう見えない。
後付けされた意味が重なって飛び出して巨大になってく。
無言の圧力みたいな、いや違うな。この歌を内から見るか
外から見るかで見え方が変わる。自分の沈黙なのか、
誰かの沈黙なのか。ゴリアテに例えるのが凄い。


2021/08/23

木の梢揺れて彼女を知っていた 涸れたままでもいいよ噴水/小島なお

 木の梢揺れて彼女を知っていた 涸れたままでもいいよ噴水/小島なお

短歌研究2021年8月号より

「女」を強く感じさせる連作百首。比喩が切ない。
上の旬は、直接の知り合いじゃないのかもしれない。
それでも下の句で語りかける。産むことも産まない、
産めないことも個人を尊重すべき、そんな言葉すら重荷になる。
性差を消すことはできないのに。


2021/08/22

正しさがタイムラインを埋め尽くし責められており主婦なるわれは/富田睦子

 正しさがタイムラインを埋め尽くし責められており主婦なるわれは/富田睦子

短歌研究2021年8月号より

自分も気をつけなきゃいけないけど、
似た考えの人をフォローしがちなので、
自分の考えと違う意見で溢れると不安になるし、
責められてるような気持ちにもなる。 最近は個を大事にと
言いながら、輪から外れると容赦ない感じがあって怖い。
どっぷり浸からないようにしなきゃ。


2021/08/21

健診の結果は要再検査D よくあること、そう、よくあることだ/本条恵

 健診の結果は要再検査D よくあること、そう、よくあることだ/本条恵


短歌研究2021年8月号より

連作の最初の歌。健康であればある程、健診の結果に驚く。
よくあること、と言い聞かせても拭えない不安。
連作は再検査から癌治療へと続く。どこか他人事のように見えて、
でも病人だからこそ見える歌にはっとする。何度も読んで、
良くなるといいなと願う。50首全部読みたい。

2021/08/20

おのづからとけてながるるうすら氷のこころごころの水のありかた/小池純代

 おのづからとけてながるるうすら氷のこころごころの水のありかた/小池純代

短歌研究2021年8月号より

頭が悪くてこの歌の意味を読み解くことはできないけれど、
言葉の一つ一つが美しくて心惹かれた。雪解けの春の川。
薄く張った氷。おのづからとけて、という表現。
それぞれの氷、内にある水。人の心の無意識みたいなもの。
にじみ出て、流れた時にどう振る舞うのか。


2021/08/19

あかときのバファリンルナのルナは月やがて身体も透けるでしょうか/大森静佳

 あかときのバファリンルナのルナは月やがて身体も透けるでしょうか/大森静佳

短歌研究2021年8月号より

辛い生理痛。明け方に薬を飲む。外はぼんやりと明るく、
 月は白く透けている。取れない痛み、だるさ。もういっそ、
無くなってしまえばいいのに、とも思う。
それを「透けるでしょうか」と柔かく表現しているのが好き。


2021/08/02

鍵束を膝に鳴らしてどこへでもゆけるわたくしどこにもゆかず/葛原妙子

 鍵束を膝に鳴らしてどこへでもゆけるわたくしどこにもゆかず/葛原妙子

『をがたま』より

人生の扉はたくさんあって、その鍵も持ってる。
どこにもゆけず、じゃなくて、どこにもゆかず。
自分の意思でここにいるということか、それとも踏み出せない自分への苛立ちか。
どちらにも取れて、どちらにもドラマがあるな。
鍵束を鳴らすという表現がかっこいい。

2021/08/01

3個入りプリンを一人で食べきった強い気持ちが叶えた夢だ/工藤吉生

 3個入りプリンを一人で食べきった強い気持ちが叶えた夢だ/工藤吉生

『世界でいちばんすばらしい俺』より

いい大人なので、こんなささやかな夢はいつでも叶えられるんだけど、
謎のプライドが邪魔をするよね。
決意してから買ってきて食べ終えるまでを想像して楽しい。
やりきった感がいいなぁ。強い気持ちっていうところに少し後ろめたさも見えて好き。