2025/06/30

見てあれは白と白との縞模様ウェディングドレスの純白の滝/大森静佳

 見てあれは白と白との縞模様ウェディングドレスの純白の滝/大森静佳

角川短歌2025年1月号より

たっぷりのシルクサテンのギャザーが織り成す模様。
あれ?違うわ。
白い水しぶきを上げて落ちる滝がウェディングドレスに見えたんだ。
本当に私は助詞が読めてないな。書きながら気付いて、
急に滝が鮮明になった。
こうやって見落としてる歌がたくさんあるんだろうな。

2025/06/29

風ないス ナイスな風を受けながら見たことのない海をおもひぬ/吉田隼人

 風ないス ナイスな風を受けながら見たことのない海をおもひぬ/吉田隼人

角川短歌2025年1月号より

風無いですよ、のないスからナイスな風が吹くのがいいな。
風ないス、は誰が言ったんだろう。
軽い感じから海へ思考が向かってるのが妙にリアル。
突然脈絡のないことが浮かんだりする時あるよね。
見たことのない海から潮風が吹いてくる。
でもそんな風はないス、なんだよね。


2025/06/28

君が夢に出てきたことのおはじきにしたたる冬の朝の光は/千種創一

 君が夢に出てきたことのおはじきにしたたる冬の朝の光は/千種創一

角川短歌2025年1月号より

全てがはかない幻のようで、朝の光が現実を連れてくる。
でも夢の続きでもあるのかなぁ。ただただ美しくて、
どう言えばいいんだろう。冬の朝の光は、細く弱々しいようで、
冷たく鋭くもある。射し込む、とかじゃなく、
したたる、の透明感に惹かれる。音のない歌。好き。

2025/06/27

人間はよくしゃべる生き物だなと思うわたしも人間のはずなのに/谷川電話

 人間はよくしゃべる生き物だなと思うわたしも人間のはずなのに/谷川電話

角川短歌2025年1月号より

こういう孤独の感じ方もあるんだな。疎外感とはまた違う感じ。
聞くともなしに聞こえてくる人々の会話。
そこにいるはずの自分だけど、何もしゃべらないでいる。
自分の存在を疑ってしまう。ふと落ちてしまう孤独のポケット。
余計なことを言ってしまったのかもしれない。

2025/06/26

この家が古墳になってゆくまでを迎えに行こう死なせた蝌蚪も/小島なお

 この家が古墳になってゆくまでを迎えに行こう死なせた蝌蚪も/小島なお

角川短歌2025年1月号より

連作としての完成度が凄すぎて、
この一首を抜き取って感想を書いても大丈夫?と不安になる。
古墳は比喩かもしれないけど、迎えに行こう、の時間の捉え方に衝撃を受ける。
蝌蚪はおたまじゃくし。そして中国の古体篆字を指すそう。
死なせた、に浮かび上がる自身のこと。

2025/06/25

記憶には残りてをらずハイライトばかり吸ひける母方の祖父/門脇篤史

記憶には残りてをらずハイライトばかり吸ひける母方の祖父/門脇篤史

角川短歌歌1月号より

人づての話、なんだろうけど、それも写真で気付く、
みたいな感じかなぁ。あれ?違うか。自分の記憶にはない祖父。
祖父が遺したものからと、祖父を知る人から聞く人物像の違い?
煙草の煙が過去を連れてくるのがいいな。
ハイライトがいいよね。若葉だとこの雰囲気じゃない。

2025/06/24

一日の終わりの味のみそらーめんの湯気に夜明けが包まれている/佐佐木定綱

 一日の終わりの味のみそらーめんの湯気に夜明けが包まれている/佐佐木定綱

角川短歌2025年1月号より

たたみかけてくる「の」の勢いで、夜明けがとても眩しく見える。
一日の終わりから夜明けまでの時間。それは明日への活力なのかなぁ。
でもひらがなのみそらーめんは呑んだあとの〆のような気もする。
そうなると、夜明け近い深夜?少しの後悔も包まれている?
面白いなぁ。


2025/06/23

牛丼をしずかに食べたカウンター命拾いをした早朝に/平岡直子

 牛丼をしずかに食べたカウンター命拾いをした早朝に/平岡直子


角川短歌2025年1月号より

何だか心が冷える連作だ。いや、そういう歌ではないのだけれども。
疎外感?拒絶?そう受け取ってしまうのは何故だろう。
何が私の心を刺すのだろう。
短歌を読んで自分の心が分からなくなるだなんて。
いつかこの気持ちを言葉にできるだろうか。
静かで淋しくて怖いのだ。

2025/06/22

好きだった趣味をだんだん遠ざかるおそらくは死もそのように来る/伊波真人

 好きだった趣味をだんだん遠ざかるおそらくは死もそのように来る/伊波真人

角川短歌2025年1月号より

趣味「が」じゃないの?と思ったが、をとすることで
自分から手離してる感じがする。でも「遠ざける」わけでもない。
絶妙だなぁ。薄まる情熱。下の句は、そうであってほしいという
願望のように受け取った。嫌になったわけじゃなく、
気持ちがないわけじゃなく。


2025/06/21

展覧会果てたる地下に図録(カタログ)の欄外をゆく万年筆は/工藤貴響

 展覧会果てたる地下に図録(カタログ)の欄外をゆく万年筆は/工藤貴響


角川短歌2025年1月号より

「展覧会果てたる地下」とは、出口から出た先かなと思ったけれど、
もう今はない会場と、その図録かな。万年筆はそのスポンサー広告。
でも万年筆は売り場が見えて、 大型文具店の小さな展覧会かなと
思ったりもした。言いさしで終わるのもいいな。万年筆が手元に浮かぶ。

2025/06/20

目が覚めて自然と動き出す思考 数分間は朝日のなかで/相田奈緒

 目が覚めて自然と動き出す思考 数分間は朝日のなかで/相田奈緒


角川短歌2025年1月号より

忙しい人なのかな。そう思ってしまうのは、
私が朝起きられない人だからかな。数分間は、カーテンを開けて
朝日を浴びてる状態?そう考えると、その思考は
朝のルーティンなんだろうか。これから始まる一日に思いを巡らす。
この数分間は、この人にとって大切なものなのだ。

2025/06/19

薄闇の腕塚堂に近づけばニセの蠟燭ばうと灯れり/楠誓英

 薄闇の腕塚堂に近づけばニセの蠟燭ばうと灯れり/楠誓英

角川短歌2025年1月号より

センサー式なのかな。遠くから鬼火のように見えるのも怖いけど、
急に灯るのも心臓に悪いね。薄闇の腕塚堂って不気味と思ったら、
意外と住宅地だった。でも住宅地にあるからこそのニセの蠟燭が
際立つのかな。急に灯るニセの火が、過去を強く思わせる。


2025/06/18

手鏡のような言葉を選びおり縦に並んで待っているとき/竹中優子

 手鏡のような言葉を選びおり縦に並んで待っているとき/竹中優子

角川短歌2025年1月号より

いつもこういう言葉にはっとする。
見たいものを見て見落として、突きつけられて目を逸らす。
気分によって選ぶ本。「縦に並んで」が縦書きを思わせて、
手に持った本が手鏡となって心を写し出してゆく。
待ち時間で読む本を鏡の大きさで選んでる感じも好き。


2025/06/17

予定を入れる予定があって空けておく だれかが中にいる金曜日/永井祐

 予定を入れる予定があって空けておく だれかが中にいる金曜日/永井祐

角川短歌2025年1月号より

これは予定は未定?明確か予定はなくとも、
この日は何かしたいな、みたいな時もあるよね。
一字空けての下の旬がぽっかり空いている日を思わせる。
「だれかが中にいる」は会いたい人がいるのかな。
親しい人じゃなくて気になってるお店や映画とかね。
金曜日なのがいいね。


2025/06/16

辰の父蛇の母より生まれ出で毛深い子どもたち駆け回る/石川美南

 辰の父蛇の母より生まれ出で毛深い子どもたち駆け回る/石川美南

角川短歌2025年1月号より

何だかニコニコしちゃうね。まっ先に羊と猿が浮かんだけど、
他の動物もわりと毛深いよね。毛深い子どもたちというのが
コロコロしてる感じでかわいらしい。干支で何かが
変わるわけではないけど、こういう発想がなかったのでおもしろい。