2023/11/30

葉脈のやうだ 斜めにいくすぢも小径のあれどみな行き止まり/花山多佳子

 葉脈のやうだ 斜めにいくすぢも小径のあれどみな行き止まり/花山多佳子

短歌研究2023年5+6月号より

葉脈ならば、どこを行っても何かの役に立ってるんじゃないか、
間違いなんてないんじゃないか。行き止まりが
悪いものでもないように思えてくる。そういう事ではないのかな。
どの道も、何かを残すけど、満足することなんてないのかもしれない。
離れれば、形があるのに。




2023/11/29

植物の誕生日はいつなんだろう あたしだったら咲く日にするな/初谷むい

 植物の誕生日はいつなんだろう あたしだったら咲く日にするな/初谷むい

短歌研究2023年5+6月号より

かわいらしく、瑞々しい連作。どう言えばいいのかな。
愛?優しさ、芯の強さ。悩みながら迷いながら、でもしなやかに
歩き続けてる。自分と他者が同じ目線にあって、 私もこんな風に
景色を見れたら良かったな。自分の弱さを力に変えてゆく。
私にはない力強さ。羨ましいな。


2023/11/28

四十五年前は本当に昏かった選んだ道を霙が降って/畑谷隆子

 四十五年前は本当に昏かった選んだ道を霙が降って/畑谷隆子

短歌研究2023年5+6月号より

何があったかわからないけれど、何かがあったことが
こんな風にわかるのはひどく苦しい。雪にも雨にもならず、
じわじわ体の熱を奪ってゆく霙。違う道を選んでいれば
晴れていただろうか。きっとそんな事はなくて。
まだ先が見えない道を歩いてるのかな。強さが素敵だな。


2023/11/27

邪魔ならば蹴とばしなさいそのペグはオーロラを繋ぎとめているだけ/橋爪志保

 邪魔ならば蹴とばしなさいそのペグはオーロラを繋ぎとめているだけ/橋爪志保

短歌研究2023年5+6月号より

全然言葉が出てこない。凄い。重要そうに見えるけどそうでもない。
ペグもオーロラも。オーロラはそうそう見れるものではないけれど、
繋ぎとめておくほど必要か。 いつかまた、違う形で戻ってくるもの
手に入れるもの。蹴とばす勇気を持つこと。良い歌をありがとう。



2023/11/26

降伏はあり得ぬと語る大統領ゼレンスキー氏の眼鋭し/箱崎禮子

 降伏はあり得ぬと語る大統領ゼレンスキー氏の眼鋭し/箱崎禮子

短歌研究2023年5+6月号より

人間て、こんな短期間で、こんなにも顔つきが変わってしまうのかと。
いつまで続くのか。外野にいる私は無責任な事しか言えない。
正義のために戦って、その正義にどこにあるのか。何が正しいのか。
彼の眼光の鋭さを、 私はきっと持たない。持つこともできない。
意志の強さ。





2023/11/25

菜の花がどうして土手から減ったのか蝶々が来なくて咲く気がないか/野田光介

 菜の花がどうして土手から減ったのか蝶々が来なくて咲く気がないか/野田光介

短歌研究2023年5+6月号より

卵が先か、みたいな…ちょっと違うか。発想が素敵。
咲く気がないと捉えるのが面白いし、まるで一緒に
蝶々を待ってるような気持ちにもなってくる。
土手は変わらずにあったとしても、変わっていった街並みや
風景を思うよね。菜の花と淋しさを共有してるような切なさ。


2023/11/24

年齢に関はりのなき挑戦のさま身辺に幾たびも見つ/野地安伯

 年齢に関はりのなき挑戦のさま身辺に幾たびも見つ/野地安伯

短歌研究2023年5+6月号より

いくつになっても挑戦できるんだよね。いい年して…とか、
若いのに…とか、周りの目に惑わされて、やらない、 しない理由を
作っていたように思う。もったいないよね。
若い時にやっておけばよかったなと思うことも、
これから挑戦していくよ。人の挑戦も力になるよね。




2023/11/23

諦めと期待を交互に聞きながら木の椅子はただ軋むばかりで/野口あや子

 諦めと期待を交互に聞きながら木の椅子はただ軋むばかりで/野口あや子

短歌研究2023年5+6月号より

他人の愚痴、じゃなくて自分の心の内、かなあ。生きていくって
こういうことかなって何となく思う。どうしようもなくて
「ただ軋むばかりで」。うーん、難しいな。
 軋むのは、声?言葉にならない心の叫びだろうか。
聞きながら、がどこか遠くて軋む音に飲み込まれそう。


2023/11/22

省みず挑まんとするわがせなに老いは黙して追いかけて来る/野澤正子

省みず挑まんとするわがせなに老いは黙して追いかけて来る/野澤正子

短歌研究2023年5+6月号より

連作の中にこの歌があるから引き込まれるんだろうな。
繰り返される惨事、ささやかな日常。過去を省みず
挑んでゆこうとする勇気。誰しもの背中に張りつくように
追いかけてくる老い。それでも進む。何も出来なくても、
何も残せなくても。季節は巡る。良いタイトルだな。




2023/11/21

運命のはじめを神が持つてゐてをはりの方をひとが引き裂く/西田政史

 運命のはじめを神が持つてゐてをはりの方をひとが引き裂く/西田政史

短歌研究2023年5+6月号より

心がギュッと痛くなるような連作。誰もが同じスタート地点に
居たとしても。結局運命を切り裂いてるのは自分なんだ。
引き裂いて、良い事だけが残ればいいのにね。 でもそれじゃあ
幸せにはなれない。最後の歌に苦しくなる。

戦争の終らせ方がわからないぼくたちは同じ月を観てゐる/西田政史



2023/11/20

ただいまと差し出した手を雨の夜のような鼻先つけて嗅ぎおり/錦見映理子

 ただいまと差し出した手を雨の夜のような鼻先つけて嗅ぎおり/錦見映理子

短歌研究2023年5+6月号より

最初読んだ時はサラッと読み流して、二回目であれ?となって、
三回目で、わー、わんこだ、わんちゃんだよね、 となった。
合ってるかな。指先に雨があたるような、しっとりした雰囲気が、
犬と気付けばとたんに明るくなる。
帰宅すると必ず匂い嗅いで確認するの、かわいいな。


2023/11/19

約束のあることだけが明確な夢でありしも仔細わからず/なみの亜子

 約束のあることだけが明確な夢でありしも仔細わからず/なみの亜子

短歌研究2023年5+6月号より

どこまでが夢で、どこからが現実なんだろう。
それとも夢そのものが約束なんだろうか。仔細わからず。
モヤモヤするけどそこにある。寝てる時に見た夢の中の話と
思ったけど、昔の約束なんじゃないかという気もしてくる。
叶えようと約束した夢。明確な夢って印象的だ。


2023/11/18

ああ僕には何もなかったんだって気が付いてから長い人生/中野霞

 ああ僕には何もなかったんだって気が付いてから長い人生/中野霞

短歌研究2023年5+6月号より

でもきっと、何かある人のほうが少なくて、
何もなかったなんてこともないんだと思うよ。長い人生だから、
何もない自分と折り合いをつけてやりすごしていくんだ。
何もなくても何かあるから。「誰も人生に意味なんてない」
昔観たお芝居の台詞を思い出すよ。





2023/11/17

眠たくてうぐひす餅を食べたるにうぐひすいろの見えるうたたね/中野昭子

 眠たくてうぐひす餅を食べたるにうぐひすいろの見えるうたたね/中野昭子

短歌研究2023年5+6月号より

食べながらうつらうつらしてる、で合ってる?うぐいす餅と、
実際の鳥のうぐいすの色の違い?差?がちょうどよく
うたたねと重なって、夢うつつな感じがいいね。うたたねの、
起きてるつもりで見る夢と現実のせめぎあい、みたいな。
うたたねって気持ちいいよね。


2023/11/16

信号が変はる瞬間踏み出せるこの足われのものか疑ふ/中根誠

 信号が変はる瞬間踏み出せるこの足われのものか疑ふ/中根誠

短歌研究2023年5+6月号より

どの歌も難しい。思考を辿るような、分からないのにはっとする。
どこか自分に問いかけられてるような気がするんだ。
自分のことだけど、あなたのことでもあるんだよ、 と。
他者に無関心ではいられない。下の句の一歩。
本当に自分の意思なのか、流されてはいないか。


2023/11/15

定型は丸か四角か その柵に蹄をのせて草を食みたり/永田紅

 定型は丸か四角か その柵に蹄をのせて草を食みたり/永田紅

短歌研究2023年5+6月号より

こういうのを読むと、私は短歌詠めないなと思う。
定型という確固たる軸があって、その軸がしっかりしてれば
柵は意外と柔軟だ。その柵の内側にいるのか外側にいるのか、
どちらの草を食べているのか。
柔軟だけど、易々と越えられるわけではない。悩ましいね。




2023/11/14

今年植ゑし銀否が大樹となるまではとりあへず死を先送りする/永田和宏

 今年植ゑし銀否が大樹となるまではとりあへず死を先送りする/永田和宏

短歌研究2023年5+6月号より

成長の早い木ではあるけれども。どれくらいで大樹とするのかな。
いつ来るか分からない死を「とりあえず先送りする」。
それは願いであるのかな。生きる希望、みたいな。そこまでは。
いや、それより先へ。遠いような近いような、自分の寿命を
見つめている。何かかっこいいな。




2023/11/13

わが家に長く留まりポインセチア猩々失せて森へ帰りぬ/中島やよひ

 わが家に長く留まりポインセチア猩々失せて森へ帰りぬ/中島やよひ

短歌研究2023年5+6月号より

猩々が分からなくて調べたら、いくつか意味があるんだね。
どれもピンとこなくてさらに調べると、猩々木でポインセチア
とのこと。猩々が分からなくても枯れてしまったのかなとは思うけど、
意味が分かると誰か人に例えてるのかなと深読みしてみたり。
深くて難しい。




2023/11/12

ありもしない星座を編んで人に説く 部屋は一度も開かなかった/中島裕介

 ありもしない星座を編んで人に説く 部屋は一度も開かなかった/中島裕介

短歌研究2023年5+6月号より

読んだ時は誰かのことを批判的に見てるのかなと思ったけど、
書写してたら自分自身のことかも?と思ったり。難しい歌だなぁ。
それっぽいことを言ってるけど間違ってるし、
それじゃあ人の心は開かないよってことかな。
何となく、自分が責められてるみたいで苦しくなる。


2023/11/11

銀掘りの平均寿命は三十歳五百羅漢におもかげ捜す/長澤ちづ

 銀掘りの平均寿命は三十歳五百羅漢におもかげ捜す/長澤ちづ

短歌研究2023年5+6月号より

ぼんやりとした知識しかなく、調べてたらどの歌を書写するか
ものすごく悩んだ。強制労働はなかったらしい。 それでも劣悪な環境。
独身もしくは夫婦のみが多かったという鉱夫たち。
供養のための羅漢像。一つとして同じ顔のものはないという。
結句にぐっと来る。


2023/11/10

子規堂を訪れるたびふつふつと灯油らんぷの刻が戻りぬ /中川佐和子

 子規堂を訪れるたびふつふつと灯油らんぷの刻が戻りぬ /中川佐和子

短歌研究2023年5+6月号より

旅の連作。詳しくなくて、一つ一つ調べながら読んだ。
この歌の「刻が戻りぬ」が好き。訪れるたび、だから、
何度も来てるんだろうけど、それでも戻る。いつ行っても古くて
新しい発見があるんだろうな。自分の原点みたいな場所なのかな。
戻る場所、という感じで素敵だ。


2023/11/09

何回もおなじ話をきいている 僕がうけとめられたら終わる/永井祐

 何回もおなじ話をきいている 僕がうけとめられたら終わる/永井祐

短歌研究2023年5+6月号より

うけとめられないから何度も聞かされている、というわけでも
なさそうで、難しい歌だなと。書きながら気付いたけど、
録音された講義とかかな。自分のことなのに、
意識が遠いところにあるようで不思議だったけど、
それなら分かる気がする。合ってるかは分からないけれども。



2023/11/08

カセットもCDもなき車にておろおろおろおろ探す灰皿/内藤明

 カセットもCDもなき車にておろおろおろおろ探す灰皿/内藤明

短歌研究2023年5+6月号より

今はそもそも灰皿のない車も多いらしいね。昔はあたりまえに
ついていたもの。そのつもりで煙草に火をつけたら、
灰皿がなかったのかな。おろおろおろおろに焦燥感が出てるなぁ。
自分の思い込みがこういう形で露呈するのって衝撃だ。
分かってるつもりで分かってなかった。


2023/11/07

なつかしき人らと出会ふこともなく故里の町そぞろに歩く/奈賀美和子

なつかしき人らと出会ふこともなく故里の町そぞろに歩く/奈賀美和子
短歌研究2023年5+6月号より

年の近い友人、もそうだけど、知人や顔見知り程度の人にも
出会わない。シャッターの閉まった商店街、子供のいない公園。
自分が年を取ったこと、過ぎた日々のことを思うよね。
そぞろに、がいいな。もう戻らない。故里に思うこと。
寂しさだけでもないよね。


2023/11/06

思い出し笑いができるおとうとを火の粉のよ振り払いたり/toron*

 思い出し笑いができるおとうとを火の粉のよ振り払いたり/toron*

短歌研究2023年5+6月号より

親とは違うきょうだいの距離感。疎ましくもあり羨ましくもある。
振り払っても煤が残るような心のざらつき。
きょうだいだからこその難しさだなぁ。不仲なわけではなく。
色々ネガティブに捉えてしまうのは、私の家族観が
歪んでいるからかも。家族って難しい。


2023/11/05

花びらの散るはひかりの散るごとし花喰い鳥のしきり飛び交ふ/外塚喬

 花びらの散るはひかりの散るごとし花喰い鳥のしきり飛び交ふ/外塚喬

短歌研究2023年5+6月号より

散る、が二回出てきて、花喰い鳥がひどく淋しい。
どうしてかな、とピンと来なくて、次の歌で「思ひ出の」と続き、
そういうことかと気付く。自分もいつか思い出になっていくのかな。
残るもの残されてゆくもの。花びらが散っても美しいままだといいな。




2023/11/04

わたしたちどこでも行けると不意を聞く言葉じわじわ嬉しくなりぬ/富田睦子

 わたしたちどこでも行けると不意を聞く言葉じわじわ嬉しくなりぬ/富田睦子

短歌研究2023年5+6月号より

不意を聞く。思いがけず聞いた言葉かなと思ったけど、
過去に誰かと交わした会話を急に思い出したのかも、
とじわじわというところで感じた。でも見知らぬ人の言葉かなあ。
素通りした言葉があとから追ってくることあるもんね。
こちらにも嬉しさが伝わってきて笑顔になる。


2023/11/03

てのひらに赤いダリアの球根をのせて朝日を浴びてゐた母/時田則雄

 てのひらに赤いダリアの球根をのせて朝日を浴びてゐた母/時田則雄

短歌研究2023年5+6月号より

時田さんの、農民の歌と言っていいのかな。大地に根を張って
土を耕し命を育む歌がとてもすきだ。いつだって朝日を浴びた
逆光のシルエットが浮かび上がる。この歌の母の顔の美しさ。
てのひらの球根に命が吹き込むような。うまく言葉が出てこないな。
土の匂いがしてくる。


2023/11/02

ジグザグの影が這いずる階段を地道にのぼる蟻りすずめも/土岐友浩

 ジグザグの影が這いずる階段を地道にのぼる蟻りすずめも/土岐友浩

短歌研究2023年5+6月号より

毎日好き勝手に感想を書いて、正直何も浮かばない日もあるけど、
今日はこの連作に出会えて改めて短歌の良さを感じたよ。
自由で軽やかでいつも寄りそうような。簡単に見えるものは難しい。
だから分かりそうで分からなくて、でも心に深く残るんだ。
出会えて良かった。




2023/11/01

ベーグルにはさむにくしみうらみ呪詛ブルーベリーの甘すぎこるジャム/戸田響子

 ベーグルにはさむにくしみうらみ呪詛ブルーベリーの甘すぎこるジャム/戸田響子

短歌研究2023年5+6月号より

怖いね。ブルーベリーがいいね。いちごやマーマレードだと、
ここまで深い怨念めいた雰囲気は出ない気がする。
甘すぎることもうらめしい。ジャムも自分も相手も。
全部まとめて食べてしまえば、少しは溜飲が下がるだろうか。
ブルーベリージャムの色が毒々しい。