2024/12/27

見た筈である、漆黒の鴉は海の方より戻り来たれば/高木佳子

 見た筈である、漆黒の鴉は海の方より戻り来たれば/高木佳子

『桜前線開架宣言』より

まだそんなに短歌を読んでなかった数年前、短歌誌に載っていた
彼女の歌を読んで、何かに急き立てられるように、 駆られるように
歌集を買った。でもきっと私は何も理解していない。
彼女の、そこに住む人々の、胸の内にあるもの。
私は無知で無力で打ちのめされる。




2024/12/26

鳥も獣も身を寄せあひて棲む胸に冬きはまれば立つ一木あり/藤井常世

 鳥も獣も身を寄せあひて棲む胸に冬きはまれば立つ一木あり/藤井常世

現代短歌文庫より

人の内面て難しいね。冬にだけ立つ木なんだろうか。
私は雪の積もった針葉樹が思い浮かんだよ。冬の厳しさが立つ
一木の強さ?何か違うな…。意志の強さみたいに感じたけれど、
冬の寒さにくじけそうになってる?うまく言語化できなくて
酷い文章だ…。身を寄せあう、も良い。 




2024/12/24

好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ/東直子

 好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ/東直子

現代の歌人140より

凄いね。「あなたのカヌー」とすることで、
あなたと一緒に乗って見ていた世界で、今はそのカヌーだけが
燃えている。みずうみの上で、いつかその火も消える。
好きだった、という過去形。みずうみは自分の内面かな。
燃えながら消えて、燃え残ったものが水面を揺らす。


2024/12/23

ものに名のあるとう不思議知りそめて朝ごと吾子が揺らす「かあてん」/俵万智

 ものに名のあるとう不思議知りそめて朝ごと吾子が揺らす「かあてん」/俵万智

現代の歌人140より

子育てのあれこれを思い出す優しい歌の数々。それと同時に、
私はここまでちゃんと子供を見てなかったなと暗い気持ちが
胸に降りてくる。その時はその時なりに頑張ってたと思いたい。
俵さんの子育ての歌を読みながら追体験をする。
うん。でも今だから読めるのかもしれない。


2024/12/21

この世へとめざめる朝の不思議あり軀ひねつてベルを静める/荻原裕幸

 この世へとめざめる朝の不思議あり軀ひねつてベルを静める/荻原裕幸


現代の歌人140より

寝てる間はどの世なんだろう?でも制御できないと考えると
別の世と言えるかも?ああ、そういう不思議さかな。
めざめる時の体の重さとか、不明瞭な意識とか。
まだこの世にない軀。ベルが違う世界の生き物として
自分の体をこの世へと連れてくる。めざめの空気だねえ。


2024/12/20

まあいいか生涯一度も骨折をしないであはや死ぬところだつた/永田和宏

 まあいいか生涯一度も骨折をしないであはや死ぬところだつた/永田和宏

短歌研究2024年5+6月号より

骨折したことを淡々と詠う連作。冷静で、どことなく
他人事っぽいのがじわじわ実感していくのがおもしろい。
これは最後の歌。まあいいかの明るさ。あはや、は深読みすると、
骨折で済んで良かった、でもあるのかな、とか。
悪い事も、何事も経験、と捉えてるのがいいな。


2024/12/19

夢の中では、光ることと喋ることはおなじこと。お会いしましょう/穂村弘

 夢の中では、光ることと喋ることはおなじこと。お会いしましょう/穂村弘

短歌タイムカプセルより

彼の短歌が分からないことに劣等感がある。
どう言えばいいんだろうな。別に分からないなら分からないでいいのに、
責められてるみたいな気持ちになっちゃう。夢の中なら、
彼に会ってお話しして、光らせたり出来るだろうか。
いつか灯火のように理解できるだろうか。


2024/12/18

足悪きわたしも時に歩きたく杖二本取れば夫が慌てる/前田彌生

 足悪きわたしも時に歩きたく杖二本取れば夫が慌てる/前田彌生


短歌研究2024年5+6月号より

かわいいね。こういう風に齢を取りたいし、こういう夫婦でありたい。
さらっと読んで深く考えてなかったけど杖二本は車椅子生活で
ほとんど使ってないんだろうか。 あ、違う、杖なしで
歩こうとしてるのか。頓珍漢なことを書いてしまった…。
夫が素敵だなぁ。

2024/12/17

いつぽんの桜の不安が桜へと伝染してゆくやがて爛漫/林和清

 いつぽんの桜の不安が桜へと伝染してゆくやがて爛漫/林和清

現代の歌人140より

桜って美しいし好きだけど、確かに何というか焦燥感とか
不安なんかも重なることもあって、どう言えばいいんだろう。
結句の爛漫で無かったことにされちゃうような、
伝染してゆくことの怖さというか。ぱっと明るくなるけど
不安がなくなったわけじゃないよね。うまく言えない…。



2024/12/16

羽毛なす雪ふはふはと降り来れど不惑のこころ重きまひるま/大塚寅彦

 羽毛なす雪ふはふはと降り来れど不惑のこころ重きまひるま/大塚寅彦

現代の歌人140より

そうだよねえ・・・。四十は不惑と言うけれど。雪の軽さと
こころの重さ。ふわふわの雪だって、降り積もれば踏み固まって
重いのだ。人生の折り返しで、まだまだこれからだけど、
ふわふわもしてられないし、掛かる責任の重さに戸惑うのだ。
未だに迷ってばかりだなぁ…。



2024/12/15

やはらかく畳のへりを踏んでゆく猫の足音あのとのなかに覚めたり/大辻隆弘

 やはらかく畳のへりを踏んでゆく猫の足音(あのと)のなかに覚めたり/大辻隆弘

現代の歌人140より

夏の日のうたた寝という感じがする。実際にはそんなに
静かじゃないのかもしれないけど。自分自身も畳の上にごろんと
横になって、だから尚更猫の足音が響いたのかなと。
やはらかく、からまどろんでいくような空気が
結句の覚めたり、で夢現みたいな読後感があって好き。


2024/12/14

点線に沿って切り取るかなしみのこの人もまた味方ではない/松村正直

 点線に沿って切り取るかなしみのこの人もまた味方ではない/松村正直

『桜前線開架宣言』より

何だか心がざらつく歌。かなしみはそんな簡単に
切り取れるものだろうか。この人も「また」。敵味方で考えるなら、
本当の味方なんているんだろうか。小さく裏切って裏切られて、
持ちつ持たれつなんじゃないのか。点線に沿って、が難しいな。
割り切ろうとしてる?


2024/12/13

こうやって春は終わっていくのだと子に告げる夜の風は凪ぎおり/小塩卓哉

 こうやって春は終わっていくのだと子に告げる夜の風は凪ぎおり/小塩卓哉

現代の歌人140より

季節のにおい、と言えばいいのか、終わっていくということは、
始まりの空気もただよわせている。風の優しさ、 というか。
肌で感じる季節の空気。そっか。まさに「こうやって」
告げられていたことに気付くんだな。見守るような風が頬をなでる。
素敵な歌だな。


2024/12/12

わが内の静かなる民たしめよ風の重さに耐える起重機/谷岡亜紀

 わが内の静かなる民起(た)たしめよ風の重さに耐える起重機/谷岡亜紀

現代の歌人140より

上の句がかっこいいなと思って書き写しながら、
漢字の重なりや韻律の良さに気付く。起重機に全て集約されてく感じ。
具現化したような、擬人化されたような起重機。
「た」の音の心地良さ。風の重さ。読めば読むほど上の句が
立ち上がってくる。力強いな。好き。


2024/12/11

かみくだくこと解釈はゆっくりと唾液まみれにされていくんだ/中澤系

 かみくだくこと解釈はゆっくりと唾液まみれにされていくんだ/中澤系

『桜前線開架宣言』より

ああ凄いね。私がこの歌の感想を書くこと自体が
「唾液まみれに」していく。自分の意図しないところへ。
かみくだくことでゆがんで、唾液まみれにされて
いいように飲み込んでいく。吐き出されたとしても、
もうそれは元の形を成してない。自分の事さえ曖昧になる。


2024/12/10

きこえますきこえますいま校庭にだれもいなくて遠い雷/加藤治郎

 きこえますきこえますいま校庭にだれもいなくて遠い雷/加藤治郎

現代の歌人140より

不思議な歌だなぁ。雷と話してるみたいだ。
だれもいないのにきこえるのか、だれもいないからきこえるのか。
遠い雷に見えてるのか。いま、というのもポイントかな。
いま、この瞬間、という感じがする。校庭なのもいいとね。
そこにいるはずの子供たち。静かな歌だね。


2024/12/09

青く奇妙な蝶がことばを話すので夢だと思ふけれど目覚めず/荻原裕幸

 青く奇妙な蝶がことばを話すので夢だと思ふけれど目覚めず/荻原裕幸

短歌研究2024年5+6月号より

夢だと思う、という確信の持てなさと、目覚めないことで
現実かも?と混乱してる感じが、夢の中の世界でおもしろいな。
夢と分かっていても目覚めず、夢の中の行動になってるんだよね。
どうせ夢だし、とならないのが不思議でおもしろい。
蝶のことばは理解できたのかな。




2024/12/08

イヤフォンが外れてゐると気づかずにしづかな朝を味はつてゐた/大松達知

 イヤフォンが外れてゐると気づかずにしづかな朝を味はつてゐた/大松達知


『桜前線開架宣言』より

何か作業をしながら、気づけば朝で、しんとした朝の空気に
身を置いている。いつの間に外れていたのか、
無意識に外してしまったのか、分からないくらい集中してたのかな。
眠れずに、ただぼんやり…もあるかな。イヤフォンで遮断した
内と外の世界が繋がっていく。


2024/12/07

神は滝であるといふしづけさははるかな日あまた苦しむ人を救へり/米川千嘉子

 神は滝であるといふしづけさははるかな日あまた苦しむ人を救へり/米川千嘉子

現代の歌人140より

すごい字余りなのにするっと違和感なく読めちゃう。
どう言えばいいんだろう。ひらがなの流れがどことなく滝を思わせて、
しづけさの深さとか、はるかな日の悠久さが神に繋がっていく。
心が洗われていくような気がしてくる。
しんとして、自分も救われてると感じる。




2024/12/06

おほ雪ののちの晴れ間は稼ぎ時あちこちダンプが除排雪する/大朝暁子

 おほ雪ののちの晴れ間は稼ぎ時あちこちダンプが除排雪する/大朝暁子

短歌研究2024年5+6月号より

そんなな季節になってきたねえ…。今は人手不足で大変そうですよ。
今もそんなに稼げるのかなぁ。昔は冬だけで一年分稼いでたと聞いた。
今はダンプも足りてないらしい。大変な仕事だよねぇ…。
大雪のあとのきれいな道は本当にありがたい。感謝です。


2024/12/05

「ぴんぴんころり体操」死ぬための体操なれど広まる町に/川野里子

 「ぴんぴんころり体操」死ぬための体操なれど広まる町に/川野里子

現代の歌人140より

そう言われると確かに…笑。結句がいいよねえ。
倒置法に見えるけど言い差しのような気もしてくる。
何か、言い差しの方が物語が始まりそう。町全体が明るいよね。
 元気で居られるのは良いことよね。でも実際ぴんぴんころりで
死んだら、まだ死ぬはずじゃなかったのにって思いそうだな。
体操と死の結びつきがいいな。

2024/12/04

みいのちのきはに想ほす色ふかみわがスカーフの紫を言います(追悼春日井建)/水原紫苑

みいのちのきはに想ほす色ふかみわがスカーフの紫を言います(追悼春日井建)/水原紫苑

現代の歌人140より

この歌について何か書くのはおこがましいけれど。
前に書写した春日井建の歌の返歌なのかなと思った。
お名前に入ってる紫。師への想い。私の言葉じゃ何を書いても
軽々しいな…。ただ一人に届ける歌は、ただ一人だけ
分かればいいのかもしれない。心を揺さぶられる歌だ。




2024/12/03

信号の渡れの音が響きたる朝わが身の心の音か/佐藤モニカ

 信号の渡れの音が響きたる朝わが身の心の音か/佐藤モニカ

短歌研究2024年5+6月号より

これはその日の気分によって音の聞こえ方が違ってきそうだね。
鼓舞するような気持ちの時もあれば、急かされてるような、
責められてるような気になることもありそう。でもどっちにしても
しっかりしろと言ってるかな。変わらない音だからこそ、
心の音になりうる気がする。


2024/12/02

めざめれば又もや大滝和子にてハーブの鉢に水ふかくやる/大滝和子

 めざめれば又もや大滝和子にてハーブの鉢に水ふかくやる/大滝和子

現代の歌人140より

そりゃそうだ、なんだけれども。何というか、めざめた瞬間から
昨日の決意はどこへ、みたいな日があるよね。 やっぱりお前は
そういう奴だよ、という自分自身へのがっかり感かなぁと思った。
別人になりたいと思いながらもいつもと変わらぬ日常が始まる。
この歌好きだなぁ。


2024/12/01

おのづからきのふは過去へと流されてひとりとり残さるる原つぱ/山本和可子

 おのづからきのふは過去へと流されてひとりとり残さるる原つぱ/山本和可子

短歌研究2024年5+6月号より

昨日の歌から続いてるような一首。とり残さるる、の焦燥感…
うー違うな…。昨日の自分と今日の自分。前に進めない、
でもないよね。おのづから、にある今の自分と、
やがて過去になる自分、かな。過去になってしまった人たちでも
あるのかな。原っぱの風景がいいな。