2023/06/30

ゆるやかに雨はくづしにやつてくるゆふまぐれからひらく微笑み/尾崎まゆみ

 ゆるやかに雨はくづしにやつてくるゆふまぐれからひらく微笑み/尾崎まゆみ

短歌研究2023年5+6月号より

朝から良くないことが続いてたのかな。雨の音で気持ちが落ちつくような。
夕方からの雨と思ったけど、しとしとと、ずっと降り続けてたのかも。
そんな意味はないんだけど、夕まぐれ、って気まぐれを思って、
何となくこの歌ではそれもいいなと。この歌に失礼かな。

2023/06/29

くさり編みを六目ほどいて編みなほし気張らず老いよと息子にいはれる/小黒世茂

 くさり編みを六目ほどいて編みなほし気張らず老いよと息子にいはれる/小黒世茂

短歌研究2023年5+6月月号

初句六音だけど、細編みや長編みだとこの歌の雰囲気は出ない。
鎖編み六目って、間違えたのか、自分の気持ち的な見た目の気に入らなさなのか、
そういうところが下の句と繋がっていて、カの抜き加減みたいなことが感じられる。
編み物っていいよね。気張らず老いよ。

2023/06/28

枯れ葉らに交じって羽毛(うもう)一枚が運ばれて行く水の面(おもて)を/奥村晃作

 枯れ葉らに交じって羽毛(うもう)一枚が運ばれて行く水の面(おもて)を/奥村晃作

短歌研究2023年5+6月号より

どうやって書いたらいいか分からないくらい綺麗で静か。
言葉がいらないってこういうことかな。
羽毛の美しさ、枯葉の質感。
水の面、がサラサラしていて、絹みたいだなって。水面の反射が羽毛を際立ててる。
枯れ葉に交じってるのがいいのかな。羽毛一枚だと何か違うかも。



2023/06/27

すがすがしいほどに馬鹿だな高々と浮かんで雲は富士山の上/奥田亡羊

 すがすがしいほどに馬鹿だな高々と浮かんで雲は富士山の上/奥田亡羊

短歌研究2023年5+6月号より

この連作は読書家だったり文学に明るかったら、もっと解像度が上がるんだろうな。
私はただの馬鹿で、すがすがしくないなぁと思ったり。
自分に対して言ってるのか他人に言ってるのか分からないけど、
カラッとしてるのがいいな。ぽっかり浮かぶ雲の何気無さ。






2023/06/26

眩しいものをつい遠ざけて生きてゐる桜の午後にあの人も咲く/荻原裕幸

 眩しいものをつい遠ざけて生きてゐる桜の午後にあの人も咲く/荻原裕幸

短歌研究2023年5+6月号より

ちょっとうまく言えないけど、言葉の一つ一つが綺麗だなと。
つい遠ざけて、という無意識さ。気付いていながら生きてゆくこと。
下の句は朝が苦手な人かなと思ったけど、眩しい憧れの人かな。
眩しすぎると近寄れなかったりするよね。あ、それが午後に咲く、なのかな。



2023/06/25

おだやかな見知らぬ他人のふところに入るようなりエレベーターは/沖ななも

 おだやかな見知らぬ他人のふところに入るようなりエレベーターは/沖ななも

短歌研究2023年5+6月号より

おだやかな見知らぬ他人、て不思議な言い回しだ。
そしてそれが比喩でエレベーターだと最後に分かる。
急に説得力が出てくる。エレベーターそのものの気もするし、
一緒に乗り合わせた人のことでもあるような気がしてくる。
謎の信頼感。包まれてる感じがする。

2023/06/24

破綻なく来(こ)し五十年そりやもう水漏れ等は言はずもがなの/奥村一征

 破綻なく来(こ)し五十年そりやもう水漏れ等は言はずもがなの/奥村一征

短歌研究2023年5+6月号より

結婚生活のなと思ったけど、自信がないなぁ…。
半世紀という短くない期間。水漏れというわかりやすい絞び。
でも破綻はしていない。そりゃもう、というのがいいよね。
どう言えばいいかな。小さな綻びを直しながら、
見過ごしながら生きてゆく。愛おしさがある。


2023/06/23

さよならといふ語むかしは愛らしくいまは悲しくきこえくるのみ/岩田正

 さよならといふ語むかしは愛らしくいまは悲しくきこえくるのみ/岩田正

現代の歌人140より

左様なら、元々は接続詞で言葉が続いてたと思うと、
確かになぁってこの歌の背景に思いを馳せる。
今は日常会話で言う場面てないよね。今生の別れみたいな重さがある。
あ、でも子供が学校で言うさようならは愛らしい。
そういうむかし?最後ののみが切ないなぁ。


2023/06/22

名乗ること胸を張ることほんものに追いつくように橋を渡って/岡本真帆

 名乗ること胸を張ることほんものに追いつくように橋を渡って/岡本真帆

短歌研究2023年5+6月号より

肩書かな。名乗ってはいるけれども自分の理想とは
ちょっとずれてる感じ。力強さや決意があって、
でも結句に向かって心細くなってくる。
橋を渡れるなら大丈夫だよね。 後ろを向いてない。
自分の求めるほんものが橋の向こうにあることを知っている。
顔を上げて歩き出す。


2023/06/21

チュチュを着たロシアの少女が駆けてゆく動画だよてのひらに吸いこむ/大森静佳

 チュチュを着たロシアの少女が駆けてゆく動画だよてのひらに吸いこむ/大森静佳

短歌研究2023年5+6月号より

どの歌も難しくて分からなくて、この歌の「動画だよ」が気になって、
書写したら何かに気付くかなと思ったけど、やっぱり難しいな。
ロシアの少女、が時事的なものかと思ったけど違う気がする。
結句はスマホで撮った?ダウンロード?
自分の記憶と違うところにある感じ。


2023/06/20

万の葉を零し終えたる大銀杏 今朝はツグミの囀りこぼす/岡田恭子

 万の葉を零し終えたる大銀杏 今朝はツグミの囀りこぼす/岡田恭子


短歌研究2023年5+6月号より

どの歌も素敵で選ぶのが難しかったので最初の歌を。
万の葉を、から始まるのもいいよねぇ…。植物から生き物に
意識が向いて、視覚と聴覚で季節を感じてる。他の歌も目の前に
景色が見えてきて、一緒に見てるような気持ちになる。
雨が良いのよ。秋の空気。


2023/06/19

漢字「死」を三十二連ねそのひとつを「☓」に消したる短歌をおもふ/大山敏夫

 漢字「死」を三十二連ねそのひとつを「☓」に消したる短歌をおもふ/大山敏夫

短歌研究2023年5+6月号より

こういう歌があるのかな。次の歌が短歌を作る友の歌で、
その友の歌なのかな。死に囚われてしまう心。狂気であり、
狂喜だったのかも。きっと、何をしても救えなくて後悔だけが
胸を覆う。何を思って「死」を書き連ねたんだろう。
消した☓は生きる勇気だったのかな。


2023/06/18

不凍港の生徒のことを聞いている夕刻すぎた睡気のなかに/大松達知

 不凍港の生徒のことを聞いている夕刻すぎた睡気のなかに/大松達知

(「不凍港」に圏点(﹅)あり)

短歌研究2023年5+6月号より

不凍港は不登校だよねって読むと下の句が話半分、
上の空みたいでちょっとかわいそうな気がしてくる。
不凍港そのままだとロシアの子供たちを思い浮かべたのは
深読みしすぎか。あまり頭に入ってこない感じだよね。
気怠さというか。夕刻という、ちょっと気の緩む時間。


2023/06/17

さんぐわつの廊下をゆけり彼方まで連なる窓のひかりを踏んで/大辻隆弘

 さんぐわつの廊下をゆけり彼方まで連なる窓のひかりを踏んで/大辻隆弘

短歌研究2023年5+6月号より

生徒だった時はその廊下のひかりに気付いてなんかなかったな。
大人になって、親になって、その光の眩しさに気付くよね。
これは先生目線かな。私の知らない廊下を歩いてる。
それぞれの立場で見えるものが違うというあたりまえに気付く。
戻らない時間。歩みゆく道。



2023/06/16

昆布って広がるんよね。だしっ、ってなんか人生っぽい/大前粟生

 昆布って広がるんよね。だしっ、ってなんか人生っぽい/大前粟生

短歌研究2023年5+6月号より

さらっと読んじゃったけど、すごい字足らず。
それを感じないのは音が跳ねてリズムが良いからかな。
出だしがいいよね。海で揺れる昆布を思い浮かべたらだし。
でも出汁じゃなくて○○だし、からの連想かな。人生っぽいという
曖昧さが昆布の広がりと繋がる不思議。