2024/06/30

五歳児のもうよろこばずされどわが詰まらぬときのペンギン歩き/中野昭子

 五歳児のもうよろこばずされどわが詰まらぬときのペンギン歩き/中野昭子

現代の歌人140より

楽しい記憶とリンクしてるんだよね。この五歳児も、
今は成人してるんだろうなと思ったけどどうだろう。
ちょっと切ない感じがする。あの頃は良かったとまでは
思わないけど、今の荒んだような行き詰まったような気持ち。
自分をはげますためのおまじないのようなものかも。

2024/06/29

ひざに寝る猫がどかない冬の夜の幸せ深かりし静かな時間/佐佐木幸綱

 ひざに寝る猫がどかない冬の夜の幸せ深かりし静かな時間/佐佐木幸綱

短歌研究2024年5+6月号より

うちの場合は犬だけどさ。本当に幸せで時間が溶ける。
なにもかも、どうでもよくなっちゃう。人をダメにする犬笑。
でも幸せすぎてときどき不安にもなる。背中をなでて、
何だか安心して、ただ一緒にぼんやりしてしまうんだ。
冬の温もりが幸せを増す。ありがとうね。



2024/06/28

樹よ おまへは同志だいづれこの俺も凍土に深く根を下ろすのだ/時田則雄

 樹よ おまへは同志だいづれこの俺も凍土に深く根を下ろすのだ/時田則雄

短歌研究2024年5+6月号より

やっぱり時田さんの歌、好きだな。
全てがわかるわけではないけど、ある一首が不意に心に突き刺さる。
まっすぐで誠実だ。大地の人だと思う。綿々と受け継がれてゆく。
私には無い力強さ。決意との信念とか・・・覚悟?
言葉が出てこないな。かっこいいよね。

2024/06/27

左利きの吉高由里子が右手にて仮名書きの書に挑みておりぬ/岩崎潤子

 左利きの吉高由里子が右手にて仮名書きの書に挑みておりぬ/岩崎潤子

短歌研究2024年5+6月号より

草書の練習をしてる時に感じたけど、
日本語なのに異国の見知らぬ文字に見えるんだよね。
そういう意味では利き手と逆でもやりやすいかも?
いや筆運びとか難しいけど。努力が凄い。
利き手でもあんなにさらさら書けない。
草書だと雰囲気でいけそうだけど、漢詩も書いてたね。

2024/06/26

あたらしい悲しみで古い悲しみを忘れるように癒されてゆく/橋爪志保

 あたらしい悲しみで古い悲しみを忘れるように癒されてゆく/橋爪志保

短歌研究2024年5+6月号より

ええ…これは切なくないか…。でもそういうものかもしれない。
ある意味日にち薬なんだろう。それでもやるせないね。
悲しみに大小があるみたいでさ。
忘れることは癒されることではないように思う。
不意に襲ってくる悲しみが過去を塗り替えて
日々を生きてゆくのかも。

2024/06/25

立ち直るために瓦礫を人は掘る 広島でも長崎でもニューヨークでも/三枝昂之

 立ち直るために瓦礫を人は掘る 広島でも長崎でもニューヨークでも/三枝昂之

現代の歌人140より

いつまでも無くならないよと、人間の愚かさを突き付けられてるみたいだ。
でも同時に立ち直るための強さがあることも私たちは知っている。
憎しみも悲しみも近いところにある。瓦礫にある誰かの心。
人々の営み。掘るという行為。手の平で受け止めて前を向いてゆく。


2024/06/24

現在を書け現在を 絶望を咽喉(のみど)の裂けるような叫びを/福島泰樹

 現在を書け現在を 絶望を咽喉(のみど)の裂けるような叫びを/福島泰樹


現代短歌の鑑賞101より

こういうのを読むと、私は色々な何かを諦めてるんだなと思う。
叫ぶこともなく、絶望から目をそらし、現在をただ何となく生きている。
誰かの叫びを絶望を、なかったことにしてはいないか。
過去に逃げることも、未来を夢見ることも、
現在があってこそだ。胸が苦しいな。

2024/06/23

よき長男よき委員長のこの生徒よく磨かれし嵌め殺し窓/伊藤一彦

 よき長男よき委員長のこの生徒よく磨かれし嵌め殺し窓/伊藤一彦

現代の歌人140より

もどかしさ、かなあ。きっちり磨かれて美しいけど、
けして開くことのない窓。開けられないし、開けてもらうこともできない。
そこから見える景色は同じだけど同じではない。
いつか、その窓を割りたくなるだろうか。
磨かなくてもかまうものかと思う日が来るだたろうか。




2024/06/22

うつつには許せざるものあるゆゑにぼろぼろとむく秋の唐黍(もろこし)/佐藤通雅

 うつつには許せざるものあるゆゑにぼろぼろとむく秋の唐黍(もろこし)/佐藤通雅

現代短歌の鑑賞101より

世の中ってこんなのばかりだなって思っちゃう。
もろこしなのがいいよね。一粒一粒に許せざるものが宿ってて、
 ぼろぼろとむいて開放されていく感じ。秋なのも、乾いた空気と
自分の心の置き場所?有りよう?が重なっていくようで、
雰囲気が良い。静かな怒り、かな。




2024/06/21

ふり向いて影たしかむる坂道にひと日のわれと俺とが出会ふ/前川佐重郎

 ふり向いて影たしかむる坂道にひと日のわれと俺とが出会ふ/前川佐重郎

現代の歌人140より

われと俺との距離。坂道は上り坂?下り坂?
何となく、下り坂の気がする。人生の折り返し。ここから先は、
自分が歩いてきた道をたしかめながら進むだろう。
影たしかむる、だから、背中を押してる感じがする。
常に前を向いて、時々ふり向く。ひと目のわれは正しかったか。



2024/06/20

馬跳びの馬だつたわたし 校庭はゆふぐれのうすい墨の香がして/黒木三千代

 馬跳びの馬だつたわたし 校庭はゆふぐれのうすい墨の香がして/黒木三千代


現代短歌の鑑賞101より

心がざわつく。学校という場所でありながら、
今もずっと続いているような見えない何かに縛られている。
今はそうじゃないのに。ああ、そうだった自分との決別かな。
今は遠い学校という社会。地続きでここまで来た。
下の句の色の薄さと香りがあの頃のわたしを思い出させる。




2024/06/19

詩を書いていた頃ことばは降ってきた今は土から掘り出す感じ/五十嵐順子

 詩を書いていた頃ことばは降ってきた今は土から掘り出す感じ/五十嵐順子

短歌研究2024年5+6月号より

こうやって毎日感想を書いてても、ちっともことばが出てこないし、
ひり出してるという感じ。文字を書く人って凄いな。
降ってくるのも掘り出すのも、自分の中からにじみ出てくるものだ。
当てはめる言葉、取捨選択する言葉。どちらも研ぎ澄まされて
明るくて暗い。


2024/06/18

さくらさくら つよくなりたいほんとうはつよくなくてもいいとしりたい/塚田千束

 さくらさくら つよくなりたいほんとうはつよくなくてもいいとしりたい/塚田千束

『アスパラと潮騒』より

何かね。しんどいね。つよさって何なんだろうね。
それを知るつよさ、みたいな。禅問答みたいだ。自分の弱さを
知ることは、つよさではないのか。つよくなくてもいいと知るつよさ。
何のために戦うのか。どうしてつよくなりたいのか。
吹けば消えそうな心の灯。さくらさくらの寂しさ。
散るさくらを追いかける。孤独だな。




2024/06/17

バスの中はいつも夕暮れ誰もかも俯きながら目的地まで/川島結佳子

 バスの中はいつも夕暮れ誰もかも俯きながら目的地まで/川島結佳子

短歌研究2024年5+6月号より

凄い。言葉の魔力だ。そんなはずはないのに、もう
「バスの中はいつも夕暮れ」だと錯覚する。黄昏てゆく、
人もまばらな車内。それぞれの目的地が物語になって続いてゆく。
自分も物語の一人になって、非日常になっていくような感じがしてくる。
何か好きだな。


2024/06/16

鮮明に老いのうつつを映し出す鏡はどれも閻魔の鏡/高野公彦

鮮明に老いのうつつを映し出す鏡はどれも閻魔の鏡/高野公彦

短歌研究2024年5+6月号より

怖いね。ただでさえ年を取れば人生が顔に出るとか言うじゃない。
それが閻魔の鏡だなんて。うん、でもなんか身につまされるね。
はっとするよね。理想と現実…とはまた違うな。ふと見た
鏡に映る自分にがく然とする。鮮明に、突き付けられる自分自身の姿。
やっぱり怖いな。