2025/10/31

[今日の短歌/渡辺松男]白鳥はふっくらと陽にふくらみぬ ありがとういつも見えないあなた

 白鳥はふっくらと陽にふくらみぬ ありがとういつも見えないあなた/渡辺松男

現代の歌人140より

何でこんなに泣きたくなるんだろう。
最後の「あなた」が私のことじゃないとわかっていても、
私に向けられたような気持ちになるんだ。こうやって感謝しながら
日々を生きてゆく。上の句のは行が柔らかく胸に響く。
動物も自然も人も、私を支えているのだ。




2025/10/30

[今日の短歌/尾崎まゆみ]星空の模様両手で裏返し崩れるやうに脱ぎ捨てた今日

 星空の模様両手で裏返し崩れるやうに脱ぎ捨てた今日/尾崎まゆみ

現代の歌人140より

いい事も悪い事も、毎日こうやって脱ぎ捨てていくんだよね。
日々の忙しなさを思うよ。「星空の模様」で作り物のような毎日、
その次でそれに対する反抗心、「崩れるやうに」の徒労感。
何気ない一日の終りの一首だとしても、こんなにも心が
揺さぶられるんだな。凄いなぁ。




2025/10/29

[今日の短歌/中川佐和子]電線に積もれる雪が舌打ちのような音して路上に落ちぬ

 電線に積もれる雪が舌打ちのような音して路上に落ちぬ/中川佐和子

現代の歌人140より

けっしてそんな音ではないと思うのだが。
いや、そんな音だったかなと思い出してみる。細く積もった、
不安定な湿った雪。舌打ちは不安さの表れかな。そう考えると
「路上に落ちぬ」も不穏な空気をまとっている気がしてくる。
なぜ舌打ちのように聞こえたんだろう。自分の心を写す。




2025/10/28

[今日の短歌/栗木京子]路地をゆく猫はいつでも長旅の途中のごとし春の夜はなほ

 路地をゆく猫はいつでも長旅の途中のごとし春の夜はなほ/栗木京子

現代の歌人140より

猫にとっては大冒険かもしれないよね。そういうふうに見えるのは、
人間が勝手に、猫に何かを投影してるからかな。春という季節は、
節目のことが多くて「なほ」で終わるこの歌に深みが出て、
この先のことを色々考えてしまう。
猫の身軽さが羨ましいのかもしれない。




2025/10/27

[今日の短歌/内藤明]鳥の声聴きわけてゐるまひるまのなづきの淵にゆりゆられゆく

 鳥の声聴きわけてゐるまひるまのなづきの淵にゆりゆられゆく/内藤明

現代の歌人140より

「聴きわけてゐる」が良いなぁ。まどろんでいるとか、
うたた寝とはちょっと違う。何だろう。心ここにあらずというか。
現実逃避?聴きわけているところに糸を張りつめているような
気がしたんだ。うまく言葉が出てこない。 どこか遠く、
今は鳥の声だけを聴いていたい。




2025/10/26

[今日の短歌/松平盟子]多摩川に藍の方舟うかびおり茫漠のわれに乗れと囁く

 多摩川に藍の方舟うかびおり茫漠のわれに乗れと囁く/松平盟子

現代の歌人140より

何だか怖い歌だなと。きっと思い出?幻の風景。そのまま
あの世へ連れていかれそう。そして、それならそれでもいいやと
思う自分と、何とか踏みとどまる自分。囁くのは、亡くなった
親しい人。鑑賞を読むと父親かな。凄い喪失感だ。
だんだん三途の川に見えてくるのが怖い。




2025/10/25

[今日の短歌/柳宣宏]朝起きて楽しきものはひよどりがトタンの屋根に跳ねてゐる音

 朝起きて楽しきものはひよどりがトタンの屋根に跳ねてゐる音/柳宣宏

現代の歌人140より

最近、こういう楽しみを忘れてる。自分で「楽しきもの」 を
見つけていかないと、どんどんつまらなくなっていくなと
反省した。ひよどりの鳴き声じゃなく、跳ねている音なのも
素敵。音で感じる、想像する世界がとても明るい。
朝の楽しみを見つけなきゃ。




2025/10/24

[今日の短歌/今野寿美]笑ふなら忍びて笑へ水際なる螢のあつちこつちのやうに

 笑ふなら忍びて笑へ水際なる螢のあつちこつちのやうに/今野寿美

現代の歌人140より

嘲笑かなと思った私はひねくれてる?被害妄想が過ぎるかな。
でも自分への戒めや嘲笑でもあるのかな。いや、
それじゃあ誰か分からんように笑えってことになるか。
それは違う気がする。ほのかに光っては消え。
遠くから見れば美しく見える?忍びて笑へ、が悪い方に考えてしまう。




2025/10/23

[今日の短歌/武下奈々子]東京の死者が青葉を潜るころ梅、桃、桜いつせいに咲く

 東京の死者が青葉を潜るころ梅、桃、桜いつせいに咲く/武下奈々子

現代の歌人140より

昔、北海道は梅も桜もいっぺんに咲いて風情がない、と
言われたことがある。北海道での暮ししか知らない私にとって、
春は植物がいっせいに芽吹いて、命が溢れる季節だ。
そうやってこの歌を見ると、確かに不気味に見えるかもしれない。
でも鎮魂でもあるんじゃないのかな。




2025/10/22

[今日の短歌/影山一男]西洋種の花溢れゐる花の店彼岸の入りは仏花にぎはふ

 西洋種の花溢れゐる花の店彼岸の入りは仏花にぎはふ/影山一男


現代の歌人140より

最近は洋風仏花とかあるもんね。書いてみるとなかなかの
インパクトだな。この歌は、初句に「種」があることで、
どんどん花が増えていく感じがいいな。結句でいつもとは違う
雰囲気があって、でもそこで彼岸と気付いたり、
花を買おうかという気分になったりがありそう。




2025/10/21

[今日の短歌/渡英子]うすべにの傘をひらきてかざしたりさんぐわつの雪と髪のあはひに

 うすべにの傘をひらきてかざしたりさんぐわつの雪と髪のあはひに/渡英子

現代の歌人140より

自然と和装姿の女性が傘をさしているのが見えてきて美しいな。
「さんぐわつの雪」がいいよねぇ。みぞれまじりの雨とも
言えそうな。いや、冬の終わりのぼた雪かな。
世間的には三月の雪は季節外れなんだろうか…。
冬の終わりの歌で素敵と思ったけど、間違えてるかも…。




2025/10/20

[今日の短歌/藤原龍一郎]吠える犬それは私だ 廃園が廃園と呼ばれる前の私だ

 吠える犬それは私だ 廃園が廃園と呼ばれる前の私だ/藤原龍一郎

現代の歌人140より

ビシッと言い切ってるのがカッコいいなと感じるのは、
私自身に芯がなくて自信がないからだろうな。でも吠える犬は
臆病さかな。下の句がつかみきれない。廃園て夢の跡みたいな
感じがする。過去と現在?そう考えると、美しかった過去に、
今吠える私?失ったものへの後悔?





2025/10/19

[今日の短歌/今井恵子]おしゃべりに厭きて海へとひらく窓たった一人の人が必要

 おしゃべりに厭きて海へとひらく窓たった一人の人が必要/今井恵子

現代の歌人140より

このたった一人は、あなたであり、私なんだよなと思いながら書いて、
ああ、もうこの世にいない人のことかもと気付く。
ここにいてほしかった人。でもやっぱり自分自身でもあるのかな。
一人の時間。海へとひらく窓がとても開放的だ。
おしゃべりの声と波の音が重なる。




2025/10/18

[今日の短歌/永井陽子]錠剤の切れゆくままにわたくしの夢も解かれてさむき朝なる

 錠剤の切れゆくままにわたくしの夢も解かれてさむき朝なる/永井陽子

現代の歌人140より

最初読んだ時は、薬の効果が切れる、だと思ったけど、
薬を飲み切った、手元にない状態かな。夢って現実を見たときに
色々考えすぎてぽろぽろこぼれ落ちていってしまう。
でも夢があるから頑張れた。どんどんすり減ってゆく心。
解かれて、が悲しすぎる。朝が冷たい。




2025/10/17

[今日の短歌/𠮷岡生夫]ハードルとなりゐし父の享年を兄越えわれはつまづきて越ゆ

 ハードルとなりゐし父の享年を兄越えわれはつまづきて越ゆ/𠮷岡生夫

現代の歌人140より

下の句から、大病があったのかと思い、生年と歌集の出版年を見ると
案外若い。父が早くに亡くなってるんだなと。
あまり早く親を亡くすと、自分はその数を越えられないのではと
思ってしまうと聞いたことがあるので、この歌も
そんな感じだったのかな。少し切ないね。




2025/10/16

[今日の短歌/山田富士郎]笑顔をくれざとうくぢらの吹く潮につかのまやどる虹みたいなのを

 笑顔をくれざとうくぢらの吹く潮につかのまやどる虹みたいなのを/山田富士郎

現代の歌人140より

渇望のような初句。最後まで読んで、それでいいの?と
複雑な気持ちになる。その一瞬が美しいものだとしても。
近寄れないような気がする。まるで幻みたいな虹。
でもつかのまだから心に残るのかな。生きるよすがみたいな。
広い海と大きな体。息つぎをしてほしい?混乱してきた…。




2025/10/15

[今日の短歌/島田修三]道の上に人生あればののしりあひ道の下より老夫婦出で来

 道の上に人生あればののしりあひ道の下より老夫婦出で来/島田修三

現代の歌人140より

読んでうわーとなったのに、それを言語化できない悔しさ情けなさ。
老夫婦は人生の象徴かなぁと。ののしりあうって嫌な感じだけど、
何の諍いもなく生きてはいけないもんね。老夫婦は未来の自分?
どう見えるんだろう。どう映るんだろう。道の上と道の下。
見えるもの、見えないものかな。




2025/10/14

[今日の短歌/田宮朋子]夜の部屋を秋の蚊ひとつ降下せり宇宙船にも似たるしづけさ

 夜の部屋を秋の蚊ひとつ降下せり宇宙船にも似たるしづけさ/田宮朋子

現代の歌人140より

本当に蚊が宇宙船に見えてくる不思議。秋のしづけさが
詩的な想像力を膨らませるのかも。そんなことを思いつつ、
このあとやっつけたのかな?とすぐに考えてしまった私は
風情がない。こういう一瞬が歌になって、追体験できるのが
短歌の凄いところだなぁと思う。





2025/10/13

[今日の短歌/阿木津英]あをぞらに張る高枝につばさ来てしろき珠実をついばむらしも

あをぞらに張る高枝につばさ来てしろき珠実をついばむらしも/阿木津英

現代の歌人140より

何だろう。全てが幻みたいな。実景ではないような気がする。
何かの願かけかなぁ。見えそうで見えない、いや、 何もないのかも。
あをぞらだけが広がっている。翅は昆虫か。
考えすぎて混乱してきた…。最後も「らしい」 でいいのかな。
案外何かを否定してる?違うか。





2025/10/12

[今日の短歌/桑原正紀]死ぬことは〈こと〉切るること死者達の遂に成らざる声想ふべし

 死ぬことは〈こと〉切るること死者達の遂に成らざる声想ふべし/桑原正紀

現代の歌人140より

ああ、そうか。事切れるは確かに言が切れることだなと。
何も思い残すことなくこの世を去るなんてないのだろうね。
「思ふ」じゃなく「想ふ」。どれだけの成らざる声があるだろう。
どれだけ想いを馳せられるだろう。「遂に」が重くのしかかる。
もっと考えてから書けば良かった。




2025/10/11

[今日の短歌/三井修]工房に青き硝子は吹かれいて冬海ひしと締まりてゆけり

 工房に青き硝子は吹かれいて冬海ひしと締まりてゆけり/三井修

現代の歌人140より

小樽のガラス工房を思い浮かべるなど。ガラスの浮玉、
吹きガラスの色と海の色。青き硝子は冬海の色と重なり
吹く風までもが青く色付いていくよう。下の句が素敵だなあ。
硝子の冷たさと冬海の冷たさ、厳しい冬の寒さが景色をも
引き締める。吹かれいて、が景色を変える。




2025/10/10

[今日の短歌/大下一真]照らされて夜の桜が抱く闇 闇無きものは美しからず

 照らされて夜の桜が抱く闇 闇無きものは美しからず/大下一真

現代の歌人140より

光と闇は対ではあるけれども。桜は夜桜の、美しいけど怖い、
みたいなイメージがあるね。どう言えばいいかな。
桜はその抱く闇を隠していないというか。だからこそ美しいのかな。
でも下の句は自分が気付いてないだけじゃないのかな。
闇無きものってあるんだろうか。




2025/10/09

[今日の短歌/池田はるみ]「 ホルモンの限界」といひ引退すそんな女があつてもいいか

 「 ホルモンの限界」といひ引退すそんな女があつてもいいか/池田はるみ

現代の歌人140より

何と言うか…タイムリー笑。
婦人科で女性ホルモンが出てないと言われ、
でも閉経するには早いそうで。
個人的にはもういいよって思うのだけど。
先生にホルモン大事と力説されたので、
まだ引退には早いのでしょう。もう少し頑張れば、
その先に新しい世界が広がるのかな。




2025/10/08

[今日の短歌/花山多佳子]良い天気と娘の言ふは風ふきて小雨のまじる曇日のこと

 良い天気と娘の言ふは風ふきて小雨のまじる曇日のこと/花山多佳子

現代の歌人140より

何となく、晴れのほうが気持ちが良いと思っちゃうけど、
この歌のような曇日は、しっとりとして落ちつぐのかもしれないね。
あたりまえに良い天気とは晴れの日と思った自分を反省した。
でもそういうことでもないよねえ…。この感じを
ちゃんと言語化できないのが悔しい。


2025/10/07

[今日の短歌/道浦母都子]顔上げて生きてゆかねば 夢にさえきいんと冷たき水仙の喉

 顔上げて生きてゆかねば 夢にさえきいんと冷たき水仙の喉/道浦母都子

現代の歌人140より

読み終えたとたん、水仙が頭をもたげた人(自分?)に見えてくる。
でも夢にさえってどういうこと?生きてゆかねば、と、冷たさが、
遠いところにあるように思える。こんな冷たい世の中で、
ということだろうか。きいんと、という刺すような擬音が
自分を苦しめてる感じがする




2025/10/06

[今日の短歌/小池光]千歳飴のふくろすなほに下げてゐる写真出てきてものおもひけり

 千歳飴のふくろすなほに下げてゐる写真出てきてものおもひけり/小池光

現代の歌人140より

子供の頃の自分かな、と読んだけど、自分の子供の写真にも思えるな。
読んだ時の状況?心情?で少し違って見えるのは面白いな。
写真で蘇る記憶というか。すなほに、 とあるだけで、
その前後をいろいろ想像する。ものおもひけり、に、
優しい思い出が詰まってる。


2025/10/05

[今日の短歌/佐伯裕子]おおかたは捨ててしまいし冬帽子夏帽子みな枯草に似る

 おおかたは捨ててしまいし冬帽子夏帽子みな枯草に似る/佐伯裕子

現代の歌人140より

私があまり帽子をかぶらないので、たくさん持ってるんだなぁと
思いながら書写して、もしかしたら自分のではないかも?と
気付く。実家の整理とか。枯草のせいかな。
あれ?捨ててしまいし、だから、思い出の中かな。
帽子も比喩だったりする?急に混乱してきた・・・。






2025/10/04

[今日の短歌/秋山佐和子]ざぶざぶと顔洗ひをりわがために泣く涙などもう溢るるな

 ざぶざぶと顔洗ひをりわがために泣く涙などもう溢るるな/秋山佐和子

現代の歌人140より

自分自身のことで泣くな、だと思ったけど、他者に対して、
私のことで泣いてくれるな、かなあ。その両方?顔を洗っているのは
涙を隠すだけじゃなく、これからの決意みたいなものも感じる。
ざぶざぶぶという擬音も感情の強さが表れてて、
溢るるな、に繋がるのが凄い。




2025/10/03

[今日の短歌/永田和宏]平然と振る舞うほかはあらざるをその平然をひとは悲しむ

 平然と振る舞うほかはあらざるをその平然をひとは悲しむ/永田和宏

現代の歌人140より

何かちょっと読み間違えたかも。気丈に振る舞えば振る舞うほど、
見てるほうはつらい。人には我慢することないのに、と思うけど、
自分がその立場になるとそうはいかない、となるんだよね。
客観的に見つめる視線が読んでるこちら側に
なお深く悲しみが伝わってくる。




2025/10/02

[今日の短歌/香川ヒサ]この街の今日のできごといくつもの水溜まりとなり空を映すも

 この街の今日のできごといくつもの水溜まりとなり空を映すも/香川ヒサ

現代の歌人140より

結句の言いさしにはっとする。小さくとも
水溜まりを残したと思っても、明日には消えてるかもしれない。
誰かに踏まれ、辺りを汚してるかもしれない。空を映す、
ただそれだけのことかもしれない。過ぎてゆく今日を映して
誰かが、私が気付くだろうか。そうやって過ぎる毎日。




2025/10/01

[今日の短歌/安田純生]くれなゐの服を好みて若きかと見えしをみなの手紙の旧字

 くれなゐの服を好みて若きかと見えしをみなの手紙の旧字/安田純生

現代の歌人140より

案外年を取ってからのほうが派手なものを好んだりするよね。
結句の驚きから見ると、会ったことはない人だよね。
意外なのは確かなんだろうけど、がっかりという感じではなく、
驚嘆したのかなと思った。手紙から想像する人物像が
少し変化していくのが面白い。