2024/10/31

とけかけの氷を右にまわしたりしずめたりまた夏が来ている/加藤治郎

 とけかけの氷を右にまわしたりしずめたりまた夏が来ている/加藤治郎

現代短歌の鑑賞101より

気怠い感じがいいねぇ。閉塞感。「来ている」という進行形。
自分だけが置いていかれるような。とけかけの氷が自分自身に
重なっていくような。氷の音が聞こえてきそうな静けさ。
もう何年もここにとどまってるような…うん。閉塞感。
でも夏の明るさ暑さがあって悲壮感はない。


2024/10/30

木のこゑと風のこゑとがまじりあふ秋の硝子を磨きてをれば/渡英子

 木のこゑと風のこゑとがまじりあふ秋の硝子を磨きてをれば/渡英子

現代の歌人140より

硝子一枚で季節が変わる。秋は音が多い。そうか。秋の声かもしれない。
落ち葉が揺れて、つむじ風が舞う。乾いた空気。木々の揺れる音、
頬をなでる風。凄いな。もう何も書き出せないや。秋の硝子は
もしかしたら何かの比喩かもしれないけど、
窓を拭く時はきっとこの歌を思い出すよ。


2024/10/29

〈女は大地〉かかる矜持のつまらなさ昼さくら湯はさやさやと澄み/米川千嘉子

 〈女は大地〉かかる矜持のつまらなさ昼さくら湯はさやさやと澄み/米川千嘉子

現代短歌の鑑賞101より

私自身はそういうものだと何も考えずに受け入れてきたけど、
この年になって色々間違ってたんじゃないかなと考えることも
増えた。間違ってたというか、無知だった。それでもきっと
この歌の「つまらなさ」を私は理解できてない。
「さ」の音が私に何かをたたみかけてくる。



2024/10/28

クセのあるペン字のハガキくれしゆえ高瀬一誌はインクの匂い/藤原龍一郎

 クセのあるペン字のハガキくれしゆえ高瀬一誌はインクの匂い/藤原龍一郎

現代の歌人140より

その人にしか分からない、人の印象ってあるよね。
うまく説明できないな…。誰もが分かってくれる印象じゃなくて、
自分に対して接した時の残り香のような。匂いという表現が
凄く好きだな。誰かのことをこんな風に思い出せるって素敵。
会った時に空気をまとう。


2024/10/27

おもむろにまぼろしをはらふ融雪の蔵王よさみしき五月の王よ/川野里子

 おもむろにまぼろしをはらふ融雪の蔵王よさみしき五月の王よ/川野里子

現代短歌の鑑賞101より

まぼろしと融雪の近さよ。蔵王といえば樹氷で、
でも五月となれば雪景色は遠くまぼろしめく。雪融けとともに
訪れる春の「さみしき五月」。蔵王の「王」がその山々を
思わせて素敵だ。おもむろに、がいいよねぇ…。
また季節は巡る。季節の変わり目のさみしさと期待。


2024/10/26

感情の起伏のひとつに静かなる谷ありて子を持てば明るむ/今井恵子

 感情の起伏のひとつに静かなる谷ありて子を持てば明るむ/今井恵子

現代の歌人140より

「子を持てば明るむ」とはどういうことだろう。
急に深く暗くなって心がざらつく。子を持たなければ
知ることもなかった感情か。谷に差す光ということか。
また何かズしたとらえ方をしてる気がする…。感情の起伏だもの、
山あり谷あり、だよね。難しいな。引っかかる歌だ。


2024/10/25

白鳥はおのれが白き墓ならむ空ゆく群れに生者死者あり/水原紫苑

 白鳥はおのれが白き墓ならむ空ゆく群れに生者死者あり/水原紫苑

現代短歌の鑑賞101より

水原さんの歌は私には難解すぎる…。でもわからないままに
しておくのが何だか悔しいので、いつも頑張って読んでる。
いつも感じるのは、情景が白いな、ということ。何者にも
染まらない、というよりは、読み手の私がどう染めるのか
試されてる感じ?ええ…言葉選びが下手すぎる…。



2024/10/24

ささやかに生きたあかしの歌一首弥生の街に残さむとする/永井陽子

 ささやかに生きたあかしの歌一首弥生の街に残さむとする/永井陽子

現代の歌人140より

短歌を好きになって良かった。胸に残る歌があって良かった。
自分で詠めなくても、その時どきで誰かの歌が私の日常を彩る。
どうしよう。これ以上何も言葉が出てこないよ。この歌を、
その言葉以上で語ることなんてできないよ。
残された歌を胸に、ささやかに生きるよ。


2024/10/23

生きいそぐ一語はげしきラボの椅子喜連川きつれがは博士われを非難す/坂井修一

生きいそぐ一語はげしきラボの椅子喜連川きつれがは博士われを非難す/坂井修一

現代短歌の鑑賞101より

ラボとか博士という言葉に、自分とは違う世界のように感じてしまう。
研究者との科学者とか、自分が想像する上司や部下と違うんだろうな、
とか、生きいそぐ、に、 鬼気迫る感じがする、とか、何だか
ズレたことしか思い浮かばない。知らない世界を覗き見ている。


2024/10/22

永年勤続表彰受くる身となりぬ「以下同文」のごとき人生/𠮷岡生夫

 永年勤続表彰受くる身となりぬ「以下同文」のごとき人生/𠮷岡生夫

現代の歌人140より

こういう歌にふれるたびに「人生に意味なんてない」という
言葉を思い出す。意味なんてなくても、以下同文なんてことは
ないのにね。長く勤めてると、変わり映えのしない日常に
なっていくのかも。何というか…先が見えるというか…。
会社での立場も変わってくる。


2024/10/21

柿の朱は不思議なる色あをぞらに冷たく卓にあたたかく見ゆ/小島ゆかり

 柿の朱は不思議なる色あをぞらに冷たく卓にあたたかく見ゆ/小島ゆかり

現代短歌の鑑賞101より

そう言われると、そんな気がしてくる。柿の木になじみがなくて、
どうやって実がなるのかなとググッてみてなるほど。
葉が落ちても実がついてるので寒々しい感じがするね。
卓にあたたかく見えるのは、家庭があたたかいからかな。
木も実も身近にあるからこその気付き。


2024/10/20

スタンプを押されることをまぬかれた切手のやうに生きてゐた冬/山田富士郎

 スタンプを押されることをまぬかれた切手のやうに生きてゐた冬/山田富士郎

現代の歌人140より

今度の冬は、そういうわけにはいかないんだろうか。
押されなかったスタンプ。切手としての役割。押されないほうが
良かった?綺麗なままでいたかった?どこへも行きたくは
なかった?それとも後悔?まぬかれた、をどうとらえれば
いいんだろう。心に貼りつくような歌。


2024/10/19

かずかずのはるかさに生きるものたちよ 椰子の木 雨 そして飛行船/井辻朱美

 かずかずのはるかさに生きるものたちよ 椰子の木 雨 そして飛行船/井辻朱美

現代短歌の鑑賞101より

どの歌もわからないのにそれらの歌の世界観に惹きつけられる。
空想の世界は時に外へとリンクする。誰にも犯されない空想の世界を、
誰もが持っている。こんなに美しい世界が、どうして私には
見えないんだろう。結句に向けて視線が上がる。
同じ空を見れるといいな。


2024/10/18

月よみのひかりあまねき露地に来て給与明細を読むひと俺は/島田修三

 月よみのひかりあまねき露地に来て給与明細を読むひと俺は/島田修三

現代の歌人140より

上の句と下の句の差が凄すぎて鮮やか。神々しさがあるのに
給与明細かぁ…みたいな。密やかに、見るじゃなくて、読む、
なのがおみくじみたいに感じて面白い。月明かりに照らされて
こっそり見てる背中が思い浮かぶ。何となく哀愁漂う雰囲気と
月明かりと露地のコントラストが好き。


2024/10/17

天敵をもたぬ妻たち昼下りの茶房に語る舌かわくまで/栗木京子

 天敵をもたぬ妻たち昼下りの茶房に語る舌かわくまで/栗木京子

現代短歌の鑑賞101より

何となく、自分は違うぞと思いたいのか、自分より年上の奥様を
想像しちゃう。でも女三人寄れば姦しいと言うし年は関係ないよねえ。
天敵をもたぬってどうなんだろう。嫌味かなと思うけど。
話してる本人たちは楽しいんだろうけど、
あまり良くない話だろうなと思ってしまう。


2024/10/16

緋の色にきはまるまでのひとときをあかくくろずむ満天星どうだんの葉は/田宮朋子

緋の色にきはまるまでのひとときをあかくくろずむ満天星どうだんの葉は/田宮朋子

現代の歌人140より

どこまでも赤く染まっていく。秋の色だなって思う。
満天星ってどうしてこういう漢字になったんだろうね。
紅葉すると息をのむような美しさだ。赭は赤土のことらしい。
葉はまだ染まりきっていない。緋の色にきはまる、が鮮やかだなぁ。
何となく、夕焼けの色とも重なる。


2024/10/15

足長のものならグラスも馬も好き階段のぼる恋人はなお/松平盟子

 足長のものならグラスも馬も好き階段のぼる恋人はなお/松平盟子

現代短歌の鑑賞101より

恋の歌は苦手だけど、この歌は推しを見るような気持ち?
一段高いところではあるんだろうけど、グラスや馬と同じ場所に
恋人があるのが面白いよね。本当に足長の恋人なのか、
恋人だから足長に見えるのかも気になるところ。
馬のせいか、恋人が白馬に乗った王子様にも見えてくる。


2024/10/14

それは違うそれは違うとよじれゆくふくろのごときおのれに耐へつ/阿木津英

 それは違うそれは違うとよじれゆくふくろのごときおのれに耐へつ/阿木津英

現代の歌人140より

こっちの漢字だと内臓のイメージで、精神的な苦痛が
肉体へのダメージに繋がってとても辛い。「それは違う」 は
他者に対しても自分に対しても降りかかり、内に入れても
綺麗には収まらない。閉塞感。いらだち?おのれに耐えつ、
よじれは戻るんだろうか。

2024/10/13

負けたくはなしなけれども樹に登りこの世見おろしたることもなし/今野寿美

 負けたくはなしなけれども樹に登りこの世見おろしたることもなし/今野寿美

現代短歌の鑑賞101より

そういうものだよねえ…。自分との戦い、でも他者がいて、
その他者を蹴落としたいわけじゃない。何かを成し遂げるって
終わりがないのかもしれない。負けたくはないと思うほどの
何かがあるのは羨ましいな。私はすぐ諦めちゃう。
でも自分に負けないようにこの歌を心に置こう。


2024/10/12

秋の夜がこんなにひろくくらいこと思ひみざりき少年のころ/桑原正紀

 秋の夜がこんなにひろくくらいこと思ひみざりき少年のころ/桑原正紀

現代の歌人140より

何だか泣きたくなる歌だ。子供の頃って秋はどんな季節だったかな。
確かに秋の夜長を思うようになったのは大人になってからかも。
「漠く」は当て字かな。秋の空気と心情がぴたりと当てはまる。
こんなはずではなかったみたいな思いも入ってるんだろうか。
淋しい。


2024/10/11

夜の海を翼ひろげて急ぎたる鳥ありきとほきとほき夏に/武下奈々子

 夜の海を翼ひろげて急ぎたる鳥ありきとほきとほき夏に/武下奈々子

現代短歌の鑑賞101より

これは心象風景だねえ…。何も言えなくなっちゃうな。
夜の暗さと海の暗さ。なぜ急ぐのか、ひろげた翼が
影を作ってるような気もしてくる。もうたどり着かない夏。
過去のことであり、今は、今も?着地できずにいるのかな。
見えそうで見えなくて、明けそうで明けない夜を飛ぶ。


2024/10/10

今日ひと日いくつ扉をくぐりしか 木の、硝子の、あるいは心の/三井修

 今日ひと日いくつ扉をくぐりしか 木の、硝子の、あるいは心の/三井修

現代の歌人140より

結句で次々扉が見えてくるの、凄い。
いつもの日常のことを言ってる気もするし、いつもと違う
新しい何かがあった日のことかもとも思う。開けるだけじゃ
ダメなんだよね。いくつもくぐって、何が見えるのかな。
何を見るのかな。心の扉はあなたも私も、くぐるのが難しいね。



2024/10/09

人生に時折あるさ良いことがたとへばポテンヒットのやうな/影山一男

 人生に時折あるさ良いことがたとへばポテンヒットのやうな/影山一男

現代短歌の鑑賞101より

そうかもしれないけど、私はミスした相手のことを考えてしまうなぁ。
ミスとも言えないのかもしれないけど。 思いがけない良いこと、
とはちょっと違うよね。うーん。 うまく説明できないな…。
そこまで深く考えずとも、良かったねと軽く受け止めておけばいいのかな。

2024/10/08

なるようになりてかくありなるようになりてゆくなりこの世というは/大下一真

 なるようになりてかくありなるようになりてゆくなりこの世というは/大下一真

現代の歌人140より

そういうものだよね。諦めてるとかじゃなくてさ。
だからって達観してるわけでもなく。なるようになるから
前を向いていたいのに、どうして影ばかり踏んでしまうのだろう。
自分の有り様を問われてるみたいで心が痛いや。でもこうやって
誰かに背中を押されながらなるようになっていくんだと思う。


2024/10/07

世界とは時代とは数限りなき固有名詞の羅列にすぎぬ/藤原龍一郎

 世界とは時代とは数限りなき固有名詞の羅列にすぎぬ/藤原龍一郎

現代短歌の鑑賞101より

勝者の歴史…とまっ先に思ったけど、そういうことではないよね。
人の感情がからむからややこしくなるのかな。
またトンチンカンなこと言ってるな…。こうやって
あれこれ考えること自体が間違ってるような気がしてくる。
固有名詞の羅列。無機質で掴みどころがない感じ。


2024/10/06

ああ嫌と思ふ所に行くのだが落ち葉を掃けば行かうと思ふ/池田はるみ

 ああ嫌と思ふ所に行くのだが落ち葉を掃けば行かうと思ふ/池田はるみ

現代の歌人140より

これは…行く気がないね?笑。いや、ないわけではなくて
行かなくてはいけない感じはするよね。行かないで済むなら
そうしたいけど、そうもいかないのでギリギリまで延ばしてる。
落ち葉を掃けば、が最高。こうしてる間に、
向こうから断ってくれないかな、みたいな。


2024/10/05

紅葉(こうえふ)のあかさに堪へず狂ひゆく風も地の面(も)も古りしこの身も/藤井常世

 紅葉(こうえふ)のあかさに堪へず狂ひゆく風も地の面(も)も古りしこの身も/藤井常世

現代短歌文庫より

この内側から湧き出てくる感情は何だろう。錯乱。
冷静さを失わずに狂いゆくような、静けさと激しさが同居してる。
紅葉のあかは怖い。乾いた空気、枯れ葉が風に舞う音。
秋は閉ざされてゆくような、終わりへ向かうような淋しさがある。
狂ひゆくって凄いな。内にあるもの。


2024/10/04

冗談をまじへつつ言ふ求職の自嘲が過ぎればそれは差別ぞ/真中朋久

冗談をまじへつつ言ふ求職の自嘲が過ぎればそれは差別ぞ/真中朋久

短歌研究2024年5+6月号より
 
自分のことを言われてるのかと思うような一首だ。
冗談にしなければ自分の心がつぶれそう。ロをつく言葉は
自嘲でありながら、自分の中にある無意識の差別や偏見を
炙り出す。そこまで卑下することは無いのだ。
自分の言葉はいつか自分に返ってくる。この歌を心に留めておこう。




2024/10/03

一瞬をひかりとなりてひるがへりツバメはわが身抜けてゆきたり/永井陽子

 一瞬をひかりとなりてひるがへりツバメはわが身抜けてゆきたり/永井陽子

現代短歌の鑑賞101より

一瞬で心のつかえが取れた、と読んだけど逆かな?あれ?
ひるがへり、と、ツバメのコントラストで混乱してる…。
ツバメは抜けていったけれど、影を残してるような気もする。
ツバメって戻ってくるんじゃないのかな。戻らずに抜けていった
ということ?もう戻ってこなくていいよ、かな。


2024/10/02

そらいろの小花にとりかこまれながら電信柱けふも芽ぶかず/花山多佳子

 そらいろの小花にとりかこまれながら電信柱けふも芽ぶかず/花山多佳子

現代の歌人140より

電信柱が芽ぶいたら、どういう感じなんだろう。
この歌には古い木の電柱が似合いそうと思ったけど、
コンクリートだからこそ、芽ぶかずが生きるよね。
実際の空の色、そらいろの小花、曇天の色と言えなくもない電柱の色。
まっすぐ伸びる電柱から広がる電線。芽ぶくかもしれない。


2024/10/01

百寿とはこんなものかと思い居り昨日も今日も何も変わらず/横田英夫

 百寿とはこんなものかと思い居り昨日も今日も何も変わらず/横田英夫

短歌研究2024年4月号より

こんなものなのかなあと思いつつそういうものかもなあと
納得もする一首。想像もできない年だけど、今の自分を思うと
案外あっけないというか、成るようになってるというか。
老いるのは怖いけど、見たものを、感じたことを、
最後まで残せるといいな。