2025/07/31

[今日の短歌/岡野弘彦]草木にも やさしくやどるわれらが神。敗れし後も 疑はずゐむ

 草木にも やさしくやどるわれらが神。敗れし後も 疑はずゐむ/岡野弘彦

現代の歌人140より

宗教と信仰は違うのだなと。どう言えばいいのかな。
どの宗教も、自分や他者が幸せであるためにあるんだと思う。
一神教の信者の苦悩は想像するに余りある。「敗れし後」に対してね。
だからと言って「疑はずゐむ」は正しいことなのか。
頭の中ぐちゃぐちゃだ。信仰って何だろう。

2025/07/30

[今日の短歌/岩田正]フイルムを逆に回せばながくよき平和ののちに戦争が来る

 フイルムを逆に回せばながくよき平和ののちに戦争が来る

フイルムを逆に回せばありありとひろしまの惨未来ともなる/岩田正

現代の歌人140より

背筋がすっと冷える。
過去であり、未来でもあること。現在進行形で行われていること。
今まさにフイルムを逆に回してるのではないか、
戦争は遠い国の出来事で、自分には無関係だと思ってはいないか。
過去を知ることは未来を作ること。この時期は気が重くなるけれども。

2025/07/29

[今日の短歌/北沢郁子]翡翠(かはせみ)にとられし魚を誰も知らず在りたることも失せたることも

翡翠(かはせみ)にとられし魚を誰も知らず在りたることも失せたることも/北沢郁子

現代の歌人140より

下の句にどきりとする。
この魚は私であり、見知らぬ誰かだ。このかわせみも。何だか苦しくなる。
でも深読みしすぎなんだろうな。ある一場面で、
自分だけが気付いたことを歌にしただけかもしれない。
この歌に惹かれるのは見落としているものに気付かせてくれたからかな。

2025/07/28

[今日の短歌/安立スハル]往きに見て帰りにも見つ白梅の花の隙間の青空が好き

往きに見て帰りにも見つ白梅の花の隙間の青空が好き/安立スハル

現代の歌人140より

こういうことに気付くのは年を取ってからだなぁ。
あたりまえすぎて気にも留めてなかったこと。
ふと気付く瞬間がある。白梅ならなおさらだろう。
こういうことに気付ける人でありたいなあ。
私は日常が美しいものであることを見落としてばかりだ。
ちゃんと顔を上げよう。

2025/07/27

[今日の短歌/塚本邦雄]夢の沖に鶴立ちまよふ ことばとはいのちを思ひ出づるよすが

夢の沖に鶴立ちまよふ ことばとはいのちを思ひ出づるよすが/塚本邦雄

現代の歌人140より

苦手意識のある彼の短歌だけど、書写するたびに少しだけ
「分かる」が増えてる気がする。
結局言語化できなくてモヤモヤするけど。
この歌の静けさ。ことばが、どこから出てくるのだろう。
よすがと言えるほど、私はことばと向き合ってるだろうか。
上の句が心細くて不安になる。

2025/07/26

[今日の短歌/竹山広]欲のごとく祈りのごとく来て去りしかずかぎりなきあしたとゆふべ

 欲のごとく祈りのごとく来て去りしかずかぎりなきあしたとゆふべ/竹山広

現代の歌人140より

言われてみると、欲と祈りはそう遠くない距離にあるのかもしれない。
人の一生と言うには重すぎる気がするけど、
下の句が煩悩のようで、やっぱり人生なのかな。
欲と祈りがかずかぎりなくあって、そうやってこれからも
過ぎてゆくのでしょう。未来を思うよ。


2025/07/25

幻想の蕗の大葉をかざしたる昔男がずぶ濡れてゆく/安永蕗子

 幻想の蕗の大葉をかざしたる昔男がずぶ濡れてゆく/安永蕗子

現代の歌人140より

教養大事…!昔男が伊勢物語で、そのモデルが在原業平と知らなかった…。
調べなかったら過去の男かと思ってトンチンカンなことを書くところだった。
分かったところでピンと来てないので結局はダメなんだけど。
和歌も少し勉強しないとね。色々取りこぼしてるなぁ・・・。



2025/07/24

つづまりは自らにかへる思ひあり九十といふ年との会話か/武川忠一

 つづまりは自らにかへる思ひあり九十といふ年との会話か/武川忠一

現代の歌人140より

先日から老いの歌が続いている。いずれ行く道、なんだろうけど、
自分はそんなに長く生きられるかな、とか思ってしまう。
そう考えること自体が間違ってるんだろうな。
否が応でも頭をよぎえる寿命のこと。振り返ったとき、
私には何が見えるのかな。受け入れていけるかな。

2025/07/23

この世ほぼ過ぎしこのごろ「あ、さうか」と大きく気づくことあまたある/浜田蝶二郎

 この世ほぼ過ぎしこのごろ「あ、さうか」と大きく気づくことあまたある/浜田蝶二郎

現代の歌人140より

この先こういうことが増えていくんだろうね。
年を取ることで気付くこともあるだろうし、
世の中の流れで気付いていくこともあると思う。
過去があるからこそ、気付けるんだよね。点が線になる。
それは新たな学びとはまたちょっと違う。
過去から未来へ。自分の存在。



2025/07/22

茫とゐること多くなり亡き友もなほ在るがこと思ふ折々/田谷鋭

 茫とゐること多くなり亡き友もなほ在るがこと思ふ折々/田谷鋭

現代の歌人140より

ああ、やっぱり私にとって老いの歌は道標なんだな。
同じ道を辿るわけではないけれど。きっと思い出とは違うのだろう。
年老いて、体の自由がきかなくなって、会えない友人を思うとき、
亡き友は遠い存在ではないのかもしれない。
何か言葉が違うな・・・。老いて思うこと。

2025/07/21

天鵞絨(ビロード)の帽子目深にかぶるとき隠れ蓑に似るこころやすらぎ/宮英子

 天鵞絨(ビロード)の帽子目深にかぶるとき隠れ蓑に似るこころやすらぎ/宮英子

現代の歌人140より

ビロードなのがいいね。
日常使いではなくお出掛け用という感じがする。
目深にかぶった帽子は視界を遮る。目が合わなければ
声を掛けにくい雰囲気がある。そういう心の防御なのだなと感じた。
拒絶する程ではないけれど。お守りのような。
ビロードの手触りも良い。



2025/07/20

空車(からぐるま)ひろひて帰るとたれも居ず回想のごとふるきわが家/森岡貞香

 空車(からぐるま)ひろひて帰るとたれも居ず回想のごとふるきわが家/森岡貞香

現代の歌人140より

書き写してるうちに自信がなくなってきた。
かつてはにぎやかだったわが家に、今はひとり、
と読んだけれども家人が外出中で静か、だったりするだろうか。
いや、前者かな。空車とふるきわが家の間に流れる時間。
どこかつかみきれない時間の感覚。
回想のごとが今と過去を結ぶ。

2025/07/19

碧眼の羅刹が降らせし火の雨の記憶も風化しゆくといふのか/清水房雄

 碧眼の羅刹が降らせし火の雨の記憶も風化しゆくといふのか/清水房雄

現代の歌人140より

人の記憶はあいまいだ。
強烈な出来事も、いつしか輪郭がぼやけてくる。
だからと言って忘れて良いわけではないのだ。
風化してゆくことへのとまどいや葛藤。
世間の空気とのズレも感じているのかもしれない。
そういう思いを受け継ぐことが私たちの役目なのかも。



2025/07/18

雪はいい実にいい見上げると灰いろ見おろすとまっ白どこもここもまっ白/加藤克巳

 雪はいい実にいい見上げると灰いろ見おろすとまっ白どこもここもまっ白/加藤克巳

現代の歌人140より

圧が凄いね。ここまでたたみかけられると何も言えなくなっちゃう。
雪雲の灰色だけが色を持つけど、それも目線が下がればすぐに白く変わる。
薄く積もった雪は、いつもの景色を変える。
塗り替えるような白は、気持ちも新たにしてくれる気もする。
新しい始まりのような白だ。

2025/07/17

あの世ありこの世もあれど地続きで竹林の昼帽子落ちてる/岡部桂一郎

 あの世ありこの世もあれど地続きで竹林の昼帽子落ちてる/岡部桂一郎

現代の歌人140より

そう。全ては地続きなんだよね。竹林は、私は明るく見えたけど、
うっそうとして薄気味悪く見える時もあるだろう。
落ちてる帽子が人生の分岐点みたいで、そんなはずはないのに
そこで急に人が消えてしまったのではと錯覚する。
どこか幻想的な竹林があの世とこの世を結ぶように伸びる。

2025/07/16

扉押し扉を押して出口なき夢の怯えの明けの目覚めを/近藤芳美

 扉押し扉を押して出口なき夢の怯えの明けの目覚めを/近藤芳美

現代の歌人140より

ただの夢の話かもしれない。
でもこれは私たちの日常で現実なんじゃないか。
下の句が字余りじゃないかと錯覚してしまうくらい長く感じて、
つかみどころのない夢の出口と目覚めた先にある現実が
混沌としてくる。この結句の先には何が続くんだろう。
また今日が始まる。

2025/07/15

軍手といふ不様(ふさま)なものは惜しげなく使ひ捨てられ道に轢かるる/齋藤史

 軍手といふ不様(ふさま)なものは惜しげなく使ひ捨てられ道に轢かるる/齋藤史

現代の歌人140より

読んだ時の衝撃とザラザラした感情。どう書けばいいんだろう。
軍手という単語自体が使い捨ての手袋みたいな意味に
なってるところがあるけど、軍用手袋と考えた時、
そこに人が浮かび上がる。不様なものと使い捨てられるのは
軍手の人間か。人のあり方を考えさせられる。

2025/07/14

新しくせまる暴力をわが思ふ暴力は何時にても理論を持てり/小暮政次

 新しくせまる暴力をわが思ふ暴力は何時にても理論を持てり/小暮政次

現代の歌人140より

昭和26年の歌集。凄いね。有るべくして有るというか。
なくならないはずだよね。暴力と気付かない、
気付けないうちにどんどん傷が広がっていくんだろうな。
新しくせまる暴力がなくなればいいのにね。
暴力の理論を考え続けること。
ああ言葉が足りないな。一方的ではない。

2025/07/12

「ただ過ぎに過ぐるもの」 いえ ずしずしとわれに来て降り積もれるよはい/山埜井喜美枝

 「ただ過ぎに過ぐるもの」 いえ ずしずしとわれに来て降り積もれるよはい/山埜井喜美枝

現代短歌文庫より

そうなんだよねぇ…。これからの時間は減る一方なのに
齢は本当にずしずしと積もっていくのよ…。
それじゃあいけないのだけど。
われに来て、が、自分だけ取り残されてる感じがする。
誰もが年を取っていくのに。
ああでも自分はただ過ぎるものにしないという信条かも。


2025/07/11

生かされてまた風となる星月夜愛てふものへまだ笑ふべし/渡邊新月

 生かされてまた風となる星月夜愛てふものへまだ笑ふべし/渡邊新月


角川短歌2025年1月号より

私には感性との教養が足りないんだろうな。
美しい連作だなと思うけど、いまいちピンと来なくて何だか悔しい。
人は生かされてるものじゃないのかな。
風となるのは安らぎなのか諦めなのか。下の句も難しいな。
不確かなものというか。疑心暗鬼みたいな。何か違うな・・・。


2025/07/10

波は寄せる さん・ろーらん さん・ろーらん 踊りたい少女たちの足もと/鈴木加成太

 波は寄せる さん・ろーらん さん・ろーらん 踊りたい少女たちの足もと/鈴木加成太

角川短歌2025年1月号より

外国の名前は擬音みたい。
島国の日本に寄せる波と思えば不思議と合ってる気がする。
踊りたい少女たち。サンローランなら踊る場所を用意してくれそうな気がする。
だけどそこにはたどりつけない。脆い足もと。うまく言葉が出てこないな。
ひらがななのは、かりそめだから?

2025/07/09

生きるって何かいちいち考えず魚ばかりの本を読むカフェ/田中翠香

 生きるって何かいちいち考えず魚ばかりの本を読むカフェ/田中翠香

角川短歌2025年1月号より

こういう時間が必要というか、
あたりまえに生きていける世であってほしいと思うよ。
でも人生に意味なんてないという言葉も思い出すんだ。
カフェのざわめきが水族館めいて自分も魚と一緒にたゆたうような、
日常を忘れるようなひととき。生きるって難しいね。

2025/07/08

ひとすじの光もささぬ靴箱に靴を待たせて脱衣所へ行く/道券はな

 ひとすじの光もささぬ靴箱に靴を待たせて脱衣所へ行く/道券はな

角川短歌2025年1月号より

この靴は自分自身なのかな。過去の自分?必死で歩いていた。
気付けば暗がりで、誰も手を差し伸べてはくれなかった。
誰もは言いすぎか。靴箱の暗さは本当に暗いものだろうか。
大事にしまってるとも言えないか。待たせて、がどこか後ろ暗くて、
それを洗い流すような結句。

2025/07/07

LIFE IS そんなもん、という落書きの書かれた歩道橋 わたりきる/阿波野巧也

 LIFE IS そんなもん、という落書きの書かれた歩道橋 わたりきる/阿波野巧也

角川短歌2025年1月号より

何でだろう。スプレーで書かれた大きなものじゃなく、欄干の、
見落とすようなところに油性ペンで書かれているのが浮かんだ。
気付かずに通り過ぎる落書き。気付いても変わらない日常。
おそらく引き返すことのない歩道橋。そんなもんだよ、と
わたり歩くのだ。

2025/07/06

ひらいても閉ぢてもわれの眼に視えぬこの空にたしかにある爆撃機/川野芽生

 ひらいても閉ぢてもわれの眼に視えぬこの空にたしかにある爆撃機/川野芽生

角川短歌2025年1月号より

結局は安全なところに居て、分かった気でいるだけなのかもしれない。
遠くの国の現実を、知らなかったで済ませてはいけないのだ。
無力であっても、無知であってはいけない。
ああ、視えぬ、は爆撃機ではなく、この空、 この世の中かも。
歪んでゆく正義。正しさとは。

2025/07/05

文字盤を耳に寄せれば秒針は柱時計のようにも響く/山階基

 文字盤を耳に寄せれば秒針は柱時計のようにも響く/山階基

角川短歌2025年1月号より

最初は新しい腕時計かなと思ったけど、古い懐中時計かも。
腕時計にしろ懐中時計にしろ、耳に近付けた腕が柱となって
柱時計のイメージが広がっていくのが良いな。
近付かないと聞こえない秒針の音。
いっときを忘れる、心を落ち付ける行為なのかも。

2025/07/04

背骨からほろほろ崩(く)えてゆくごとき朝の疲れよ紅ひきて出づ/菅原百合絵

 背骨からほろほろ崩(く)えてゆくごとき朝の疲れよ紅ひきて出づ/菅原百合絵

角川短歌2025年1月号より

朝起きた瞬間からシャキッと動ける人が羨ましい・・・。
この歌に漂う気怠さが自分のことのように思えて、
自分だけじゃないという安心とちょっとした反省を連れてくる。
でもこの歌は休めてないのかな。疲れが蓄積されてる感じもする。
軸となる背骨。紅は心の傷でもあるのかも。

2025/07/03

悪漢の都市より聖人の都市へ受け渡さるる一束の麦/山川築

 悪漢の都市より聖人の都市へ受け渡さるる一束の麦/山川築

角川短歌2025年1月号より

連作のベースになるものがあるんだろうけど、私が分かってない。
トンチンカンな感想になりそう。
この歌は善意のふりをした悪意なのか、
悪漠といえどもあるであろう良心なのか。
後者であればいいなと思いつつ、そうやって
踏みにじられていくんだろうなとも思う。

2025/07/02

新年をいはふメールに門松の絵文字のちさく立つはうれしも/山下翔

 新年をいはふメールに門松の絵文字のちさく立つはうれしも/山下翔

角川短歌2025年1月号より

最近は門松をあまり見かけなくなったよね。
飾りもシンプルでちょっと淋しい。
絵文字の門松はずっと残るといいね。
下の句にある「ちさく」は絵文字だけじゃなくて、
自分の気持ちも表れていてほっこりする。
定型文になってしまうメールが少しやわらぐ。
絵文字って便利。

2025/07/01

天上に雪の花野がたちみえて生きるかきみを忘れるために/藪内亮輔

 天上に雪の花野がたちみえて生きるかきみを忘れるために/藪内亮輔

角川短歌2025年1月号より

生きてゆくことって、忘れてゆくことだと思うんだ。
全てを忘れるわけではないけれど、薄れていく記憶や思い出。
輪郭がぼやけてゆくというか。見上げた雪が花野のように見えること。
天上にきみがいるのか、天上に行きたい自分なのか。
生きるかの息苦しさ。辛いね。