2025/08/31

[今日の短歌/浜田康敬]東京は恋しき街よ然れども思い出したくなきこと多かり

 東京は恋しき街よ然れども思い出したくなきこと多かり/浜田康敬

現代の歌人140より

私は東京ではないけど、地名を入れ替えればそのままあてはまるなと。
好きな町だけど、もう二度と住みたいとは思わない。
思い出したくなきことは、心に暗く影を落として恋しきことが
かき乱される。それでもやっぱり、恋しき街よ、なんだよねえ…。
今が丁度良い距離なのかも。


2025/08/30

[今日の短歌/小中英之]町を出てゆく者ばかり見送りて終着駅はたえず海鳴り

 町を出てゆく者ばかり見送りて終着駅はたえず海鳴り/小中英之

現代の歌人140より

淋しい歌だなぁ…。この「駅」は、出てゆく者の終着駅ではなくて、
見送る側の終着駅なのかなと思った。見送る淋しさと応援の気持ちと、
自分自身のこれからのこと。 ここを終着駅として生きてゆくこと。
たえず聞こえる海鳴りは、不安や後悔か。誰も来ない気がしてしまう。


2025/08/29

[今日の短歌/秋葉四郎]人の絆(きずな)にじる非道の悪と思ふ俺俺詐欺(おれおれさぎ)といふ犯罪は

 人の絆(きずな)にじる非道の悪と思ふ俺俺詐欺(おれおれさぎ)といふ犯罪は/秋葉四郎

現代の歌人140より

どんどん巧妙になって、今は若い人の被害も増えてるそう。
何というか、非道の悪を牛耳る大元は捕まらず、
加害者が被害者でもあり、不幸な人ばかりが増えて、苦しくなる。
弱みにつけこまれ、自分は加害者にならないと断言できる自信は
私にはない。だから非道の悪なのだ。


2025/08/28

[今日の短歌/青木昭子]先のばししてはその場をしのぎては夕べとなれば先づ米を磨ぐ

 先のばししてはその場をしのぎては夕べとなれば先づ米を磨ぐ/青木昭子


現代の歌人140より

私のことかな。米を磨ぐまでに出来ることがあったでしょう?
たたみかけるような「は」が、自分を責めて、
先のばしの「先」と、先づの「先」が違う方を向いている。
 何があってもお腹は減る。日常がある。タべの傾く光と米を磨ぐ音。
良い方に考えれば、日常が崩れてないのできっと大丈夫。

2025/08/27

[今日の短歌/奥村晃作]厚く堅い陶器を好む妻なると洗いを終えて拭きつつ思う

 厚く堅い陶器を好む妻なると洗いを終えて拭きつつ思う/奥村晃作


現代の歌人140より

妻に任せて、妻が揃えた食器。毎日何気なく使っていたけれど、
洗い物のときにふと気付く。食器はそんなに買い替えるものでもないし、
もしかしたら、妻が少しずつ自分好みのものを揃えてるのかも
と思ったりもした。こういう、おだやかな日常って素敵だな。
色付いてゆく。

2025/08/26

[今日の短歌/杜澤光一郎]苛々(いらいら)と人をののしる父の性(さが)憎々しき性をわれもまた持つ

 苛々(いらいら)と人をののしる父の性(さが)憎々しき性をわれもまた持つ/杜澤光一郎

現代の歌人140より

胸の奥が痛くなる。ああはならない、なりたくないと思っていたのに。
完璧な人などいない。その憎々しき性も、 元々持ってる
自分の性格かもしれない。それでも思わずに居られないのは
親子だからだ。それを自覚した時の苦苦しさとかさ。
それを抱えて生きていくんだよね。


2025/08/25

[今日の短歌/松坂弘]雨のち晴れ、蛍袋のほの明り言葉を包みのびあがりをり

 雨のち晴れ、蛍袋のほの明り言葉を包みのびあがりをり/松坂弘

現代の歌人140より

言葉が雨粒となって降り注ぎ、その雨粒が蛍袋の灯となって、
私たちに何かを伝えるのだ。花がひらくときの雨粒と、
晴れた日の光が重なるのも素敵だ。考えてみると、
 その言葉を包むのは自分自身なのかも。
内から出てくる感情を、きちんと言葉に出来てるだろうか。

2025/08/24

[今日の短歌/志垣澄幸]いつのまにかこの世の人の半分が入れ代はりたり生きながらへて

 いつのまにかこの世の人の半分が入れ代はりたり生きながらへて/志垣澄幸


現代の歌人140より

だんだん、こういうふうに感じてくるのかな。
生きてきた、ではなく、生きながらえて。でもやっぱり、
いつのまにか、なんだなぁ…。入れ代はりたり、の無機質で
ドライな感じが逆に自分の感情を押し殺してるように思う。
いつのまにかと生きながらへての間にある感慨深さ。

2025/08/23

[今日の短歌/石川不二子]慈姑(くわゐ)といふ字がいいなあと思いをり慈姑のやうな青を着ようか

 慈姑(くわゐ)といふ字がいいなあと思いをり慈姑のやうな青を着ようか/石川不二子

現代の歌人140より

何気ない日常、誰に言う訳でもない、ふと浮かぶひとりごとの
ような思い。何でもないことが手触りとなって、自分の日常と
重なるよう。くわいってこういう漢字なんだな、とか、
きっと渋い色のワンピースだろうな、とか。
独り言のような一首がだんだん広がっていくのが面白い。



2025/08/22

[今日の短歌/宮原望子]金色(こんじき)のちひさき鳥という比喩を踏みつけて歩(ゆ)く銀杏並木路

 金色(こんじき)のちひさき鳥という比喩を踏みつけて歩(ゆ)く銀杏並木路/宮原望子

現代の歌人140より

与謝野晶子だね。何だろう、踏みつけて歩く、
が蹴散らしてゆくように見える。…ここまで書いて、あれ?と
思って自分のノートをひっくり返したら、去年、
同じ歌について書いてた…。余程心に引っ掛かったんだと思おう。
似たような感想しか出てこなくて、成長してないな、自分。

去年書いた感想はこちら

https://simblo.net/u/xXb7tn/post/34280


何かめちゃくちゃ恥ずかしい…。

2025/08/21

[今日の短歌/稲葉京子]後ろより誰か来て背にやはらかき掌を置くやうな春となりゐつ

後ろより誰か来て背にやはらかき掌を置くやうな春となりゐつ/稲葉京子

現代の歌人140より

ぱっと背後から明るくなる。誰もいなくても、そこに人の気配を感じる。
春の日差しが確かにこの背にふれるのだ。
待ちわびてたような気もするし、不意にやってきたような気もする。
春の空気が、こんなにも美しい歌になるんだ。
背中を押してくれるような、やはらかき掌。

2025/08/20

[今日の短歌/篠弘]古書店を風吹きぬくる春となり肩幅ほどのはざまに立てり

 古書店を風吹きぬくる春となり肩幅ほどのはざまに立てり/篠弘


現代の歌人140より

そういえば、古書店てまともに入ったことないかも。
古本屋とはまたちょっと違うよね。専門書とか、
本当に昔の古書を扱ってるイメージ。
春が似合ってる気がするのはなぜだろう。入れ替わる感じ?
はざまがいいなあ。自分にも本にも風が吹いて、
古くて新しい何かを見つける。

2025/08/19

[今日の短歌/来嶋靖生]灯の下に拳を握りまたひらく何一つなきもののすがしさ

 灯の下に拳を握りまたひらく何一つなきもののすがしさ/来嶋靖生


現代の歌人140より

てのひらにあるものって何かと比喩に使われる。
この歌の、何かを確かめるような、それでいて、
どこか安心したような、持たないことを決めている?
いや、他人を羨んでるのかな。自虐めいても見えてきた。
灯の下なのも暴かれてしまうようなほの暗さがある。
心惹かれる歌。

2025/08/18

[今日の短歌/石田比呂志]諦観という語しきりに浮かぶ日は無性に過去が美しく見ゆ

 諦観という語しきりに浮かぶ日は無性に過去が美しく見ゆ/石田比呂志

現代の歌人140より

諦観て、あきらめるという意味の他に、入念に見るという
意味もあるんだね。この歌は今を後悔している歌なんだろうな
と思ったけれど、後者の意味を知ると下の句がただ美化して
見えているわけではないような気もしてくる。
しきりにというところに心の奥深さを感じる。


2025/08/16

[今日の短歌/水野昌雄]カステラは紙につきたる焦げし所がうましとは人に言うことならず

 カステラは紙につきたる焦げし所がうましとは人に言うことならず/水野昌雄


現代の歌人140より

ヨーグルトのフタの裏とかね笑。カステラはまた様子が違うけれども。
何となく暗黙の了解というか。昔ははしたないとか、
まさに人に言うことならず、という感じだったけど、
今はオープンだよね。それでも人前ではやらないよね。
…やるのかな?こっそりがいいよね。

2025/08/15

[今日の短歌/田井安曇]幻想をわれら生きたりしのみなりや〈戦中〉永く〈戦後〉短し

 幻想をわれら生きたりしのみなりや〈戦中〉永く〈戦後〉短し/田井安曇

現代の歌人140より

戦争を経験した人は、みんなこんな気持ちなんだろうか。
自分の中で終わっていないのか、折り合いをつけられないのか。
幻想を生きていただけだと、その幻想が今も戦中として
自分の中にあるのかなと。戦争は集団催眠だと言う。
ならば〈戦後〉もまだ醒めない幻想なのかも。


2025/08/14

[今日の短歌/山埜井喜美枝]みいんみん みんな死んだよ 子供らはアイスクリームの味も知らずに

みいんみん みんな死んだよ 子供らはアイスクリームの味も知らずに/山埜井喜美枝

現代の歌人140より

明日は終戦の日で、今はお盆で、今日のこの青空のせいだろうか。
この一首が胸を突き刺してくるのだ。
蝉の声が、やがて責められているような気持ちになるのだ。
短い命が、終わってしまった命を、
この歌を読むたびに思わずにいられないのだ。
子供らが幸せな未来でありますように。

2025/08/13

[今日の短歌/雨宮雅子]ながくながく聖書を学びしは何ならむ一人の窓に遠雷を聞く

 ながくながく聖書を学びしは何ならむ一人の窓に遠雷を聞く/雨宮雅子


現代の歌人140より

気になって彼女のウィキペディアを見てみたら、
晩年になって棄教していた。
この歌は、その約10年前の歌集から。もうこの時から、いや、
きっともっと前から、ずっと問い続けていたんだろう。
苦しかっただろうな。自分と向き合い、対話し、
誰でもない自分が答えを出すのだ。

2025/08/12

[今日の短歌/川口美根子]いつよりかゆめの浮橋火と炎(も)えて遠く孤独にへだたりおりぬ

 いつよりかゆめの浮橋火と炎(も)えて遠く孤独にへだたりおりぬ/川口美根子

現代の歌人140より

そういうものなんだろうか。
過ぎ去ってしまえば、ということなのか、そうせざるを得なかったのか。
火と炎えて、の激しさも気になるところ。
孤独にへだてたくなかった。こんなはずではなかった、かなぁ・・・。
この火は自分の内から来るものではないのか。いつよりかの遠さ。

2025/08/11

[今日の短歌/蒔田さくら子]いつもそこで必ず狂ふレコードの瑕(きず)のごときを身に持てりけり

 いつもそこで必ず狂ふレコードの瑕(きず)のごときを身に持てりけり/蒔田さくら子


現代の歌人140より

美しい思い出の中にも、そういうものはあるよね。
でもあとからついた瑕、だろうか。後悔、みたいな。
いや、 気付いてしまったこと、かな。どう言えばいいのかな。
そこまで気にしてるわけじゃないけど、気にならないわけではない。
記憶とセットになっていること。

2025/08/10

[今日の短歌/高瀬一誌]めがねはからだの一部とコマーシャルつくりしがいずこに行きぬ

 めがねはからだの一部とコマーシャルつくりしがいずこに行きぬ/高瀬一誌

現代の歌人140より

少し不思議な言い方だなと思って調べたら、
CM制作に携わっていたとあったので、本当に自分で作ったCMかも。
若い頃は、どこに置いたか分からないの意味が分からなかったのに、
今はまあまあやらかす。なきゃ困るのに、
案外ぞんざいになりがちで困っちゃうね。


2025/08/09

[今日の短歌/橋本喜典]雲あらぬみ冬の空よ大いなる力がわれを生かしめしなり

 雲あらぬみ冬の空よ大いなる力がわれを生かしめしなり/橋本喜典

現代の歌人140より

生かしめしなり、か。
感謝や喜びの奥に諦念を感じるのは穿ちすぎだろうか。
冬の澄んだ空気と青空。
刺すような冷たい空気は生きてることを強く実感するのかもしれない。
大いなる力で、雪原が思い浮かんだ。
ここに立っていること、生かされていること。生きてゆくこと。

2025/08/08

[今日の短歌/馬場あき子]人生の裏道にふと出たやうな白萩は庭に咲きしだれたり/馬場あき子

 人生の裏道にふと出たやうな日萩は庭に咲きしだれたり/馬場あき子

現代の歌人140より

人生の裏道ってどんなだろう。
裏道なのに庭なのが見慣れた風景になってしまっていて、
突然目に飛び込んできた、みたいな感じがする。
咲きしだれたり、が美しいはずなのに、つきつけられるような、
惑わされるような、怖さに襲われる。
土に落ちた花が過去の自分を思わせる。

2025/08/07

[今日の短歌/岡井隆]やさしさが傾いてくる黄昏は遠(とほ)のむかしに滅んだんだよ

 [今日の短歌/岡井隆]やさしさが傾いてくる黄昏は遠(とほ)のむかしに滅んだんだよ

現代の歌人140より

そんなこと言わないでよ、と叫びたくなる。
それと同時に、どうしてそう思ってしまったのか、
何がそんな思いにさせたのか、その心の内を知りたいとも思う。
でもきっと、私はそれに触れるのをためらうだろう。
怖くて淋しい。知りたいけど知りたくない。
黄昏のやさしさを信じていたい。

2025/08/06

[今日の短歌/尾崎左永子]乾きゆく赤唐辛子吊されて辛辣(しんらつ)の過去日に照るごとし

 乾きゆく赤唐辛子吊されて辛辣(しんらつ)の過去日に照るごとし/尾崎左永子

現代の歌人140より

からいとつらいは同じ字だ。
干されれば、辛辣の過去はぎゅっと凝縮されたりしないだろうか。
吊されて、晒されたような、暴かれたような気持ちにならないだろうか。
 そういうことを思い起こされる乾きゆく赤が
刺さるような気がしてくる。いつまでもそこにあるような辛さ。

2025/08/05

[今日の短歌/上野久雄]二つずつ幾種(いくいろ)のパン購いて乗りこみきたり桜(はな)に行こうか

 二つずつ幾種(いくいろ)のパン購いて乗りこみきたり桜(はな)に行こうか/上野久雄

現代の歌人140より

お花見に行く予定はなかったんだよね。
笑顔が見えてくるのがいいなあ。
二つずつのパンに、二人で食べたい、 分かち合いたいが
ごく普通の日常としてあって、ごく自然に結句につながる。
ここまで書いて気付いたけど、一人かな。
あの人を偲んで、思いを連れて、桜に行こうか。

深読みし過ぎかも…


2025/08/04

[今日の短歌/富小路禎子]スクランブル交叉点の真中今ならばわが生(よ)何方(いづかた)へもゆけると思ふ

 [今日の短歌/富小路禎子]スクランブル交叉点の真中今ならばわが生(よ)何方(いづかた)へもゆけると思ふ

現代の歌人140より

ああ、そうかぁ・・・。
私は人混みで、自分だけがどこにも行けず、取り
残されたような気持ちになるんだ。
私もこんなふうに思えれば良かった。たとえ結果が同じであっても。
人々の波に押し流されて、自分も他人の知らない生(よ)を
歩いてるのだと、もっと早く気付くべきだった。

ただの反省文になってしまった…

2025/08/03

[今日の短歌/春日真木子]生きゐし日の名前に冠するソフト帽「故(こ)」の文字すこし崩して書かな

 [今日の短歌/春日真木子]生きゐし日の名前に冠するソフト帽「故(こ)」の文字すこし崩して書かな

現代の歌人140より

故人に対する敬愛の念が伝わってくる。
ソフト帽とすることで、そこに生が宿るというか、
亡くなった人というよりこの世に居た人という
「生」に光が当たる気がする。
ちょっとうまく言えなくて意味不明になってるな…。
まだ受け入れられないのかもしれない。淋しさ?

2025/08/02

[今日の短歌/前登志夫]飲めるだけ酒を飲みたる若き日のあの悲しみは何であつたか

 [今日の短歌/前登志夫]飲めるだけ酒を飲みたる若き日のあの悲しみは何であつたか

現代の歌人140より

人は自分の心を守るため、悲しみや苦しみなどの感情は残っても、
その詳細は薄れていくのだという。
そう言われると確かにそうかもしれない。
でもそれは、長い時間が経ったから言えるのだ。
自分だけが、その感情を抱きしめる。若き日の自分を思う。

2025/08/01

[今日の短歌/山中智恵子]八月は逝く いくたびも逝く 逝くものを残して逝きしうつせみも逝く

八月は逝く いくたびも逝く 逝くものを残して逝きしうつせみも逝く/山中智恵子

現代の歌人140より

今日から八月。八月はそういうニュースや特集が増えて
何となく心が重い。若い頃はどうだったろう。
年を取ったからなおさら?何度も「逝く」が繰り返され、
言葉にならない感情が胸に折り重なる。
置いていかれるような気持ちになるけど、私もいずれ逝くのだ。