2025/09/30

[今日の短歌/三枝浩樹]膝をかかえたまま言葉なくいたりけり波しずかなる天涯の青

 膝をかかえたまま言葉なくいたりけり波しずかなる天涯の青/三枝浩樹

現代の歌人140より

波で海が広がって、天涯で空と繋がる。その間にいる自分。
けり、は気付きだよね。空と海はこれまでとこれからなんだろうか。
言葉なく、はきっと、整理できない心の内。波の音が
言葉をさらっていくような気がしてくる。そう考えると
天涯の青は孤独なものでもないのかも。


2025/09/29

[今日の短歌/時田則雄]十勝野は神神の遊ぶ庭カムイミンタラ 春の風すべつてころんでゐる午後である

十勝野は神神の遊ぶ庭カムイミンタラ 春の風すべつてころんでゐる午後である/時田則雄

現代の歌人140より

十勝って景色が違うというか。石狩も平地だけど。規模の違い?
神々の遊ぶ庭って、素敵だよねえ・・・。
春なのも良い。すべってころんで、にまだ雪が残っていて、
でも確かに感じる春の息吹。あたたかな午後の日差し。
神様ってこういうところにいるのかなと思うよ。


2025/09/28

[今日の短歌/河野裕子]美しく齢を取りたいと言ふ人をアホかと思ひ寝るまへも思ふ

 美しく齢を取りたいと言ふ人をアホかと思ひ寝るまへも思ふ/河野裕子

現代の歌人140より

初めて読んだ時は、私は美しく齢を取りたいけどなぁと思ったけど、
今読むとそういうことじゃないなと。美しくというのは
行動の結果というか。アホか、は怒ってるのかと思ったけど、
関西弁の親しみを込めたつっこみで、 寝る前の思い出し笑いかな、
とか。ネガティブな歌じゃないかも。


2025/09/27

[今日の短歌/沖ななも]みあげれば思いのほかに青深くあっけらかんと梅雨はあけたり

 みあげれば思いのほかに青深くあっけらかんと梅雨はあけたり/沖ななも

現代の歌人140より

重なる「あ」の音が心地良い。あ行の音、母音の「あ」 が強くて、
続けて読むと「梅雨は」でちょっと音が沈むんだよね。
そのことで「青深く」がより一層色鮮やかになる。
あっけらかんというさっぱりとした表現が、
夏へと向かう空気を強く感じられて明るい気持ちになる。


2025/09/26

[今日の短歌/日高堯子]たましひが躰のなかで泪する しづかにひととき泣かせてやりぬ

 たましひが躰のなかで泪する しづかにひととき泣かせてやりぬ/日高堯子

現代の歌人140より

私がうまく言い表せないことがこの一首に詰まってる。
気持ちと体がついていかないというか。ちょっと違うな。
冷静な自分と、感傷的な自分。こうやって読むと、奥底にある感情は
たましいなのかな。時々合致しなくて気持ち悪いけど、
しづかに受け止めてあげればいいのかな。


2025/09/25

[今日の短歌/久々湊盈子]長く長くひとつ火種を秘めきたり消さず絶やさず劫火となさず

 長く長くひとつ火種を秘めきたり消さず絶やさず劫火となさず/久々湊盈子

現代の歌人140より

結句が怖い。いつだって焼きつくすことができるのよって
言ってるよね。火種ってそういうものかもしれないけど。
劫火の強さにおののくけど、長く長くもスッと落ちてゆくような、
静かだけどまさに秘めた思いの深さを感じる。読めば読むほど、
色んな感情がわいてくる。


2025/09/24

[今日の短歌/古谷智子]髪を切る音はかすかに雨に和し身の内側もけぶりてゆけり

 髪を切る音はかすかに雨に和し身の内側もけぶりてゆけり/古谷智子

現代の歌人140より

けぶりて、と聞くと、くすぶって、と感じるけど、美しく
におやかに見える、でもあるんだね。髪が落ちる様子、 雨の音。
髪を切る音は、体に近くて内側から響く。こうやって書いてると、
本当に美しいな。心地良く切ってもらえると、
髪だけじゃなく心も軽くなる。


2025/09/23

[今日の短歌/大島史洋]表現に類型はあり人生に類型はなし と言えるかどうか

 表現に類型はあり人生に類型はなし と言えるかどうか/大島史洋

現代の歌人140より

一字空けが怖いねぇ…。類型と言われるとね。同じではない。
でも似て非なるもの、類型ではない、とまでは言えないなぁ。
自分への問いでありながら、こちらに問うてくるのが怖い。
いや、怖いではないな。自分の生き方を見透かされたような
居心地の悪さ。やっぱり怖い。


2025/09/21

[今日の短歌/小高賢]のんびりと路地を行きかいいつのまに世間に忘れらるる生き方

 のんびりと路地を行きかいいつのまに世間に忘れらるる生き方/小高賢

現代の歌人140より

「のんびり」から「忘れらるる」までの時間の経過。世間って、
結局は自分の目に見えてる範囲でしかないんじゃないかなと
思ったりもする。こんな生き方も悪くないと思ってる気がする。
今までが忙しすぎたのかな、とか。忘れられるのは淋しいけど、
世間は狭くて広い。




2025/09/20

[今日の短歌/草田照子]逝きしことさりげなく人にまだ言へずさむくてさむくて舌がふるへて

 逝きしことさりげなく人にまだ言へずさむくてさむくて舌がふるへて/草田照子

現代の歌人140より

こういうのを見聞きする度、私はどこか感情が欠落してるんだなと思う。
悲しくないわけじゃないし、情がないわけでもない。
何なんだろうね。そんな風に逝きし人のことを思えるのは
羨ましいとさえ思う。言葉にすると、私は何て酷い人間なんだ。
でも気持ちは理解してるつもりだよ。


最後の一文を書きながら、なおさら自己嫌悪に陥ってしまった。最悪だな…。

2025/09/19

[今日の短歌/外塚喬]葉桜の下をくぐるに渇きたる心にひびく言葉は真水

 葉桜の下をくぐるに渇きたる心にひびく言葉は真水/外塚喬

現代の歌人140より

散ってしまった桜の花。濃さを増してゆく緑。
渇きたる心ってどういうことかな。何となく、淋しさよりも
鬱屈した気持ちのような気がする。そうか、葉桜と言葉は
繋がってるんだな。渇いてるからこそ、真水をよく受け止めるのだ。
いつもなら通り抜ける言葉がひびく。


2025/09/18

[今日の短歌/中野昭子]しみじみとひかりを点す街灯が腑抜けのようになる朝の来て

 しみじみとひかりを点す街灯が腑抜けのようになる朝の来て/中野昭子


現代の歌人140より

そのしみじみとしたひかりを眺める自分。腑抜けるのは街灯か自分か、
はたまた朝か。朝が不思議なものに思えてくる。朝「の」だから?
腑抜けのように、という表現がいいかなあ。朝のひかりには
敵わない。でもきっと、しみじみするのは街灯だ。
何度も読みたくなる歌。

言葉足らずになってるな…。しみじみが似合うのは、としたほうがよかった。

2025/09/17

[今日の短歌/三枝昂之]まだ丘は樹木の奥に霧がある私はまれにふくろうとなる

 まだ丘は樹木の奥に霧がある私はまれにふくろうとなる/三枝昂之


現代の歌人140より

下の句に心惹かれる。全然どういうことかつかめていないけど。
「まだ」と「まれ」の音がいいなあ。何でふくろうなんだろう、
ふくろうとなり、何をするんだろう。 樹木の奥の霧に
何があるんだろう。とても静かで、でもいつもは気にしてないのかも。
だから「まれ」なのかと。

2025/09/16

[今日の短歌/伊藤一彦]世の道のすべてが舗装されゆかむ わが家のまへ呼吸する土

 世の道のすべてが舗装されゆかむ わが家のまへ呼吸する土/伊藤一彦


現代の歌人140より

正しく意味を読み取れてない気がするけど。敷かれたレールとか、
そういう感じかな。下の句が、それでいいの?と問いかけてる気がする。
違うか。この土は砦でもあるのかな。家は自分自身で、土は
自分の気持ち。舗装されてゆく道をどうやっで進むのか。
うまく言語化できない。

2025/09/15

[今日の短歌/前川佐重郎]少年はこの一年を他人(ひと)となり楷書のやうなことばをつかふ

 少年はこの一年を他人(ひと)となり楷書のやうなことばをつかふ/前川佐重郎


現代の歌人140より

子供って、あっという間に大きくなるよねぇ…。大人は一年なんて
すぐなのにさ。去年会った時はくだけた口調だった少年が、
今年は少しかしこまっている。多感な時期に入り、向こうも
戸惑ってるのかもしれない。楷書のような、がいいよねえ。
淋しくもあり、頼もしくもある。



2025/09/14

[今日の短歌/福島泰樹]吹き荒れる螺旋の風よ階段よ真っ直ぐ生きてゆかんと思う

吹き荒れる螺旋の風よ階段よ真っ直ぐ生きてゆかんと思う/福島泰樹

現代の歌人140より

「吹き荒れる螺旋」はこの世かな。風と階段は、人生の指標
みたいな感じ?吹き荒れるって厳しいよなぁ…。だからこそ
「真っ直ぐ」がつき刺さるように力強く胸に響くんだろうか。
でも「と思う」というところに揺らぎや迷いも感じられて
その人物像がとても魅力的だ。


2025/09/13

[今日の短歌/佐藤通雅]雪の上にいたりて雪は姿消す天なるものはためらはぬなり

 雪の上にいたりて雪は姿消す天なるものはためらはぬなり/佐藤通

現代の歌人140より

全然分からないのに心惹かれる歌だ。
上の句で、雪はとけるからねと思ってたら、下の句。
大雪が覆い隠す?でも雪「は」だしなあ…。降る雪と積もる雪の
違い?ためらはぬなり、も、異常気象にも巡る季節にも思えて
混乱する。雪の上に居るのは自分自身?不思議で気になる歌。


2025/09/12

[今日の短歌/黒木三千代]大鍋をぐらぐら煮たて雲製造所わたしの厨房(キチン)に鬱の日はこもる

 大鍋をぐらぐら煮たて雲製造所わたしの厨房(キチン)に鬱の日はこもる/黒木三千代

現代の歌人140より

雲製造所がいいなぁ。
鬱々としてる時は、没頭できる何かがあれば良いと聞く。
この歌の厨房から広がる物語が好きだな。もやもやした気持ちを
ぐらぐら煮たて、もくもく雲を作る。気持ちが雲に乗って、
どこか遠くへ運んでくれる気がする。大鍋なのもいいよね。




2025/09/11

[今日の短歌/成瀬有]五十年経て三歳のうつくしき空襲の夜を夢にもとほる

 五十年経て三歳のうつくしき空襲の夜を夢にもとほる/成瀬有

現代の歌人140より

結句の意味を読み取れないでいるけど。善悪のつかない子供の感情。
大人になってその意味を知っても、美しいと思った記憶は
消えないだろう。状況を理解していなかった。その記憶が
自分を責めるのだろうか。何か違うな。戦時中だって、
美しく楽しい事はあっただろう。そういう夢、だろうか。


結局ぐちゃぐちゃのままですね…


2025/09/10

[今日の短歌/高野公彦]あれはどこへ行く舟ならむいつ見ても真つ新なるよ柩といふは

 あれはどこへ行く舟ならむいつ見ても真つ新なるよ柩といふは/高野公彦

現代の歌人140より

読み進め、舟が柩に変わるとき、「あれはどこへ行く」が急に淋しく
色をなくす。いつ見ても、と言う程に、見送ってきた。
真っ新な舟を、私たちは送り出すけど、どこへ行くかは知らないのだ。
祈りでもあり、願いでもあるのかもしれない。いずれ、自分も乗る舟。




2025/09/09

[今日の短歌/田村広志]好きなように暮らして独りの気楽さの五十代なり幹だけの生

 好きなように暮らして独りの気楽さの五十代なり幹だけの生/田村広志


現代の歌人140より

結句に淋しさを感じるけど、私の思い違いかもしれない。
家庭があれば、こうはいかなかっただろうという思いと、
どう言えばいいのかな。これで良かったのか、みたいな後悔?
いや、そこまでではないかな。成るようになってここまで来た。
人生の節目かな。

2025/09/08

[今日の短歌/柏崎驍二]凍りたる滝を見上げて立つわれは寒き柱を身の内にもつ

 凍りたる滝を見上げて立つわれは寒き柱を身の内にもつ/柏崎驍二

現代の歌人140より

どう捉えればいいんだろう。厳冬の滝、見上げるわれ。
寒き柱って何だろう。心の冷たさや厳しさとは違う気がする。
普段は見せない、自分でも気付かない冷淡な気持ちのことだろうか。
案外そんな後ろ向きな事ではなく、しんとした冷たい空気が
身を引き締めるのかもしれない。


2025/09/07

[今日の短歌/藤井常世]いましづかに夕日がしづむ鳥よりも風よりもとほき旅をしてきて

 いましづかに夕日がしづむ鳥よりも風よりもとほき旅をしてきて/藤井常世


現代の歌人140より

なんて静かな歌なんだろう。鳥も風も夕日に揺れる。
とほき旅がはてしなくて、でもその先が明日へ繋がると思わせてくれる。
その夕日を見ると、自分の小ささに落ちこんだりしないんだろうか。
それとも自分の悩みなどささいなものだと、夕日の旅を思うだろうか。

2025/09/06

[今日の短歌/玉井清弘]バスの中誰も声せず幼きがあーあとふかきかなしみもらす

 バスの中誰も声せず幼きがあーあとふかきかなしみもらす/玉井清弘

現代の歌人140より

どこにも乗客の姿は描かれていないのに、疲れた大人たちと、
差し込む夕日が見えてくるのが面白いな。あーあからの平仮名が
間延びしてるようにも、落胆してるようにも見えつつ、
赤ちゃんの無垢な声が逆に達観してるかのようで、
何だか自分が情けないような、申し訳ないような気持ちになる。




2025/09/05

[今日の短歌/三井ゆき]われもまたひとつの連鎖しののめの昇る朝日をかなしみにけり

 われもまたひとつの連鎖しののめの昇る朝日をかなしみにけり/三井ゆき


現代の歌人140より

歯車と比喩されることがあるけど、連鎖、連鎖か。
繋がってるのかな。そう思うことも、この歌に重なるのかな。
 そしてやっぱり、朝なんだな、と。古語だと朝はあしたで、
かなしは愛しでもある。初句からの静けさが朝日に重なり、
連鎖という意味を噛み締める。いい歌だな。

2025/09/04

[今日の短歌/大河原惇行]この日ごろ荒れし妻が手如月の過ぎなむとして降る今日の雪

 この日ごろ荒れし妻が手如月の過ぎなむとして降る今日の雪/大河原惇行


現代の歌人140より

ぱっと見で、手を見落としてしまってぎょっとした。
手が見えるととたんに雰囲気が柔らかくなる。
少し春の気配を感じてきて、でもまだ寒くて雪も降る。
手荒れが辛い時期でもある。二月の冷たい水と雪が重なって、
妻の手を気遣ってる感じがする。

2025/09/03

[今日の短歌/辺見じゅん]遠桜いのちの距離と思ふまで花の形象崩れてゆけり

 遠桜いのちの距離と思ふまで花の形象崩れてゆけり/辺見じゅん

現代の歌人140より

ずーっと、幻みたいだ。桜だと分かるのに、はっきりしないのだ。
「いのちの距離と思ふまで」がはてしない感じがする。
寿命というよりは、これからの生き方を指してるのかな。
あ、この「まで」は距離じゃなくて「ほど」かな。
だとしたら、思い詰めてるのかもしれない。

助詞って難しいですね

2025/09/02

[今日の短歌/春日井建]薬剤がばさりと落とせし髪なれど変身はすこし愉しかりにき

 薬剤がばさりと落とせし髪なれど変身はすこし愉しかりにき/春日井建


現代の歌人140より

自分が同じ立場になった時、こんな風に思えるだろうか。
書き残せるだろうか。たとえ強がりだったとしても。
でも書き残すことが、生きてゆくための源でもあるのかもしれない。
日々を切り取ることは尊いことだと短歌が教えてくれた。
良く分からなかった歌人が胸に落ちてくる。



2025/09/01

[今日の短歌/佐佐木幸綱]生きるとは時間の川を抜手きるひとりひとつの影と思いぬ

 生きるとは時間の川を抜手きるひとりひとつの影と思いぬ/佐佐木幸綱

現代の歌人140より

結局頭が悪くて良く分かってないんだけど、説得力がある。
時間の川に浮かび上がる影がイメージしやすいからかな。
こうやって見ると、時間の川に流されるんじゃなくて、
どうやって立ち向っていくのか、なのかな。
その影は、自分では見えないのかもしれないね。