2023/07/31

ありふれたシーグラス拾ひ持ち帰るただ大切の光のやうに/紀野恵

 ありふれたシーグラス拾ひ持ち帰るただ大切の光のやうに/紀野恵

短歌研究2023年5+6月号より

今シーグラスってありふれてるかな。
大切な、じゃなくて大切の、なのは何か深い意味があるのかな。
ありふれた、と、大切の、の間には距離がありそうだけど、
だからこそ、その質感というか質量?が重くて軽い。
何言ってるの、自分…。ありふれてるけどありふれてない。



2023/07/30

今年の春さいしょの雨に濡れているカモメの翼 自信がないよ/北山あさひ

 今年の春さいしょの雨に濡れているカモメの翼 自信がないよ/北山あさひ

短歌研究2023年5+6月号より

始まりの物語、力強さを感じていたのに、結句で一気に印象が変わる。
冷たい雨、心細さ。同じようで違う景色。
繰り返しのようでリセットされて重なってゆく日々。
去年とは違う今年は今年。
さいしょの雨はいつも重いのだろうか。
飛び立つのは怖くないと知っているのに。



2023/07/29

父なりの祈りのかたち臓(はらわた)をエッチングにて描きたるを見る/北辻一展

父なりの祈りのかたち臓(はらわた)をエッチングにて描きたるを見る/北辻一展

短歌研究2023年5+6月号より

お父様は画家?作家さんかな。
自分の体内にあったもの。 何となく、鬼気迫る感じがするのに、
祈りのかたち、で空気が柔かい。
絵にすれば、ぱっと見で臓器とは分からないかも。
それが分かるのは自分が医者だから?父の祈りが分かるのかもしれない。
こういう伝わり方もあるんだな。



2023/07/28

コンビニで買ったトラベルマガジンの韓国特集に付箋付けたり/カン・ハンナ

 コンビニで買ったトラベルマガジンの韓国特集に付箋付けたり/カン・ハンナ

短歌研究2023年5+6月号より

私は外国どころか狭い範囲でしか暮してないから想像でしかないけど、
不思議な感じだろうな。外国の言葉で書かれた故郷の案内、
懐かしい風景、知らない新名所。この国で生きる私、母国に住む家族、友人。
淋しさ?恋しさ?何か違うな。連作に漂う心の揺らぎ。

2023/07/27

石は卵になりたくなくて黙せるを月かげの手が撫でまはしゐる/川野芽生

 石は卵になりたくなくて黙せるを月かげの手が撫でまはしゐる/川野芽生

短歌研究2023年5+6月号より

書き写しながら、なりたくて、と読み間違えていたことに気付く。
大分意味が変わってくる。急に生々しさが漂うな。
この小説を知らなくて、数養もなくて歴史の背景にもピンとこないんだけど、
分かると色々理解が深まるかも。漫画だと読みやすいかな。

2023/07/26

生まれたらゆれるしかないゆれながらひらくしかない睡蓮咲いた/川野里子

 生まれたらゆれるしかないゆれながらひらくしかない睡蓮咲いた/川野里子

短歌研究2023年5+6月号

たたみかけるような睡蓮の連作。
読んでるうちに、睡蓮に囲まれてるみたいな気持ちになってくる。
そして最後のこの歌。
急に自分に言われたみたいでドキッとする。
結句の存在感?目に飛び込んでくる感じ?
全然うまく言葉が出てこない…。ぐるぐる何回も読んでる。

2023/07/25

茶畑にきざす夕陽を見ていたり新幹線のまどろみの中/川谷ふじの

 茶畑にきざす夕陽を見ていたり新幹線のまどろみの中/川谷ふじの

短歌研究2023年5+6月号より

帰省のシーンかな。まどろみ、がいいよねえ。
新幹線もまどろんでるみたいで風景がゆっくり流れてゆく。
見たことはないけど風景が浮かぶ。
茶畑の緑、柔らかな夕陽。 額縁のような車窓からの景色。
静かで、この歌に感情がないからこちらの感情を受け入れてくれる。
良い歌だな。




2023/07/24

十二単みたいに床に擦れながら春風に揺れているカーテン/川島結佳子

 十二単みたいに床に擦れながら春風に揺れているカーテン/川島結佳子

短歌研究2023年5+6月号より

何もない部屋に揺れるカーテンがぱっと浮かぶんだけど、
十二単みたいに、だから買い間違えたんだよね。
何とも言えないがっかり感。それをこんなに軽やかに、
雅に歌い上げちゃう。春風が良いよねえ。ま
ぁいっかって思っちゃう。良くないんだけど。
ちょっとだけ目を背ける。

2023/07/23

いく巡り咲くなき黄金(きん)の福寿草ひとつ開けりけさの光に/川﨑勝信

 いく巡り咲くなき黄金(きん)の福寿草ひとつ開けりけさの光に/川﨑勝信

短歌研究2023年5+6月号より

言葉にするのが難しいな。
自分が年を取った時、こんなに色々、ちゃんと世の中を、
日々の生活を見て生きてるだろうか。
昔は良かった、とは思わないけど、戸惑う時もある。
時代は巡るんだなって実感することも。
ちゃんと立っていられるかな。連作最後のこの歌がとても好き。

2023/07/22

ポケットに口紅入れて遠くまで連なっている信号を待つ/川口慈子

 ポケットに口紅入れて遠くまで連なっている信号を待つ/川口慈子

短歌研究2023年5+6月号より

直線道路の先まで続く赤信号が浮かんだ。
最初は徒歩のなと思ったけど、車の運転中で渋滞待ちかなあ。
どちらにせよ、上の句が難しい・・・。
あまりポケットに入れるものではないよねえ。
急に人と会うことになった?
よくよく読むと置いていかれるような気持ちになる。謎の歌。

2023/07/21

わが酒量とみにおとろへゆく様を知るか蕪(かぶら)の如き李朝の酒瓶/雁部貞夫

 わが酒量とみにおとろへゆく様を知るか蕪(かぶら)の如き李朝の酒瓶/雁部貞夫

短歌研究2023年5+6月号より

何か凄い。とにかく怒ってるのが伝わってくる連作。
怒って、お腹が空いて、落ち着けるかのように酒を飲む。
李朝というお酒かな?と思ったら陶磁器なんだね。素敵な酒器だ。
知るか、が自暴自棄にも酒瓶に問い掛けてるようにも見えて面白いなと思った。



2023/07/20

青空に白く浮きたる半月を地球生物われ仰ぐ昼/上條雅通

 青空に白く浮きたる半月を地球生物われ仰ぐ昼/上條雅通

短歌研究2023年5+6月号より

全然うまく言葉が出てこないんだけど、とても心惹かれる一首。
われ仰ぐ昼、がいいよねぇ…。自分が見てるはずなのに、見られているような感じもする。
どう言えばいいのかな。地球生物、と言われると何だかちっぽけで、
不完全に思える昼間の半月とか、その白さとか。

2023/07/19

ゲームしてタップとかスクロールとかまいにちまいにち半袖のうで/椛沢知世

 ゲームしてタップとかスクロールとかまいにちまいにち半袖のうで/椛沢知世

短歌研究2023年5+6月号より

私の頭の固さや感性の無さよ。身も蓋もない事を言えば全然分からない。
でもこの連作にある柔らかさ、繊細さは分かる。
パズルみたいな短歌でぱっとは分からないんだけど、日常ってこういうものかもなあとも思う。
何の脈絡もなかったり、うまくいかなかったり。

2023/07/18

夜の明けのしじまの中を息切らし登りつめたり大菩薩峠/金子正男

 夜の明けのしじまの中を息切らし登りつめたり大菩薩峠/金子正男

短歌研究2023年5+6月号より

大菩薩峠、日本百名山の一つで登山初心者やハイキングにもおすすめのスポットらしい。
夜の明け、とか、息切らし、とかしんどそうだなと思うけど、
その分の決意とか達成感が見えてきて一緒に歩いているような気持ちになる。
大菩薩峠、という名前もいいよねえ・・・。

2023/07/17

神社や寺あればおのづと祈願する神も仏も力なき世も/金子貞雄

 神社や寺あればおのづと祈願する神も仏も力なき世も/金子貞雄

短歌研究2023年5+6月号より

無宗教と無信仰は別物で、日本人は信心深い人が多い、と聞いたことがある。
生活に信仰がとけ込んでる、とも。この歌を読んでそんなことをふと思い出す。
あたりまえのように手を合わす。下の句のやるせなさ。
それでも祈り、願うんだよね。おのづと、に人柄が表れてる。

2023/07/16

レシートの文字が薄れてゆくやうに眠りにしづむしづみつづける/門脇篤史

 レシートの文字が薄れてゆくやうに眠りにしづむしづみつづける/門脇篤史

短歌研究2023年5+6月号より

生活のかけらを切り取ったような連作。
何というか、私にはない感性で、粗暴な暮らしの自分を反省した。
きっと、同じものを見ても私には見えなくて、だからこんなに眩しいんだろうな。
でもどこか夢現なのはレシートの文字が薄くなる時間と、眠りに沈む時間を思うからかな。



2023/07/15

あれは夏の記憶のかけらうすき耳にひかりのごとき蟬しぐれ降る/加藤英彦

 あれは夏の記憶のかけらうすき耳にひかりのごとき蟬しぐれ降る

泣きやまぬこえが鋭しさっきまで乳首をふふみおりし木陰に/加藤英彦

短歌研究2023年5+6月号

この二首の並びが凄い。
蝉の声が赤子の声になって、木陰にいるのは記憶の中の、想像の自分のよう。
柔らかかったはずの光がどこか棘を持つ。時間が、記憶が歪んでゆくような感覚。
眩しさの中に小さな小さな点があって、それが何とも言えずもの悲しい。


2023/07/14

桃栗三年柿八年柚の大馬鹿とうたひつつ大根あらひき栂(つが)の木の下/風早康惠

 桃栗三年柿八年柚の大馬鹿とうたひつつ大根あらひき栂(つが)の木の下/風早康惠

短歌研究2023年5+6月号より

栂の木がどんな木が知らなかったけど、それでもある冬の日が見えてくるのが凄い。
何だか軽やかで楽しそう。
柚の木も庭にあって実をつけているならば、梅の木もきっと長い時を過ごしてきたんだろう。
木偏に母がいいよね。イメージが広がる。大根あらひきという日常。

2023/07/13

ひとびとは冷えた体に近づいて氷のとけるようにほほえむ/加藤治郎

 ひとびとは冷えた体に近づいて氷のとけるようにほほえむ/加藤治郎

何だろう・・・まどろみ?白昼夢、みたいな。高熱でふせてるのかなと。
視線がくるくる変わる。
冷えた体が自分自身かと思ったけど、ひとびとの中の一人の気もするし、第三者目線の気もする。
意識がどこか遠いところにあってまた戻ってくる。不思議な歌。言葉が出てこない。

2023/07/12

土の道われはしばしば見失ふ風の道をぞ尋ね歩まむ/春日いづみ

土の道われはしばしば見失ふ風の道をぞ尋ね歩まむ/春日いづみ

短歌研究2023年5+6月号より

目に見える道、形を変えてゆく道。進む道は風の道なんだなあ。
土の道は歩くべき道、自分で決めた道かな。
手探りで進む先に見失った道がまた見えてくるかな。
下の句がいいよねぇ。振り返らない強さ、みたいな。
見えない道を自分で切り拓いてゆく。一人じゃない。


2023/07/11

松の葉の揃ひて明けの空を指し今日の時間が明るくなりぬ/春日真木子

 松の葉の揃ひて明けの空を指し今日の時間が明るくなりぬ/春日真木子

短歌研究2023年5+6月号より

どれを書写するか迷ったくらいどの歌もめちゃくちゃ良い。好き。
年を取るってこういうことかな。この時代に立っているということ。
受け入れられずに、手離せずに生きてゆくということ。
朝が明るいものであること。
未来が不安でも、短歌が道を照らしてくれる。
ありがとう。


2023/07/10

ゆきなさいゆけばいいさういつだつてまぶしきものは春へとかへる/梶原さい子

 ゆきなさいゆけばいいさういつだつてまぶしきものは春へとかへる/梶原さい子

短歌研究2023年5+6月号より

渡り鳥、白鳥かな。飛び立つ鳥に誰ということはなく誰かを重ねているような。
でもそうすることの空しさみたいな。これは連作最後の歌。
ひらがなの優しさ、結句の力強さ。自分自身に言い聞かせてるようにも見える。
うまく言えないけど言葉の意味を思う。連作って凄い。



2023/07/09

たかだかと咲くマグノリア庭になくピンクの似合いし母の梅咲く/香川ヒサ

 たかだかと咲くマグノリア庭になくピンクの似合いし母の梅咲く/香川ヒサ

短歌研究2023年5+6月号より

たかだか、とひらがなで書かれると、せいぜいのほうかなと思っちゃうけど多分深読みしすぎ。
マグノリアと梅の花の大きさの対比。花の色、香り。
ピンクは母にも梅にも掛かって、記憶の中のマグノリアが存在感を増す。
 梅の花のさりげなさ。母の梅、なのがいいなあ。

2023/07/08

独り居に慣れきて十年(ととせ)を転職の男孫が越し来ぬはつかな荷にて/影山美智子

 独り居に慣れきて十年(ととせ)を転職の男孫が越し来ぬはつかな荷にて/影山美智子

短歌研究2023年5+6月号より

フラッとやってきた、みたいな感じがいいね。嬉しさと戸惑いと。
慣れてきた頃にまた誰かと暮らすってどんな気持ちだろう。
連作で見えてくる心の動きが素敵だ。子供じゃなくて孫。
孫だから良いんだろうな。ワンクッションあるというか。
光が射してゆくような日々。

2023/07/07

ヒキオコシその名めでたし道の辺に葉を噛みて愛(を)し苦(にが)しとも苦し/恩田英明

 ヒキオコシその名めでたし道の辺に葉を噛みて愛(を)し苦(にが)しとも苦し/恩田英明

短歌研究2023年5+6月号より

ヒキオコシという薬草なんだねえ。
北海道は南西部になってた。見たことあるようなないような?
セージみたいなかわいらしい花。そのまま引き起こしと書く。非常に苦いらしいよ。
こうやって調べて改めて読むとめでたしが引き立つなぁ。人生の苦楽、みたいな。大袈裟かな。

2023/07/06

切花をながく経させて或る夜はくるしみのさまとなりたるに遭ふ/小原奈実

 切花をながく経させて或る夜はくるしみのさまとなりたるに遭ふ/小原奈実

短歌研究2023年5+6月号より

切花って意外と長持ち。
いつしか風景となって、見えてるはずなのに見えなくなる。
或る夜は自分も疲れていたのかな。
はっと目に入る。この前まで元気だったのに。
その姿は自分自身と重なるところもあったのかな。
寿命だったかもしれないけど少し苦しくなる。

2023/07/05

わが部屋に窓ひとつありカーテンを開けば硝子 あしたの光/小畑庸子

 わが部屋に窓ひとつありカーテンを開けば硝子 あしたの光/小畑庸子

短歌研究2023年5+6月号より

朝が始まりであるならば、朝(あした)は確かに未来かも。
ガラス一枚隔てた先に広がる世界。
何だろう、届きそうで届かないもどかしさ?閉塞感?
一字空けての結句。希望や始まりという明るさだけじゃない。
変わらずに巡る朝の光でもあるかなぁ。硝子が印象的。

2023/07/04

真実は感じ取るしかないなんて言う時なにをあきらめている/小野田光

 真実は感じ取るしかないなんて言う時なにをあきらめている/小野田光

短歌研究2023年5+6月号より

自問自答でありながら、怒り、かなあ。人の心の内は分からない。
目に見える真実。感じ取ることは受け入れることなのかな。
小さくすり減ってゆく心。自分自身を許せないでいるんだろうか。
日々、何かをあきらめながら生きてると思う。私が責められてるみたいだ。


2023/07/03

窓ガラスの割れる音などしてないが何かが壊れたような気のする/小塩卓哉

 窓ガラスの割れる音などしてないが何かが壊れたような気のする/小塩卓哉

短歌研究2023年5+6月号より

気がする、じゃなく、気のする、なのが、そのあとに続く言葉を思うなぁ。
心の内。言われてみると、割れる音、しかも窓がラス、というのが外からのカという感じがする。
でも何かが、だから窓ガラスでもないのか。何もかもが曖昧だ。
だんだん、どんどん?不安になってくる。

2023/07/02

としちがうひととすごせばそのひとのとしのたかさをときおりおもい/長屋琴璃

 としちがうひととすごせばそのひとのとしのたかさをときおりおもい/長屋琴璃

短歌研究2023年5+6月号より

連作全てひらがな。その一首目。恋人かなと思ったけど、 そうとも限らないかな。
「と」のリズムが良くて、としのたかさとリンクする。微妙なかみ合わなさと、新鮮な発見と。
ときおりおもい、にそういう違和感?を納得させてる気がする。何となく後ろ向き。

2023/07/01

雪解けの水音ばかり気になつて君の話についてゆけない/小佐野彈

 雪解けの水音ばかり気になつて君の話についてゆけない/小佐野彈

短歌研究2023年5+6月号より

耳障り、というよりはそわそわ?君の話が二の次になってる感じ。
雪解けのスピードと話のスピード。追いつきたいというよりは巻き戻したいのかなぁ。
春を待つ、といいう感じではない。水音ばかり、がいいよねえ。
君の姿がかすんでゆくような。置いていかれそう。