2025/12/31

[今日の短歌/加藤治郎]だからもしどこにもどれば こんなにも氷をとおりぬけた月光

 だからもしどこにもどれば こんなにも氷をとおりぬけた月光/加藤治郎

短歌タイムカプセルより

何だか怖いな。上の句と下の句の落差というか。ちょっと違うな。
薄氷と気付いていながら言い訳を重ねてるような。書けば書くほど
何か違うとずれていく…。一字空けは、上の句の言葉が
とおりぬけたからか。とおりぬけなければ、
月光は何を残したのだろう。冷たくて痛い。


2025/12/30

[今日の短歌/春日井建]早朝ののみどをくだる春の水つめたし今日も健やかにあれ

 早朝ののみどをくだる春の水つめたし今日も健やかにあれ/春日井建

短歌タイムカプセルより

春の水は雪解け水を思わせる。そのイメージで、早朝のまぶしさや
清らかな水のつめたさが鮮やかになる。「のみどをくだる」から
「健やかにあれ」の水の流れが、自分事から外に向かっていくような、
自分だけの祈りではないような、朝の光の透明さがどこか物悲しい。


2025/12/27

[今日の短歌/香川ヒサ]闇が濃くなりゆくばかり眠らむとする者は部屋を暗くするから

 闇が濃くなりゆくばかり眠らむとする者は部屋を暗くするから/香川ヒサ

短歌タイムカプセルより

眠れない自分と、寝ようとしてる家人、と思ったけど
違う気がする…。何だろう、自分だけが暗く闇にのみこまれそうな
怖さがあるよね。「眠らむとする者」は、もしかして
死にゆく人のことだろうか。それならば、闇が濃くなることも、
部屋を暗くするのも分かる気がする。


2025/12/26

[今日の短歌/小野茂樹]感動を暗算し終へて風が吹くぼくを出てきみにきみを出てぼくに

 感動を暗算し終へて風が吹くぼくを出てきみにきみを出てぼくに/小野茂樹

短歌タイムカプセルより

分かち合うってこういうことを言うんだろうね。
時が止まったような、暗算し終えるまでの時間。巡るような
風の流れ。結句で戻ってくる風は、もうぼくのではなく、
きみの感動を含んでいる。それが嬉しい。
嫌な見方をすれば、それを計算してた?きっと風は計算違い。


2025/12/25

紅梅は濃く薫りゐて白梅の標本木のしづかなりける/真中朋久

 紅梅は濃く薫りゐて白梅の標本木のしづかなりける/真中朋久

現代の歌人140より

紅梅のほうが早く咲くんだねえ。そして標本木は白梅ということも
初めて知った。色々調べると「色は紅梅、香りは白梅」らしい。
改めてこの歌を読むと、紅梅の薫りが色となって浮き立ってくるし、
これから咲く日梅の意りがしづかに漂ってくる。
わぁ、素敵な歌だなぁ。


[今日の短歌/奥村晃作]少年が引き連れて冬の夜の空の星を見に行く家族四人で

 少年が引き連れて冬の夜の空の星を見に行く家族四人で/奥村晃作

短歌タイムカプセルより

日々の出来事が短歌になるのって素敵。そして私は
ぼんやり生きてるなと反省する。日記とは違う思い出になるなと思う。
ところでこの少年に息子さんでいいのかな。書き写しながら、
ふと家族ではないかも?と思ったり。
少年という響きが良いのかな。夜の道がぱっと明るくなる。


2025/12/24

[今日の短歌/荻原裕幸]十二色のいろえんぴつしかないぼくに五十五色のゆふぐれが来る

 十二色のいろえんぴつしかないぼくに五十五色のゆふぐれが来る/荻原裕幸


短歌タイムカプセルより

十二色あれば、表現できない色はないという。それでも
たくさんの色があれば幅が広がるのではないかと思ってしまう。
そんな五十五色。明確な色があるのに、自分ではうまく作れない。
すぐに取り出せる一本があったとして、
イメージ通りとは限らないと思うのは負け惜しみだろうか。





2025/12/23

[今日の短歌/岡野大嗣]ともだちはみんな雑巾ぼくだけが父の肌着で窓を拭いてる

 ともだちはみんな雑巾ぼくだけが父の肌着で窓を拭いてる/岡野大嗣

短歌タイムカプセルより

昭和のおばさんなので、雑巾はそういうものだろうと思うけど、
子供心には厳しいよねぇ。案外自分以外にも以たような子は
いたと思うけどなぁ。今なら雑巾をわざわざ縫ったりしないのかな。
今気付いたけど、まさか本当に肌着のまま持って行ってる?
さすがにそれはないよね?





2025/12/22

[今日の短歌/岡崎裕美子]鳴らぬもの集めてまわる男いてそのトラックに我も乗りたし

 鳴らぬもの集めてまわる男いてそのトラックに我も乗りたし/岡崎裕美子

短歌タイムカプセルより

廃品回収のトラックかな、自分も回収されたいのかな、と思ったけど、
一緒に集めてまわる方かもしれない。何となく、鳴らぬものが
ならず者に見えてきたり、普段乗る機会のないトラックで
知らない遠くへ行ってしまいたいのかと思ったり。
この人の歌はいつもザワザワする。




2025/12/21

[今日の短歌/岡井隆]天に向き直立をするぼくの樹よお休みなさいな 夜が来てゐる

 天に向き直立をするぼくの樹よお休みなさいな 夜が来てゐる/岡井隆

短歌タイムカプセルより

まっすぐな人柄を思うよ。お休みなさいなに柔らかな
優しさを感じられるのが良い。「な」を取れば、定形で収まるけど
そうすると結句がきつく感じる。急かされてるというか。
「な」がクッションになって、安心感が出て夜を穏やかに
迎えられそうな気がするんだ。





2025/12/20

[今日の短歌/大森静佳]かろうじてそれはおまえのことばだが樹間を鳥の裸身が揚がる

 かろうじてそれはおまえのことばだが樹間を鳥の裸身が揚がる/大森静佳

短歌タイムカプセルより

上の句にどきりとする。私はいつだって私のことばが本当に
自分の内から出てるのか、聞こえの良いことばを
並べてるだけじゃないかとことばに確信が持てない。
下の句の鳥は、本当に鳥だろうか。裸身とはどういうことだろう。
樹間に揚がるそれは、幻のようにどこかおぼろげだ。




2025/12/19

[今日の短歌/大松達知]支援物資のなかに棺のあることを読みてたちまち一駅過ぎつ

 支援物資のなかに棺のあることを読みてたちまち一駅過ぎつ/大松達知

短歌タイムカプセルより

そんなものを送りたいわけじゃないと一瞬思ったあと、
そうしないと生きてる人の心が救われないのだと気付いて、
自分の浅はかさ、偽善を恥じた。釘付けになる内容の一文。
周りが見えなくなるほどの没入感。息がつまるというか。
たちまちだけど、長い長い時間と思う。







2025/12/18

[今日の短歌/大西民子]亡き人のショールをかけて街行くにかなしみはふと背にやはらかし

 亡き人のショールをかけて街行くにかなしみはふと背にやはらかし/大西民子

短歌タイムカプセルより

その人との思い出、というよりは、温もりという感じがする。
形見なんだろうけど、日常使いしていて、それを忘れている。
あ、違うな。一緒に出掛けるような気持ちか。
「背にやはらかし」。まさに肩を抱いて包み込んでくれるような
ショールの温もり。かなしみ以外を思い出す





2025/12/17

[今日の短歌/大辻隆弘]蜂蜜のよどみのやうな残光といへりそれさへつかのまにして

 蜂蜜のよどみのやうな残光といへりそれさへつかのまにして/大辻隆弘

短歌タイムカプセルより

何だろう。ちょっとした違和感だろうか。残光だから、
つかのまなのは当然ではないのか。ざらつくようなよどみも、
過ぎてしまえば何事もなかったかのように消えて忘れるだろうか。
「それさへ」ということは、他にも?気付かぬふりをして
やり過ごすような後ろめたさを感じる。





2025/12/15

[今日の短歌/大塚寅彦]生没年不詳の人のごとく坐しパン食みてをり海をながめて

 生没年不詳の人のごとく坐しパン食みてをり海をながめて/大塚寅彦

短歌タイムカプセルより

生没年不詳の人って謎だなぁと思ったけど、
見ず知らずの他人ってそんな感じかもなと考えると、
誰にも見つからず、世間からも離れてしまったかのような孤独感と
捉えることは無理があるだろうか。海というのも孤独を増す。
どこから来てどこへ行くのか。生きる為の「パン食みてをり」なんだろう。






2025/12/14

[今日の短歌/大滝和子]さみどりのペディキュアをもて飾りつつ足というは異郷のはじめ

 さみどりのペディキュアをもて飾りつつ足というは異郷のはじめ/大滝和子

短歌タイムカプセルより

ああ、こういう歌を読むたびに、私はちゃんと
自分の足で立っていないのだなと感じてしまう。
ペディキュアを塗るその足が、ひどく眩しいのだ。
さみどりが柔らかな草を思わせて、その足で地を踏んで、
どこへでも行ける。踏み出せば、そこが異郷のはじめだと、
都合良く解釈しても良いだろうか。





2025/12/13

[今日の短歌/大口玲子]わが一生ひとよいつどこで鬼と逢へるらむその日のために化粧を濃くす

 わが一生(ひとよ)いつどこで鬼と逢へるらむその日のために化粧を濃くす/大口玲子

短歌タイムカプセルより

できれば鬼には逢いたくないなぁ。素顔を、本心を
見せないための化粧か、それとも、見つけてもらうための
濃い化粧なのか。「逢へるらむ」に漂う仄かな期待。
「化粧を濃くす」に感じられる畏怖の念。昔から人間が一番恐ろしいと言う。
その化粧を見る私が鬼なのかもしれない。





2025/12/12

[今日の短歌/江戸雪]うしなった時間のなかにたちどまり花びらながれてきたらまたゆく

 うしなった時間のなかにたちどまり花びらながれてきたらまたゆく/江戸雪

短歌タイムカプセルより

こうやって立ち直っていくんだな。うしなった時間は戻らなくて、
それでもあの時こうだったら、こうしてれば、と思うこともある。
そうやってたちどまり、気持ちと折合いがついたら
花びらがながれてくるのでしょう。「また」という繰り返し。
そうやって日々を歩いてゆく。







2025/12/11

[今日の短歌/梅内美華子]銀髪の婦人のやうな冬の日が部屋に坐しをりレースをまとひ

 銀髪の婦人のやうな冬の日が部屋に坐しをりレースをまとひ/梅内美華子

短歌タイムカプセルより

しんしんと降る雪の日だなぁと思ったけど、部屋に、なので、
冬の細い日差しが木洩れ日のように部屋を照らしているのかも。
柔らかな影がレースのように見えてくる。そこに人は居ないのに、
椅子に座ってレース編みをする、銀髪の婦人の姿が浮かんでくるのだ。




2025/12/10

[今日の短歌/内山晶太]頭よりシーツかぶりて思えりきほたるぶくろのなかの暮らしを

 頭よりシーツかぶりて思えりきほたるぶくろのなかの暮らしを/内山晶太

短歌タイムカプセルより

メルヘンの世界だなぁと思うけれども、そういうことを
想像する時間は、案外心の安定のために必要なんじゃないか。
現実逃避と言われればそれまでかもしれないけど。
毛布や布団じゃなく、シーツなのがいいよね。
ほんのり透けるような、外との暮らしを繋いでもいる。





2025/12/09

[今日の短歌/伊藤一彦]三割がPTSDといふ帰還兵 残る七割の「正常」思ふ

 三割がPTSDといふ帰還兵 残る七割の「正常」思ふ/伊藤一彦

短歌タイムカプセルより

何をもって「正常」と言えるのだろう。たとえ正常だとしても、
きっと以前と同じようには戻れない。何事もなかったように
過ごせるものなんだろうか。そう思うこと自体が間違っているのかな。
誰しもが、見えない思いを抱えて何でもない顔でやりすごしてゆく。





2025/12/08

[今日の短歌/井辻朱美]映すものの意味もわからずいつの日か蒸発してゆくすべての水たまり

 映すものの意味もわからずいつの日か蒸発してゆくすべての水たまり/井辻朱美

短歌タイムカプセルより

自分の生き方を言われたみたいでドキッとする。
何も、誰も気にせず通り過ぎて蒸発してゆく水たまり。
でも一部しか映らないその風景に意味なんてあるんだろうか。
意味がわかったところで、何ができるというのだろう。
そうやって考える事を放棄して蒸発してゆくのかな。






2025/12/07

[今日の短歌/伊舎堂仁](屋上の)(鍵)(ください)の手話は(鍵)のとき一瞬怖い顔になる

 (屋上の)(鍵)(ください)の手話は(鍵)のとき一瞬怖い顔になる/伊舎堂仁


短歌タイムカプセルより

「かぎ」の「ぎ」でくいしばる感じになるからかな?と思ったけど、
生まれつきのろう者だとあまり口の動きはないらしい。
となると、その人の癖なのかなと。その一瞬に目が行く、
見のがさないのも良く見ていて凄い。手話という言語の雰囲気が
柔らかくこちらに伝わってくる。





2025/12/06

[今日の短歌/石川美南]丁寧に折り畳まれてゐる海を記憶に頼りながら広げよ

 丁寧に折り畳まれてゐる海を記憶に頼りながら広げよ/石川美南

短歌タイムカプセルより

大切な思い出なんだなと思いながら読んだ。
そのまま海の記憶かと思ったけど、そうとは限らないか。
広げる様は波のようだし、そこから思いがけず呼び戻される記憶も
あるのではないか。折り畳まれた海が、大海原になってゆく。
それは過去と向き合うことでもあるのだろうか。





2025/12/05

[今日の短歌/池田はるみ]風切つて歩いてゐるがガニ股になつてゐるのも知つてゐるわい

 風切つて歩いてゐるがガニ股になつてゐるのも知つてゐるわい/池田はるみ

短歌タイムカプセルより

「風切って」には喜怒哀楽どれでも当てはまるなと。
少し周りが見えないというか、あえて遮断してるというか。
かっこ悪い自分を分かってもいる。他人からどう見られるか
なんてことを考えて、自分の気持ちを後回しにはしない。
無意識に出ちゃう直したい癖でもあるのかなぁ。






2025/12/04

[今日の短歌/飯田有子]のしかかる腕がつぎつぎ現れて永遠に馬跳びの馬でいる夢

 のしかかる腕がつぎつぎ現れて永遠に馬跳びの馬でいる夢/飯田有子

短歌タイムカプセルより

「延々に」ではなく「永遠に」なんだなと思うと、
とたんに目の前が暗くなって、悪夢だと感じる。
ずっと抜け出せない馬跳びの馬。うつむいているので誰か分からない。
背中に感じる腕は、本当に腕だろうか。反発心といらだちが
自分にも他者にも向けられている。





2025/12/03

[今日の短歌/安藤美保]メリノウールほどの手触り午後二時をそろりと生きて窓の内にいる

 メリノウールほどの手触り午後二時をそろりと生きて窓の内にいる/安藤美保

短歌タイムカプセルより

メリノウールのもちもちふわふわは心が安まるよ。
何か事情があって外に出られないのかな。社会との隔たりを感じた。
いや、そこまでではなく、皆が働いてる時間に家に居ることの
優越感かもしれない。そろりと生きて、という、
息を潜めるような静かな時間が手触りになる。






2025/12/02

[今日の短歌/永田紅]どこへ向けて歩いていてもああ君は引き返そうとは言わなかったね

 どこへ向けて歩いていてもああ君は引き返そうとは言わなかったね/永田紅

現代の歌人140より

もう追い付けない人なんだろうね。どんどん先へ進んで
遠ざかっていく人。どこへ「向かって」ではなく「向けて」なんだな。
引き返そうと言ってほしかった。試すように向けた道を
君は分かっていたのかも。言わなかったのは心が離れていたからか。
ああ、に全てがつまってる。




2025/12/01

[今日の短歌/斉藤斎藤]泣いてるとなんだかよくわからないけどいっしょに泣いてくれたこいびと

 泣いてるとなんだかよくわからないけどいっしょに泣いてくれたこいびと/斉藤斎藤

現代の歌人140より

良いこいびとじゃない、と思ったけど泣いてる理由が
実は花粉症で…とか、感情とは関係ないことだったのかしら。
「なんだかよくわからないけど」がだんだん自分にもかかってきて、
泣いてることだけがそこに浮いてる感じ。
「泣」以外ひらがななのも、ふわふわして混乱を増す。





2025/11/30

[今日の短歌/横山未来子]咲き重る桜のなかに動く陽をかなしみの眼を通して見をり

 咲き重る桜のなかに動く陽をかなしみの眼を通して見をり/横山未来子

現代の歌人140より

特に桜に思い入れがなくても、
何か特別な感情が込められていると思ってしまうのは何故だろう。
この歌の「かなしみ」が、まるで自分の事のように桜の中に
見出してしまう。こういう動く陽を、咲き重る桜を、
確かに知っている。フィルターを通して変わる景色。
明日は違う景色かもしれない。




2025/11/29

[今日の短歌/大松達知]わが足の裏を揉みつつ妻言へり 授業のない日は足が柔らかい

 わが足の裏を揉みつつ妻言へり 授業のない日は足が柔らかい/大松達知

現代の歌人140より

同じ疲れでも、やはり違いが出るんだろうか。
ハンドエステをしてもらった時に「緊張してますね」
「肩凝り辛くないですか?」と聞かれ驚いたのを思い出した。
身近に見てる人ならなおさら良く気付くんだろうね。
夫婦という関係性もあるだろうけど、お互いに驚いてる感じがして素敵だ。





2025/11/28

[今日の短歌/松村正直]ひとつまみの髪をみずから切りし子は叱られておりゴミ箱の前で

 ひとつまみの髪をみずから切りし子は叱られておりゴミ箱の前で/松村正直

現代の歌人140より

うちの子は額の生え際から切って、ショックが大きすぎて
叱ったかどうかの記憶がない。でも怪我しなくて良かったよね。
安心からの反動で叱っちゃう事もあるよね。この歌に第三者目線。
それとも俯瞰して見てる?ゴミ箱の前で切って偉いな、とか、
そりゃあ叱られるよね、とか。




2025/11/27

[今日の短歌/梅内美華子]「それは灰」と誰かが言へば骨ひろふ箸の先にて祖母くづれたり

 「それは灰」と誰かが言へば骨ひろふ箸の先にて祖母くづれたり/梅内美華子

現代の歌人140より

初句と結句が繋がって、祖母の死が手触りとなって目の前に置かれる。
それは本当に灰だろうか、今、箸の先でくずれ落ちたそれは、
灰と区別がつくだろうか。ああ、 本当に死んでしまったんだな、
と実感する。誰かの一言で場の空気が動いて、この世とあの世を分ける。




2025/11/26

[今日の短歌/大口玲子]中年の体はもうひとに預けまい夕山桜濃き影を曳く

 中年の体はもうひとに預けまい夕山桜濃き影を曳く/大口玲子

現代の歌人140より

「もう」が気になるなぁ。今までの自分と、これからの自分。
中年の、というところに今までの反省を感じる。
それでも下の句に心の揺れというか、逡巡するような影に思えたんだ。
夕山桜、多肉植物だった…。風景が変わってくるな。
水を蓄え、自力で生きていく、かな。




2025/11/25

[今日の短歌/吉川宏志]縺れあうコスモス畑で子を追えりいつまで若い父なのだろう

縺れあうコスモス畑で子を追えりいつまで若い父なのだろう/吉川宏志

現代の歌人140より

私も若い母だったので、若いねと言われると、勝手に
嫌味に取って必死だったな。この父はそこまでひねくれては
ないだろうけど。子が成長すればいつしか言われなくなる。
でも子にとっては若い父のままだったりするだろうか。
しまった。書いてるうちに混乱してきた…。









2025/11/24

[今日の短歌/江戸雪]傷つけたことよりずっとゆるされていたことつらく椿は立てり

 傷つけたことよりずっとゆるされていたことつらく椿は立てり/江戸雪

現代の歌人140より

傷つけたという自覚はあったのだろうか。ゆるされていたのは
許容ではなく、諦めではなかったか。全てが今さらと
空回りしてるような、その気付きで椿の花が落ちてしまうような、
いや、それでも立たねばならぬつらさか。その傷が
自分に返ってきて、自分はそれをゆるせるだろうか。




2025/11/23

[今日の短歌/前田康子]草の上で踊ってみたいと思うとき遠いところへ腕は伸びたり

 草の上で踊ってみたいと思うとき遠いところへ腕は伸びたり/前田康子

現代の歌人140より

伸ばした手は空を切るような、届かない空想の世界のような、
現実の体がここにある虚しさというか淋しさというか。
きっと草の上で踊らないだろう。でも遠いところで、
誰でもない自分になりたい。現実逃避とは違う、
ボタンの掛け違いのような虚しさを感じたんだ。




2025/11/22

[今日の短歌/辰巳泰子]このさきの桜並木を浴びる日にどうか孤独でありませんやうに

 このさきの桜並木を浴びる日にどうか孤独でありませんやうに/辰巳泰子

現代の歌人140より

寂しい歌だなぁ。「桜並木を浴びる」って、不思議な言い回しだ。
書きながら「このさき」は未来ではなく、場所のことだろうか、
とか、その祈り、願いは自分のことではなく、他者へのものだろうかとか、
色んなことが浮かんできた。まだ辿り着かず、でもいつか行く場所?





2025/11/21

[今日の短歌/紀野恵]定形的内容を蔵せる定形外水色封筒積めば崩れつ

 定形的内容を蔵せる定形外水色封筒積めば崩れつ/紀野恵

現代の歌人140より

書類か何かかな。「積めば」で同じ封筒を思い浮かべたけど、
違うね。一時保管的に置いてある場所に積んで崩れた
ということかな。本当は開かなきゃいけないけど、内容は把握してる、
崩れてしまったことで、開かざるを得ないという感じだろうか。
ちょっとした後ろめたさ?





2025/11/20

[今日の短歌/真中朋久]濃き眉と髭を持つゆゑいづこよりの留学生かとわれのことを問ふ

 濃き眉と髭を持つゆゑいづこよりの留学生かとわれのことを問ふ/真中朋久

現代の歌人140より

今なら偏見や差別と言われるんだろうか。そんなことを考える
私の方が差別や偏見にまみれてるんだろうか。この歌は
事実を述べただけで、双方の感情は書かれていない。
勝手にお互いの気持ちを想像してあれこれ口を出すから
行き違いが起こるのかな。訳の分からん感想になってしまった…。




2025/11/19

[今日の短歌/東直子]遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた

 遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた/東直子

現代の歌人140より

最後で我に返る感じが怖い。思い出のような、幻のような、
自分自身も現実に立っていないようなおぼつかなさ。
この怖さは何だろう。さらわれてしまいそう。いや、さらわれたいの?
最初から「さがしてた」のは特定の誰かじゃなかった?
どなた、は自分自身でもある?






2025/11/18

[今日の短歌/俵万智]子の声で神の言葉を聞く夕ベ「すべてのことに感謝しなさい」

 子の声で神の言葉を聞く夕ベ「すべてのことに感謝しなさい」/俵万智

現代の歌人140より

子がキリスト教の幼稚園に通っていたので、その時のことを
思い出した。舌足らずな声で言うその言葉が、かわいらしくも
胸に響くのは何故だろう。タベ、なのがいいなぁ。何となく、
天使が舞い降りてくるイメージ。子の声を聞きながら、
感謝してただろうかと今日を振り返る。




2025/11/17

[今日の短歌/荻原裕幸]何か見えぬものが炎上してゐるかサラダに紅い野菜がふえる

 何か見えぬものが炎上してゐるかサラダに紅い野菜がふえる/荻原裕幸

現代の歌人140より

昨日に引き続き、今読むから景色が違って見えるんだろうなと
思う一首。この歌が詠まれた頃は、ネット炎上という言葉は
一般的だったろうか。サラダという小さな枠で見れば、
身の回りの人間関係を思うけど、ネット炎上と見れば、
世の中の不穏な空気を感じ取ってるように見える。





2025/11/16

[今日の短歌/穂村弘]包丁を抱いてしずかにふるえつつ国勢調査に居留守を使う

 包丁を抱いてしずかにふるえつつ国勢調査に居留守を使う/穂村弘

現代の歌人140より

何か…今年の国勢調査は、こういう人もいたかもね、くらいに
笑えない世の中になってる感がある。
以前は居留守を使うことに罪悪感があったけど、
最近は出ないのも選択の一つになってる。国勢調査というところに、
自身の存在意義と社会との繋がりを思うのは考えすぎかしら。





2025/11/15

[今日の短歌/林和清]唐突に空中へ出てとまどへる水あり瀧と呼ばれるまでの

 唐突に空中へ出てとまどへる水あり瀧と呼ばれるまでの/林和清

現代の歌人140より

落ちるまでは水路で、そんなつもりはなかった?
でも下の句はそんな水の流れさえもなかった気がするな。
まさに「唐突に」という感じ。放り出されたような。
いつか瀧と呼ばれることを知ってはいたんだよね。何だろうな。
心構えの話かな。「とまどへる」にざわざわする。




2025/11/14

[今日の短歌/大塚寅彦]夜見よみがへり春日井建は歌いにき繊月わづかひらくまなざし

夜見よみがへり春日井建は歌いにき繊月わづかひらくまなざし/大塚寅彦

現代の歌人140より

私は短歌を真面目に読むようになったのが最近で、
知識がとても薄くて、正直春日井建の歌もピンと来ない。
でも歌になる彼は繊細でしなやかで、とても魅力的だ。
私の知らない彼がそこに居て、もう一度ちゃんと読もうと思う。
私でも、そのまなざしがいつか分かるといいな。





2025/11/13

[今日の短歌/大辻隆弘]つまりつらい旅の終りだ 西日さす部屋にほのかに浮ぶ夕椅子

 つまりつらい旅の終りだ 西日さす部屋にほのかに浮ぶ夕椅子/大辻隆弘

現代の歌人140より

何かを為し遂げた瞬間だろうか。「つらい旅」が大きな目標を
思わせる。つまり、の前にどんなドラマがあったのだろうと
想像が膨らむ。下の句もいいよね。終りに向かっていく西日と、
旅を共にしたのであろう椅子。ああでもほのかに、なので
回想なのかな。安堵と喪失感。




2025/11/12

[今日の短歌/小塩卓哉]秋の日にもう冬の日をみつけているわれと道辺に揺れるすすき穂

 秋の日にもう冬の日をみつけているわれと道辺に揺れるすすき穂/小塩卓哉

現代の歌人140より

今年は特に、秋があっという間に過ぎてもう冬の装いだけど。
私は雪が積もるまでは秋と思いたい。でもそれは
「もう冬の日をみつけている」ことになるのかな。
でもこの歌はまだ冬が遠いよね。ふと感じる冬の空気。
すすき穂が秋から冬への橋渡しをしてるかのよう。




2025/11/11

[今日の短歌/谷岡亜紀]停電の大通りゆく人の群れ 風に吹かれて雨にぬれても

 停電の大通りゆく人の群れ 風に吹かれて雨にぬれても/谷岡亜紀

現代の歌人140より

メロディーが聞こえてきそうな、歌詞みたいな一首だ。
どこかドラマチックに見えるけど、そんな綺麗事ではないだろう。
帰る場所を思わせるのは、大通りだからかな。
 言いさしで終わるのでそう感じるのかな。停電の暗さ、心細さが、
人の群れで少し和らぐ。でもやっぱりどこかドラマチックだ。