2025/11/30

[今日の短歌/横山未来子]咲き重る桜のなかに動く陽をかなしみの眼を通して見をり

 咲き重る桜のなかに動く陽をかなしみの眼を通して見をり/横山未来子

現代の歌人140より

特に桜に思い入れがなくても、
何か特別な感情が込められていると思ってしまうのは何故だろう。
この歌の「かなしみ」が、まるで自分の事のように桜の中に
見出してしまう。こういう動く陽を、咲き重る桜を、
確かに知っている。フィルターを通して変わる景色。
明日は違う景色かもしれない。




2025/11/29

[今日の短歌/大松達知]わが足の裏を揉みつつ妻言へり 授業のない日は足が柔らかい

 わが足の裏を揉みつつ妻言へり 授業のない日は足が柔らかい/大松達知

現代の歌人140より

同じ疲れでも、やはり違いが出るんだろうか。
ハンドエステをしてもらった時に「緊張してますね」
「肩凝り辛くないですか?」と聞かれ驚いたのを思い出した。
身近に見てる人ならなおさら良く気付くんだろうね。
夫婦という関係性もあるだろうけど、お互いに驚いてる感じがして素敵だ。





2025/11/28

[今日の短歌/松村正直]ひとつまみの髪をみずから切りし子は叱られておりゴミ箱の前で

 ひとつまみの髪をみずから切りし子は叱られておりゴミ箱の前で/松村正直

現代の歌人140より

うちの子は額の生え際から切って、ショックが大きすぎて
叱ったかどうかの記憶がない。でも怪我しなくて良かったよね。
安心からの反動で叱っちゃう事もあるよね。この歌に第三者目線。
それとも俯瞰して見てる?ゴミ箱の前で切って偉いな、とか、
そりゃあ叱られるよね、とか。




2025/11/27

[今日の短歌/梅内美華子]「それは灰」と誰かが言へば骨ひろふ箸の先にて祖母くづれたり

 「それは灰」と誰かが言へば骨ひろふ箸の先にて祖母くづれたり/梅内美華子

現代の歌人140より

初句と結句が繋がって、祖母の死が手触りとなって目の前に置かれる。
それは本当に灰だろうか、今、箸の先でくずれ落ちたそれは、
灰と区別がつくだろうか。ああ、 本当に死んでしまったんだな、
と実感する。誰かの一言で場の空気が動いて、この世とあの世を分ける。




2025/11/26

[今日の短歌/大口玲子]中年の体はもうひとに預けまい夕山桜濃き影を曳く

 中年の体はもうひとに預けまい夕山桜濃き影を曳く/大口玲子

現代の歌人140より

「もう」が気になるなぁ。今までの自分と、これからの自分。
中年の、というところに今までの反省を感じる。
それでも下の句に心の揺れというか、逡巡するような影に思えたんだ。
夕山桜、多肉植物だった…。風景が変わってくるな。
水を蓄え、自力で生きていく、かな。




2025/11/25

[今日の短歌/吉川宏志]縺れあうコスモス畑で子を追えりいつまで若い父なのだろう

縺れあうコスモス畑で子を追えりいつまで若い父なのだろう/吉川宏志

現代の歌人140より

私も若い母だったので、若いねと言われると、勝手に
嫌味に取って必死だったな。この父はそこまでひねくれては
ないだろうけど。子が成長すればいつしか言われなくなる。
でも子にとっては若い父のままだったりするだろうか。
しまった。書いてるうちに混乱してきた…。









2025/11/24

[今日の短歌/江戸雪]傷つけたことよりずっとゆるされていたことつらく椿は立てり

 傷つけたことよりずっとゆるされていたことつらく椿は立てり/江戸雪

現代の歌人140より

傷つけたという自覚はあったのだろうか。ゆるされていたのは
許容ではなく、諦めではなかったか。全てが今さらと
空回りしてるような、その気付きで椿の花が落ちてしまうような、
いや、それでも立たねばならぬつらさか。その傷が
自分に返ってきて、自分はそれをゆるせるだろうか。




2025/11/23

[今日の短歌/前田康子]草の上で踊ってみたいと思うとき遠いところへ腕は伸びたり

 草の上で踊ってみたいと思うとき遠いところへ腕は伸びたり/前田康子

現代の歌人140より

伸ばした手は空を切るような、届かない空想の世界のような、
現実の体がここにある虚しさというか淋しさというか。
きっと草の上で踊らないだろう。でも遠いところで、
誰でもない自分になりたい。現実逃避とは違う、
ボタンの掛け違いのような虚しさを感じたんだ。




2025/11/22

[今日の短歌/辰巳泰子]このさきの桜並木を浴びる日にどうか孤独でありませんやうに

 このさきの桜並木を浴びる日にどうか孤独でありませんやうに/辰巳泰子

現代の歌人140より

寂しい歌だなぁ。「桜並木を浴びる」って、不思議な言い回しだ。
書きながら「このさき」は未来ではなく、場所のことだろうか、
とか、その祈り、願いは自分のことではなく、他者へのものだろうかとか、
色んなことが浮かんできた。まだ辿り着かず、でもいつか行く場所?





2025/11/21

[今日の短歌/紀野恵]定形的内容を蔵せる定形外水色封筒積めば崩れつ

 定形的内容を蔵せる定形外水色封筒積めば崩れつ/紀野恵

現代の歌人140より

書類か何かかな。「積めば」で同じ封筒を思い浮かべたけど、
違うね。一時保管的に置いてある場所に積んで崩れた
ということかな。本当は開かなきゃいけないけど、内容は把握してる、
崩れてしまったことで、開かざるを得ないという感じだろうか。
ちょっとした後ろめたさ?





2025/11/20

[今日の短歌/真中朋久]濃き眉と髭を持つゆゑいづこよりの留学生かとわれのことを問ふ

 濃き眉と髭を持つゆゑいづこよりの留学生かとわれのことを問ふ/真中朋久

現代の歌人140より

今なら偏見や差別と言われるんだろうか。そんなことを考える
私の方が差別や偏見にまみれてるんだろうか。この歌は
事実を述べただけで、双方の感情は書かれていない。
勝手にお互いの気持ちを想像してあれこれ口を出すから
行き違いが起こるのかな。訳の分からん感想になってしまった…。




2025/11/19

[今日の短歌/東直子]遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた

 遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた/東直子

現代の歌人140より

最後で我に返る感じが怖い。思い出のような、幻のような、
自分自身も現実に立っていないようなおぼつかなさ。
この怖さは何だろう。さらわれてしまいそう。いや、さらわれたいの?
最初から「さがしてた」のは特定の誰かじゃなかった?
どなた、は自分自身でもある?






2025/11/18

[今日の短歌/俵万智]子の声で神の言葉を聞く夕ベ「すべてのことに感謝しなさい」

 子の声で神の言葉を聞く夕ベ「すべてのことに感謝しなさい」/俵万智

現代の歌人140より

子がキリスト教の幼稚園に通っていたので、その時のことを
思い出した。舌足らずな声で言うその言葉が、かわいらしくも
胸に響くのは何故だろう。タベ、なのがいいなぁ。何となく、
天使が舞い降りてくるイメージ。子の声を聞きながら、
感謝してただろうかと今日を振り返る。




2025/11/17

[今日の短歌/荻原裕幸]何か見えぬものが炎上してゐるかサラダに紅い野菜がふえる

 何か見えぬものが炎上してゐるかサラダに紅い野菜がふえる/荻原裕幸

現代の歌人140より

昨日に引き続き、今読むから景色が違って見えるんだろうなと
思う一首。この歌が詠まれた頃は、ネット炎上という言葉は
一般的だったろうか。サラダという小さな枠で見れば、
身の回りの人間関係を思うけど、ネット炎上と見れば、
世の中の不穏な空気を感じ取ってるように見える。





2025/11/16

[今日の短歌/穂村弘]包丁を抱いてしずかにふるえつつ国勢調査に居留守を使う

 包丁を抱いてしずかにふるえつつ国勢調査に居留守を使う/穂村弘

現代の歌人140より

何か…今年の国勢調査は、こういう人もいたかもね、くらいに
笑えない世の中になってる感がある。
以前は居留守を使うことに罪悪感があったけど、
最近は出ないのも選択の一つになってる。国勢調査というところに、
自身の存在意義と社会との繋がりを思うのは考えすぎかしら。





2025/11/15

[今日の短歌/林和清]唐突に空中へ出てとまどへる水あり瀧と呼ばれるまでの

 唐突に空中へ出てとまどへる水あり瀧と呼ばれるまでの/林和清

現代の歌人140より

落ちるまでは水路で、そんなつもりはなかった?
でも下の句はそんな水の流れさえもなかった気がするな。
まさに「唐突に」という感じ。放り出されたような。
いつか瀧と呼ばれることを知ってはいたんだよね。何だろうな。
心構えの話かな。「とまどへる」にざわざわする。




2025/11/14

[今日の短歌/大塚寅彦]夜見よみがへり春日井建は歌いにき繊月わづかひらくまなざし

夜見よみがへり春日井建は歌いにき繊月わづかひらくまなざし/大塚寅彦

現代の歌人140より

私は短歌を真面目に読むようになったのが最近で、
知識がとても薄くて、正直春日井建の歌もピンと来ない。
でも歌になる彼は繊細でしなやかで、とても魅力的だ。
私の知らない彼がそこに居て、もう一度ちゃんと読もうと思う。
私でも、そのまなざしがいつか分かるといいな。





2025/11/13

[今日の短歌/大辻隆弘]つまりつらい旅の終りだ 西日さす部屋にほのかに浮ぶ夕椅子

 つまりつらい旅の終りだ 西日さす部屋にほのかに浮ぶ夕椅子/大辻隆弘

現代の歌人140より

何かを為し遂げた瞬間だろうか。「つらい旅」が大きな目標を
思わせる。つまり、の前にどんなドラマがあったのだろうと
想像が膨らむ。下の句もいいよね。終りに向かっていく西日と、
旅を共にしたのであろう椅子。ああでもほのかに、なので
回想なのかな。安堵と喪失感。




2025/11/12

[今日の短歌/小塩卓哉]秋の日にもう冬の日をみつけているわれと道辺に揺れるすすき穂

 秋の日にもう冬の日をみつけているわれと道辺に揺れるすすき穂/小塩卓哉

現代の歌人140より

今年は特に、秋があっという間に過ぎてもう冬の装いだけど。
私は雪が積もるまでは秋と思いたい。でもそれは
「もう冬の日をみつけている」ことになるのかな。
でもこの歌はまだ冬が遠いよね。ふと感じる冬の空気。
すすき穂が秋から冬への橋渡しをしてるかのよう。




2025/11/11

[今日の短歌/谷岡亜紀]停電の大通りゆく人の群れ 風に吹かれて雨にぬれても

 停電の大通りゆく人の群れ 風に吹かれて雨にぬれても/谷岡亜紀

現代の歌人140より

メロディーが聞こえてきそうな、歌詞みたいな一首だ。
どこかドラマチックに見えるけど、そんな綺麗事ではないだろう。
帰る場所を思わせるのは、大通りだからかな。
 言いさしで終わるのでそう感じるのかな。停電の暗さ、心細さが、
人の群れで少し和らぐ。でもやっぱりどこかドラマチックだ。





2025/11/10

[今日の短歌/加藤治郎]海から風が吹いてこないかどこからかふいてこないかメールを待ってる

 海から風が吹いてこないかどこからかふいてこないかメールを待ってる/加藤治郎

現代の歌人140より

誰かからの便りを待ってる時って、こんな気持ちかもしれないね。
風が吹いたからといって、メールが来るわけでは無いのだけれど。
「吹いて」は二度目はひらがななんだね。海のイメージもあって、
続くひらがなが砂浜のようで、ボトルメールのように届くといいな。




2025/11/09

[今日の短歌/米川千嘉子]三キロを歩いてからだやはらかく言葉滲みいづ 手紙書くべし

 三キロを歩いてからだやはらかく言葉滲みいづ 手紙書くべし/米川千嘉子

現代の歌人140より

ウォーキングって、思考をクリアにすると言うよね。
最初はダルいなぁとか遠いなぁとか思うんだけど、歩いてるうちに
体が軽くなる。色んた事を考えて思って、手紙に行き着くのがいいな。
「滲みいづ」が電話とかではなく、手紙だなぁと思う。
やはらかく、が真ん中にあるのも良い。




2025/11/08

[今日の短歌/川野里子]さくらさくらふはりと降りてあんぱんの臍の窪みを湿らせ咲けり

 さくらさくらふはりと降りてあんぱんの臍の窪みを湿らせ咲けり/川野里子

現代の歌人140より

そういえば、どうしてあんぱんには桜の塩漬けが乗っかってるんだろうね。
この歌の、さくらの形が変わっていくのがいいね。
最後の「咲けり」が生まれ変わり、と言うと大げさだけど、
咲く場所の違いというか。降りて、とか、湿らせ、が
とても柔らかく優しいなと思う。





2025/11/07

[今日の短歌/水原紫苑]筆の闇・舞台の闇の異なるを海やまの恋のごとくなげくも

 筆の闇・舞台の闇の異なるを海やまの恋のごとくなげくも/水原紫苑

現代の歌人140より

原作との違い?でも舞台にも台本があるから違うような気がする。
見るのと読むのとでは印象が変わる。そういう「異なるを」かな。
下の句が凄いな。ただなげいてるわけじゃないのが
恋という一言で伝わってくる。どちらの良さも分かるだけに、
という感じなのかしら。




2025/11/06

[今日の短歌/大滝和子]はてしない宇宙と向かいあいながら空瓶ひとつ窓ぎわに立つ

 はてしない宇宙と向かいあいながら空瓶ひとつ窓ぎわに立つ/大滝和子

現代の歌人140より

向かいあってるのは誰だろう。空瓶がロケットめいて、
はてしなさが少し距離を縮めるような気がしてくる。
空瓶なのがいいよねぇ。中に何でも入れられる。
どうしようもない感情と向かいあったとき、何を拾って、
何を宇宙へ飛ばすのだろう。ふと空を見上げたくなる。




2025/11/05

[今日の短歌/坂井修一]子は蒔けりジャックの種子を われはもう見守りもせぬはつなつの部屋

 子は蒔けりジャックの種子を われはもう見守りもせぬはつなつの部屋/坂井修一

現代の歌人140より

上の句で幼子かと思ったが、そこまで小さくもないかもしれないね。
「もう」がともすれば冷たい感じにも見えるんだけど、むしろ
子の成長を喜んでいるのが伝わってくる。大きく育ってほしい
という思い、願いが親子両方から感じられるのが素敵。
はつなつの柔らかさもいいね。





2025/11/04

[今日の短歌/小島ゆかり]終ります白梅散りて 終ります紅梅散りて いつか終ります

 終ります白梅散りて 終ります紅梅散りて いつか終ります/小島ゆかり

現代の歌人140より

それはそう、なんだけれど。最後にぞわっとする。何だろう。
急に自分に向けて言われたような、薄気味悪さというか
違和感というか。どこかカラッとしてるのに、終りますと
締めることで、先が無いような閉じられたような感じ?
散らないでと願いたくなる。




2025/11/03

[今日の短歌/一ノ関忠人]みどりごは鳥の形態かたちに腕ひろげ飛ぶと見えしがねむりゆくなり

 みどりごは鳥の形態かたちに腕ひろげ飛ぶと見えしがねむりゆくなり/一ノ関忠人

現代の歌人140より

わあ、かわいい!と思わず顔がほころぶ。飛ぶことはないけど、
それはきっと未来への願い。赤ちゃんって希望だなぁと思う。
ねむりゆくなりがとても優しい。かわいいだけで書いちゃったけど、
もう他に何も言うことがないくらい素敵な歌。
赤ちゃんの姿が見えてかわいいね。




2025/11/02

[今日の短歌/中津昌子]怯えずともやがて夜は来る小さな花大きな花の寝息に満ちて

 怯えずともやがて夜は来る小さな花大きな花の寝息に満ちて/中津昌子

現代の歌人140より

朝じゃなくて夜なんだね。その理由が結句で分かる気がする。
花が閉じる、あるいは密やかに咲く静かな時間。 日々忙しく、
余裕がないのかもしれない。ちょっと違うか。どう言えばいいのかな。
日の当たる場所の息苦しさ。疲れてしまう日常とのバランス。
夜が心を鎮める。




2025/11/01

[今日の短歌/久我田鶴子]雪上につづく足跡ためらひのあとものこして倒木を越ゆ

 雪上につづく足跡ためらひのあとものこして倒木を越ゆ/久我田鶴子

現代の歌人140より

白い景色が物語のように広がる。他人の足跡から自分の足跡へ。
ためらひのあと「も」か。力強さだけじゃない。
迷いがないわけじゃない。「足跡」から「倒木を越ゆ」 までの
ひらがなに決意が表れてる気がする。ああ、そういう「も」かな。
こうやって、いろんなものを乗り越えていくんだな。