2024/08/31

月の夜の花の驕りを支へたり土手に老いゆく桜の幹は/安田純生

 月の夜の花の驕りを支へたり土手に老いゆく桜の幹は/安田純生


現代の歌人140より

月の夜の美しさと桜の存在感!驕りを支へたり、が
うまく読めてないけど、さりげない?牽制?
土手が一瞬上手に見えるのも、桜の木の美しさを際立たせてるな、と。
桜の花じゃなくて幹なのが貫禄があって神々しい。
桜の木の周りに咲く花が月明かりに照らされてとても綺麗だ。

2024/08/30

君という過ぎし時間が一むらの青藻のおくに宿りていたり/佐伯裕子

 君という過ぎし時間が一むらの青藻のおくに宿りていたり/佐伯裕子

現代短歌の鑑賞101より

一むらの、で草原の緑を想像したけど、
すぐに水中に漂って流れていくのが凄い。宿りてのインパクト。
見えなくても流れてるように見えても、もうそこに根付いてる。
 思い出だけど、思い出だけではないんだなと。
特定の誰かと思ったけどそうとも限らないか。出会う人全て。


2024/08/29

巨大なる空港にいて紙ならば自分はまっしろなのだとわかる/平岡直子

 巨大なる空港にいて紙ならば自分はまっしろなのだとわかる/平岡直子


短歌研究2024年5+6月号より

何かさ、私は数える程しか飛行機に乗ったことがなくて、
物凄く狭い世界で生きている。空港という、どこへでも行ける場所で、
私には何もないと思ってしまうけど、この歌は
自分でどんどん染めていく、何もないことを恐れない強さがある。
羨ましいな。私はまっしろなままだ。



2024/08/28

泥濘をゆくごとき日日わが過去の向うがはから呼ぶこゑ温し/山本和可子

 泥濘をゆくごとき日日わが過去の向うがはから呼ぶこゑ温し/山本和可子

短歌研究2024年5+6月号より

過去の自分に囚われてると読んだけどどうなんだろう。
過去の向うがわも、どういうことかなって考えあぐねる。
そら見たことかと過去の自分が嘲笑っているかのようなこえに思う。
でも後悔、というよりはどうしようもなかった
やるせなさな気がするんだよね。温し、で溺れそう。

2024/08/27

風に慣るるということあらず ゆっくりと確実に壊れゆくのであろう/三枝浩樹

 風に慣るるということあらず ゆっくりと確実に壊れゆくのであろう/三枝浩樹


現代の歌人140より

風当たり、とか、波風、とかかな。下の句の重さ。
何でもないなんてことはないし、もしかしたら、
本人も気付いてないのかもしれない。じわじわと蝕まれていくのに、
ただただ風を受けているんだろうか。どうしようもない、
とは違う。こんな苦しい歌ある?言葉にならないよ…。

2024/08/26

天秤は神のてのひら秋の陽の密度しずかに測られいたる/永田和宏

 天秤は神のてのひら秋の陽の密度しずかに測られいたる/永田和宏


現代短歌の鑑賞101より

秋の陽の密度なんて考えたことなかったな。
何か秋って急に来るよね。気温は高くても風に秋が混じる。
ギラギラした日差しにフィルターがかかる。
てのひらにふれる秋の空気。どうやって測っているのかな。
神のてのひらというのが自然の摂理という感じで陽が柔らかい。

2024/08/25

やみくもに走りてはやも八十(やそ)といふ信じられざる歳となりたり/林田恒浩

 やみくもに走りてはやも八十(やそ)といふ信じられざる歳となりたり/林田恒浩

短歌研究2024年5+6月号より

まだまだ先と思ってた歳に、気づけば追い付いてるんだな。
やみくもにって言うけれど、その時その時を生きてきたから
言えることなんじゃないかな。そういう思いも含めての
信じられざる歳、なのかもしれないね。
今も走ってるような前向きな気持ちがいいな。



2024/08/24

人の世に咲く花なれば是非もなく花びら散らす路地のさざんか/江副壬曳子

 人の世に咲く花なれば是非もなく花びら散らす路地のさざんか/江副壬曳子


短歌研究2024年5+6月号より

何だか淋しい歌だな。散る、じゃなくて、散らす、なのが
「是非もなく」を強調してる気がする。
自分の意思と遠いところにあるような。えーと…納得してない?
人の世と路地が遠いような気がするんだ。思い出、かな。
 忘れたくないのにこぼれ落ちていってしまう。

2024/08/23

秋だ秋だと追はるるやうに外に出づやらねばならぬ仕事あらねど/時田則雄

 秋だ秋だと追はるるやうに外に出づやらねばならぬ仕事あらねど/時田則雄

現代の歌人140より

収穫の秋と言うし、農家の秋は忙しそうと思うけど、
私の思う秋と農業の秋ってちょっとズレてるのかも?
素人考えで怒られそうだけど、夏の日照り大雨を考えれば、
秋の方が気が楽なのかな。あ、落ち着かないから先回りして
働いた結果が仕事あらねど、か。それでも追われちゃう。





2024/08/22

窓の外はおそらく雪が降つてゐて綺麗だらうな 立てさへすれば/小佐野彈

 窓の外はおそらく雪が降つてゐて綺麗だらうな 立てさへすれば/小佐野彈


短歌研究2024年3月号より

骨折して入院中の連作。
おそらく、がいいな。多分、じゃなくて、願望かな。
実際に降ってない気がする。自由に動けないことの
悔しさ情けなさが一字空けての結句に表れてるのかなと思った。
考えてみると、病室の白が雪景色と重なってますます恨めしく思えるね。

2024/08/21

わたしには世界の果ての私がコーヒーカップをテーブルに置く/香川ヒサ

 わたしには世界の果ての私がコーヒーカップをテーブルに置く/香川ヒサ

現代短歌の鑑賞101より

不思議な歌だ。わたしと私。
コーヒーカップを置いたとたんに、世界の果てから世界が広がる。
新しい何かが始まりそうな予感がする。
世界の果ては、淋しい感じがするけど、
終わりではないような気がするんだ。
自分だけが遠いところにいるような感覚。始まりだといいな。

2024/08/20

今死ねば今が晩年 あごの無き鵙のよこがほ西日に並ぶ/河野裕子

 今死ねば今が晩年 あごの無き鵙のよこがほ西日に並ぶ/河野裕子

現代の歌人140より

前に書写した歌の続きかな。こっちのほうが死が近くて、
鵙は残像とか幻みたいに姿が見えない。
前の歌の時も思ったけど、死ななきゃ晩年かどうかはわからなくて、
確かに今が晩年かもしれない。西日がどんどん暗くなって、
死が近付いてきて、どんどん不安になってくる。

以前書写した歌はこちら


2024/08/19

星置といふ開拓地入植者の摑みたかりけむ星(ねがひ)が置かれて/月岡道晴

 星置といふ開拓地入植者の摑みたかりけむ星(ねがひ)が置かれて/月岡道晴

短歌研究2024年8月号より

急に知ってる地名が出てくるとびっくりするね。
星(ねがひ)と書かれると、入植者の重み、歴史を感じる。
名前がかわいいからという理由だけで星置神社を参拝した
という話を聞いてびっくりしたことがあるけど、
そういう気持ちが大事なのかも。
ちょっとでもふれるということ。


2024/08/18

水は優しいひかりを帯びてながれゆく春のタべを俯くわれに/三枝浩樹

 水は優しいひかりを帯びてながれゆく春のタべを俯くわれに/三枝浩樹


現代短歌の鑑賞101より

小川かなぁと思いながら読んでたら、結句で雨になって素敵だ。
にわか雨とか通り雨とかかな。春の夕べのやわらかな日差しも
感じるよね。雨が水になって、俯くわれに流れて、
もしかして水は涙も含まれてるかなぁ。考えすぎ優しいひかりが自分を励ましてくれる。

2024/08/17

ねがえりをうちたるようにこの世からいなくなりたりふいに一人が/沖ななも

 ねがえりをうちたるようにこの世からいなくなりたりふいに一人が/沖ななも

現代の歌人140より

最近こんなようなことをよく思うよ。平均寿命には遠い
けど、
いつ死んでもおかしくない歳なんだよね。
あー…盛大に読み間違えたね…。いなくなったんじゃなくて、
 いなくなりたい、かな。自信ないな…。
そんなふうにいなくなるのは淋しいよ。ふいに一人が、の存在感。


2024/08/16

エラーせし選手を野次る小学生我を真顔で叱りたる父/黒岩剛仁

 エラーせし選手を野次る小学生我を真顔で叱りたる父/黒岩剛仁


短歌研究2024年8月号より

今、少年野球で野次は禁止されてるらしいね。
この歌は昔の話で、そう言われると野次の内容とか意味とか、
何も考えてなかったかも。今考えると結構酷いこと言ってた気がする。
優しくて聡明なお父さんだ。子供だからこその無邪気さという悪意。
大人になって気付くこと。

2024/08/15

喋るだけ喋らせておけ申シ訳アリマセンまでちょっとの我慢/和嶋勝利

 喋るだけ喋らせておけ申シ訳アリマセンまでちょっとの我慢/和嶋勝利


短歌研究2024年5+6月号より

大変なお仕事だよねえ…。
でも言う方は言えば案外スッキリして満足なのかも、と思う一首。
聞き流してる感じからの我慢、なので、やっぱりストレスはあるよね。
何ていうか、どっちの気持ちもちょっとわかって、
言葉に気を付けようと思う。本当に、お疲れ様です…。

2024/08/14

母がため午後は葛湯をときまぜてあたたかさうなあの世をつくる/日高堯子

 母がため午後は葛湯をときまぜてあたたかさうなあの世をつくる/日高堯子


現代の歌人140より

どう書き出せばいいのかな…。
あの世の温度。向こう側への距離。介護する自分の時間。
葛湯のゆるやかさが穏やかな時間にも終らない時間にも思える。
綺麗事ではない感情が湧くこともあるかもしれない。
ダメだな。うまく言葉が出てこないや。これはきっと未来の私。

2024/08/13

離農せしおまへの家をくべながら冬越す窓に花咲かせをり/時田則雄

 離農せしおまへの家をくべながら冬越す窓に花咲かせをり/時田則雄

現代短歌の鑑賞101より

ドライブしてると、荒れた農地や畜舎がそこそこあって、
そこにあった集落や生活を思うけど、それは私の想像でしかない。
どんな理由なのかは分からない。
咲く花は、くべた炎だろうか。離れるおまへと、ここに立つ自分。
やるせなさと、自分に対する悔しさ?これからの決意。

2024/08/10

くれなゐの花は遅れて咲くといふ明日といふ日がわからないから/出井洋子

 くれなゐの花は遅れて咲くといふ明日といふ日がわからないから/出井洋子

短歌研究2024年5+6月号より

こうやって、わからないけど何かいいなと思う歌を書き写して、
何とか感想らしきものを書いて、
いつかその歌を理解するときは来るのかなって思うよ。
花は咲くだろうか。誰だって明日はわからないのに。
くれなゐの花の鮮やかさが逆に心に不安を植えつける。

2024/08/09

大きくて薄き時代を眺めよと地デジ薄型テレビが届く/久々湊盈子

 大きくて薄き時代を眺めよと地デジ薄型テレビが届く/久々湊盈子

現代の歌人140より

予言者かな?
この歌集はH19、地デジに完全移行したのはH24、
リーマンショックがH20。何か、暗い時代だったよね。
大きくて薄き時代って言い得て妙だ。
どんどん薄っぺらくなってくような、
ネットで世界は広がったのに、厚くはならない。希薄?
私は何を眺めるのかな。

2024/08/08

もういいかい、五、六度言う間(ま)に陽を負ひて最晩年が鵙(もず)のやうに来る/河野裕子

 もういいかい、五、六度言う間(ま)に陽を負ひて最晩年が鵙(もず)のやうに来る/河野裕子

現代短歌の鑑賞101より

ちょっと怖い。誰かの声だと思ったら、自分の声になるし、
 陽を負ひて、が背中を刺されてるみたいな気持ちになるし何で鵙?と
唐突で訳がわからないのがそのまま最晩年に当てはまっていくようで不気味で怖い。
もういいかい、の声の距離。だから鵙のように、なのか。急に来る。

2024/08/07

秋ふかき野に紛れゆく身のうちに実をもつ雑草生ひ茂らせて/古谷智子

 秋ふかき野に紛れゆく身のうちに実をもつ雑草生ひ茂らせて/古谷智子

現代の歌人140より

何か、全然分かんないんだけど、かっこいいなと思った。
でもそんな歌じゃないのかも。雑草の力強さと、
いらないものとみなされる無力さ。見向きもされず紛れ、
でも生い茂らせている。何も無い訳じゃない。
有象無象かもしれないけどそうじゃない。
身のうちに実をもつがいいな。

2024/08/06

一本が一本としてきわだてる雑木林の夕映えのとき/沖ななも

 一本が一本としてきわだてる雑木林の夕映えのとき/沖ななも

現代短歌の鑑賞101より

ああ私はあの風景が大好きだなってあの防風林が思い浮かんだよ。
夕焼け、じゃなくて夕映え、なんだよねえ…。
何でもない木なのに、夕日が差してまるで急に現れたかのように
存在感をあらわにする。まさにきわだてる。
こういう歌があると、ますます美しい景色に感じるね。

2024/08/05

ここはどこどこにでもなる街として私は歩む冬の舗道を/大島史洋

 ここはどこどこにでもなる街として私は歩む冬の舗道を/大島史洋

現代の歌人140より

決意とか信念とか、力強さを感じる。でもどこか諦めてるような、
投げやりな雰囲気があるように思うのはどうしてだろう。
冬の舗道の冷たさのせいかな。ここはどこ、 という不安定さのせい?
どこにでもなる、は、どこにも行かない、でもあるんだろうか。
心を掴む歌だ。

2024/08/04

夏の蛇水盤のへりに喉をおき時やはらかに水呑みてをり/日高堯子

 夏の蛇水盤のへりに喉をおき時やはらかに水呑みてをり/日高堯子

現代短歌の鑑賞101より

読んでるだけで、ちょっと涼を感じる歌だね。湿った空気とか、
夏草の縁とか。セミの声とか聞こえてきそうな静かな風景。
やはらかに、が効いてるんだろうね。ずっと見ていたくなる。
鳥や虫だとこの雰囲気は出ないような気がする。
あ、蛇の鱗の硬さと時の柔らかさの対比かな。

2024/08/03

眠る、と言っても結局は起きて沢蟹となり打つキーボード/くどうれいん

 眠る、と言っても結局は起きて沢蟹となり打つキーボード/くどうれいん

短歌研究2024年5+6月号より

凄いねえ。あっという間に指が蟹になる。
背中を丸めて小さくなりながら打ってるのかな。
暗がりに光るディスプレイが水辺のように見えてくる。
眠れない、という感じではなく、眠くない、なのかなと思った。
結局は、というところに自己分析ができてる感じがして好きだな。

2024/08/02

みぞれ降る二月の朝に触れないであかあかとわが十本の指/盛田志保子

 みぞれ降る二月の朝に触れないであかあかとわが十本の指/盛田志保子

短歌研究2024年5+6月号より

この「触れないで」の意味を汲み取れないでいる。
「触れてもいないのに」?「触れてはいけない」?また違う意味?
寒い朝と冷えた指先。みぞれの冷たさからあかぎれを連想する。
あれ?しもやけかな。いやそこは問題ではないけど。
灯るみたいなあかあかが印象的だ。

2024/08/01

「幽」の字のふたつの鬼火は兄弟か姉妹か箱の中にゆらめく/鈴木加成太

 「幽」の字のふたつの鬼火は兄弟か姉妹か箱の中にゆらめく/鈴木加成太

短歌研究2024年5+6月号より

着眼点が鋭いね。言われてみると確かに・・・と思う。
鬼火に見えるのも、兄弟姉妹に見えるのも、そしてそれが箱の中に、
というのも面白いなと思う。物語になっていくのが凄いよね。
幽という字形からゆらめくまでに何の異和感もなく鬼火が灯りだす。
箱が棺になって切ない。